そこのヒグマの剥製。デカいです、やはり。しかもこの剥製、微妙に視線が泳いでいてメチャクチャ怖い(笑)。
まあ世界でも最強クラスの哺乳類ですからね。ちなみにこれは明治23年(1890)、札幌で射殺された雄の個体で一晩で七頭の馬を喰い殺したのだとか。



そういった北海道の動物の剥製、さらには縄文土器などの展示がこういった歴史を感じる展示で見れます。今どき、こういった展示形式を見れるだけでもありがたいかも。



妙に楽しくなったので、しばらくウロウロして見る。



明治20年、1887年ごろには絶滅したと見られる蝦夷オオカミの雄雌の剥製。蝦夷オオカミの剥製は、世界中でこれだけだそうな。
ちなみに蝦夷オオカミの絶滅、本土人の入植の速度と比べても、いくら何でも速すぎる気がする上に大規模な駆除が無かったはずの樺太、千島列島でも絶滅した辺り、何か不思議な気もする所です。



でもってここの展示の目玉がこの方。

ここに居るとは全く知らなかったのですが、 南極で一年間生き残ったタロ・ジロ兄弟の兄貴、タロさんです。
ジロさんは上野の国立科学博物館にいらっしゃるので何度もお目にかかってますが、タロさん、ここに居たのか。日本の南極観測は正直なんでそんな貧弱な準備で始めてしまったの、という部分が多分にあり(この辺りは近年のJAXAを見ていて全く同じ感想を感じるのは気のせいであって欲しいと切に願う)、この結果、早くも1957年の第二期越冬隊は南極突入に失敗、第一期隊が連れて行った犬ぞり用の樺太犬のほとんど、15匹が南極に置き去りにされました。

ちなみに意外に知られてませんが、この置き去りにされた犬の中にはタロ・ジロの実の父、「風連のクマ」さんが居ます。妙にカッコいい名前なのは同じ名前の「クマ」さんが三匹もいたため、出身地を付けて呼ばれていたから。つまり親子三匹で南極の置き去りにされたわけで、過去60万年に渡り、これだけ人間から散々な目にあわされた猫目イヌ科の一家は他に無いんじゃないかと思います。

その中で奇跡的に南極で一年間(厳密には11カ月)に渡り生き残ったのがタロ・ジロ兄弟でした。
でもって生きていたタロ・ジロ奇跡の生還みたいに思われてますが、実は1959年1月に第三次越冬隊が到着後も南極に置きっぱなしにされ(涙)、帰国が許されたのは1961年になってからでした。この間にジロは現地で病死してしまいます(どうやって剥製にしたのかは考えないのが礼儀であろう)。
それでもタロの兄貴は無事に日本に帰国、以後は札幌のこの植物園で飼育され、14歳で老衰で亡くなってます。よかったね。

このタロ・ジロの物語を映画にしたのが1983年7月公開の「南極物語」でした。
でもって前年の1982年末にはあのカーペンター監督による熱いのが苦手な血液が元気に南極で逃げ回る映画、「遊星からの物体X(The Thing)」が公開されていたため、この時期の日本の劇場では、南極の雪上を犬が元気に走り回る映画が連続公開されていたのです。このため、当時の人間には記憶の混雑が起きるケースがよく見受けられ「高倉健さんが火炎放射器で攻撃するシーン」「タロ・ジロに怯えた他の犬達が泣き叫ぶシーン」「カート・ラッセルが雪上で犬を抱きしめて泣くシーン」「ノルウェー語では無い謎言語を話しながら氷原のタロ・ジロを追いかける謎のノルウェー人」など人類史上かつて存在しない場面が彼らの脳内には形成されている事があります。ええ、私です。

ついでに言うと遊星って惑星の事だから全然意味が違っちゃうのよ、本来は。

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