■そのほかいろいろ
カナダ製の全天候型迎撃戦闘機、アヴロ CF-100
Mk.4 カナック。
この機体の場合、アヴロと言ってもイギリスの本家ではなく、カナダにあった方のアヴロです。
1950年1月に初飛行と、先に見た全天候型迎撃戦闘機三姉妹と同世代で、
このためこれもレーダー搭載、レーダー&火器管制装置操作員とパイロットの二人乗り、
そして武装はロケットランチャーのみとなってます。
ただしアフターバーナーは付いて無かったようです。
とりあえずアメリカの全天候型迎撃戦闘機三姉妹の仲間、
少なくともその従妹くらいの存在と考えていいでしょう。
なのでこれもソ連の戦略核爆撃機を迎撃するための機体であり、
現在に至るまでカナダが独自に開発した唯一のジェット戦闘機となっています。
といっても、ソ連がカナダの原野にわざわざ原爆落としに来るとは思えませんから、
ソ連から最短の北極超えルートでアメリカに向かう機体を迎え撃つためのものでした。
これすなわちカナダがアメリカの防空システムに巻き込まれてしまった結果、
生み出された機体と言えます。
それでも約700機前後が生産され、50機前後はベルギーに輸出もされてますから、
それなりに成功を収めた機体と言えるでしょう。
ただしあくまで全天候型迎撃戦闘機ですから、通常の戦闘機感覚で
その性能を考えるとちょっとアレですが…
クラークターM6 牽引用トラクター。
主に1950年代にアメリカ空軍が使っていた機体や爆弾運搬車の牽引用車両です。
こういった地味な展示もこの博物館の見どころの一つでしょう。
ちなみにこのトラクターは前面に装甲板かよ、というくらい厚い鉄板を付けてるんですけど、なんだこれ。
正面のラジエターがむき出しっぽいので、それを触らないように、というカバーの可能性が高いですが、
こんなに頑丈な構造が必要なんだろうか、という気がしなくもなく…
冷戦時代になると、ミサイルの展示も始まります。
ノースロップ SM-62 スナーク。
SNARKという英語を私は知らないし、辞書にも出て無いのですが、どうも不思議の国のアリスの原作者、
ルイス・キャロルによる架空の生き物の事らしいです。なんでそんな名前なのかはよく判らず。
1958年に配備が始まった、大陸間飛行が可能とされる自律飛行型の巡航核ミサイルです。
6300マイル、約1万キロメートルを超える航続距離があったとされます。
大陸間弾道ミサイル、事実上の宇宙ロケットが開発される前から、
直接ソ連本土まで飛んで行く核ミサイル、
というアイデアはあったのですが、宇宙空間にまで達する巨大な放物線を描くことができない以上、
こういった無人飛行機のようなミサイルにするしか無かったわけです。
ある意味、ドイツのV-1飛行爆弾の究極進化系かもしれません。
ちなみにこの時代にGPSなんてありませんから、どうやって誘導したのか、というと
自動観測よる天測航法(Celestial
navigation)だそうで、ええええええ、という感じですが…
常に星が出てる高高度を飛んだとしても、時速650マイルは出たとされますから、
ほぼ1000km/hであり、その状態で1950年代の技術で星を観測して
自分の位置を割り出せたのか、という気がしますけども…
空軍の主張だと命中誤差はわずかに8000フィート、約2.4qとされてますが、恐らくウソでしょう(笑)。
実際、1958年に配備が始まったものの1961年、わずか3年で引退してしまってますから、
これ、使い物にならなかったんじゃないかなあ…。
横に推進ロケットがついてますが、これはあくまで発射時に使うだけで、すぐ切り離し
飛行中はターボジェットエンジンを使って飛んでます。
ちなみに主翼の正面辺りに切り欠きが見えてますが、あの先が核弾頭部。
目標上空に来ると、これが切り離され、高速で落下するようになってました。
ノースアメリカンRF-86F偵察機。
朝鮮戦争時、Mig-15が出没する地区まで出かけて行って、無事帰って来れる高速偵察機として、
一部のF-86Fが偵察機に改造され、予想以上の活躍を見せました。
これを受けて、戦後、F-86Fを本格的な偵察機に改造した機体です。
このため最初から偵察機として製造されたものではありませぬ。
ちなみに昭和の日本では、これは朝鮮戦争時に日本の米軍基地で
日本人技術者の手によって偵察機に改造されたF-86を参考にして
アメリカで改造されたもの、という話が広く信じられてましたが、
アメリカ側の資料において、私はそんな話は一度も見た事ないので、信憑性は微妙です。
コクピット下の膨らみはカメラを収容するためのもので、この位置にカメラを入れたため、
機首部の機関銃は降ろされて、武装の無い、純粋な偵察機となってます。
ちなみによく見ると機首部に機関銃の穴のようなのが見えてますが、あれはペンキで描かれたもの。
こんなの描いてどうするの、と思う所ですが、韓国や日本に駐屯していた機体は
中国本土やソ連本土まで飛んでゆく、という無茶をやっていたので、
いや、我々は偵察機なんて持ってませんよ、という言い訳のために塗られてたらしいです…
ちなみにHaymaker(直訳すると牧草を造る人だが必殺技という俗語でもある)という
変な愛称を持つんですが、これもどうも非公式なものらしいですね。
展示の機体は、アメリカ軍が使った後、韓国に供与され、後に返還されたものだとか。
ノースアメリカンF-86H セイバー。
外板をハズして骨組み状態で中が見れるようになってる、という珍しい展示。
しかもこれ、ノーマルセイバーの最終生産型のH型で、
私は他の博物館でH型を見た事ないので、意外に貴重な展示となってます。
朝鮮戦争の戦訓を取り入れ、さらに戦闘爆撃機としても使えるようにしたのがこのH型で、
実はエンジンも違えば胴体のサイズも違う、さらには武装も12.7o×6ではなく、
前回見たリボルバーカノンの20o M-39に変更されてる、という大幅な改良機でした。
ただし、すでに次世代のF-100のメドが立っていたため、セイバーの中では極少数の
450機前後で生産が打ち切られています。
この辺り、ムスタングの究極系、P-51Hがほとんど生産されないで終わったのと似ていて、
何かノースアメリカンらしいなあ、という感じも。
といった感じで、今回はここまで。
オマケ編も一回お休みです。
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