新地駅に到着。
津波で完全に破壊された駅とグチャグシャにひしゃげた衝撃的な列車の写真が撮影されたのがこの新地駅ですが、現在の駅はそこより数百メートル西、僅かに内陸側に新たに造られたものです(あの列車の乗員、乗客は避難済みで幸いにして犠牲者は出て無い)。

ここから三つ先の浜吉田駅まで、約15qの区間は津波で大きな被害を受けたため、従来の線路を放棄し、より内陸部に新たな線路を敷設し直すことになりました。これに伴い新地、坂本、山下の三駅も新たに造り直されています。
ただし新地駅は現在でも海岸線から700m前後と大きく離れていないので海岸が見え、そこから駅までの間は未だに何も無い荒野のような土地が広がっていて、津波の被害の大きさを教えてくれます。



現在は更地に整地されている一帯は再開発計画が動いており、それに先立ち、いくつかの建物が出現していました。
手前の白い大きな建物はエネルギーセンターという名の発電所のようです。…文法的には間違ってはいませんが、典型的な頭悪そうな和製英語であり(発電設備にこんな名は絶対につけないだろう)、それはどうなんだろう、と思いますが…。とりあえず、ここを中心にホテルや大型商業施設を誘致するようです。

少し余計なお世話な話をします。
今回の津波の結果、人類が始まって以来の総量を軽く超える津波に関する映像資料が記録されました。その結果、巨大津波は波といっても北斎の版画のような、あるいはサーフィンで波乗りするような薄い波ではなく、数十メートルに渡って帯状に海面が隆起して押し寄せて来るものだ、というのがはっきりと確認されました。

判りやすく言えば、巨大津波というのは一定の奥行きに渡り(映像で見る限り数十mはある)10m以上海面が高くなった海がそのまま移動してきて陸地に乗り上げる現象でした。そして必ず第二波以上が続きます。これを陸上で見てると海がカタマリになって続々と陸に乗り上げて来る、という感じであり、大きな波がやって来たというよりも海がせり上がってそのまま移動して来た、というのが実態に近いでしょう。これを波と言ってしまったのが大きな誤解の元ではないか、とも思いました。まあ、波は波なんですが、従来の波とは完全に別物と考えないと、今後の対策を誤る事になります。

このように10m以上の高さとそれ以上の奥行きを持って、観測地点から見れば事実上の無限長(先にも述べたが総延長は650qを超える)の横幅で海岸に押し寄せる海水のカタマリ、すなわち津波を防ぐ方法はおそらく存在しません。津波は波である以上、エネルギーのカタマリであり、エネルギーは質量に比例しますから、その膨大な海水が津波に与えるエネルギーを考えた場合、これを押し返す、あるいは足止めする手段を人類は持たないでしょう。10m程度の高さの堤防をいくら造ったところで、時速100qで突っ込んでくる貨物列車を500円で買ったべニア板で受け止めるようなものであり、気休めにもならないはずです。
(唯一の例外は位置エネルギーへの変換、すなわち重力の利用。今回の津波は海抜12m以上の陸地はほとんど到達してない。よって十分な奥行きを持った、海面から20m近い高さの緩やかな高台を海岸線沿いに造ればそれを昇る間に津波のエネルギーはほとんど奪えるだろう。だがそれは六階建てのビルに匹敵する高さを持つ幅数十メートルの丘陵地帯を数百キロメートルに渡る海岸線に生み出す事を意味するから、これが出来るのは地球自身か神様だけ)

何が言いたいか、といえば津波の対策は過去も未来も一つしかない、すなわち津波の来る場所に人は住むな、これだけなのです。
ここまで甚大な津波の被害を受けた一帯は百年の単位で考えればいずれまた同じような被害を受けるでしょう。地震の発生は確率の問題ですから、場合によっては数十年でまた同じ被害が出る可能性もあります。そこを再開発するってのは、どうでしょうかね、というのが私の意見でございます。



しばらくすると明らかに刈り入れが行われた田んぼが見えてきました。日本地理学会の資料ではこの辺りも津波で水没してるはずですから、おそらく丸ごと土を入れ替えたんでしょう。塩害対策なのか、原発による放射能対策なのかは判りませんが。

奥に見えてる堤防のようなものが恐らくかつての常磐線で、現在は道路になってるようです。



その先にも豊かな田んぼが広がっており、ちょっと泣きそうになる。ああ、ここまでは取り戻しつつあるのか、と思う。



その後、常磐線は内陸部に入り、間もなく福島と宮城の県境にある阿武隈川を渡ります。
ちなみにその常磐線と入れ替わるように高速道路の常磐自動車道が海側にでるため、震災時にこの一帯では高速道路が津波で水没してしまう事態が発生しています。

阿武隈川でも津波の遡上は発生したのですが、この一帯は河口から直線で6q以上離れているため、特に被害は無かったようです。

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