さて、今回のお話はクマだ。

「クマ?」



今回、経ヶ峯一帯の中で、見学できない施設があったんだ。それがこの御子様御廟で、五代藩主以降の奥さんやら子供たちのお墓がある場所だ。

「通行禁止になってるね」

でもってその理由がクマなんだよ。

「クマが出るの?」
 


出るんだね。その先にもこういった通行禁止地区があった。

「山の中だからなあ」

いや、先にも書いたように、ここだけが森林地帯で周囲は住宅街に囲まれてるんだ。しかも子熊とされるから、クマの家族であり、それを考えると、とても一家がやっていけるような規模の森林ではない。となると、もう少し山の奥から出てきた、と考えるべきだろうが、それでもクマを養えるだけの豊かな生態系が仙台市のすぐそばにある事を意味するんだ。

2013年に日本クマネットワークが行った大規模調査では、従来よりかなり広範囲にクマの出没が認められたんだけど、近年はさらにその傾向が強まっている印象がある。これが何が原因なのか全く判らないんだけど、一つの理由として、広葉樹林の拡大があるように思うのよ。

「だから?」

戦後に、どこかのお馬鹿さん役所が日本中の山林を杉林にしようとして、下手な大規模開発よりよほどヒドイ損失を生態系に与えたんだけど、これが回復してるんじゃないかと個人的には思ってるのよ。それが市街地周辺まで及んでるんじゃないかな、と。

「つまり?」

クマが人間に与える危険性は常に配慮しなければなんだけど、日本の自然体系が、恐らく江戸期以前レベルまで回復しつつない?と思うのよ。

「江戸期の方が自然豊かなんじゃないの?」

いや、江戸期は江戸期で、とにかく日本中を田んぼにしようとしてたから、これもかなり生態系には強烈な打撃を与えてるんだ。まあ、戦後の工業化と杉林化のセットに比べればまだマシとも言えるが。とりあえず単純に緑豊かなら生態系も豊かとは限らんのよ。



広瀬川の河岸でもクマの目撃情報があった。都市圏では人間との接触に十分な注意が要るし、手放しに喜べない部分もあるが、それでも何か生態系が急激に豊かになってるような予感はあるのだ。

「で、今回のまとめは?」

特にない。いいか悪いか、しばらく見てみよう、という話だよ。

「さいですか」

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