■チビッ子にモテない国



コクピット後部。
無線士席とかトイレとか、銃座とそのリモコン装置とかある位置のはずですが、この状態。
順路では下の爆弾庫へと進む構造になってます。
本来はここに与圧室と爆弾庫(与圧されてない)の間の圧力隔壁があり、
そこに設けられた丸い密閉ドアを通って爆弾庫に入ります。

ただし与圧が効いて来る高高度でドアを開けると、気圧差で吹き飛ばされますから、
それができるのは地上駐機時と低高度飛行の時のみです。
通常は上に見えてる細いトンネルを通じて爆弾庫を超え、胴体後部の与圧部に向かいました。



順路の通りに来ると、この爆弾庫へ。
ほとんどの装備は外されてしまってますから、資料性は無いですね。
胴体後部はカットされてしまっており、これで見学は終了です。
本来はこの奥の後部与圧部に休息用のベッドルームとかあったはずなんですが。



そこで反対側から入って来たチビッ子たち。

イギリス、タイなどだと、この手の施設で私がチビッ子に会うとモテモテ状態になり、
ククク、子供たちですらオレの魅力にメロメロだぜ、というか子供以外にモテないのはなんで?
という状態になりがちだったんですが、未だアメリカではその経験がありません。
この国は何かおかしい、と警告しておきましょう。

ちなみに上に見てる管状のものが、例の前後移動用のチューブ。
では、外に出ましょうか。



その横にあったVB-3 ラゾン(RAZON)誘導爆弾。

第二次大戦終戦後直後に導入された誘導爆弾で、、
見た目からしてドイツのフリッツXを参考にしたと思ってしまいますが、
その開発はアメリカ独自のものでした。
(ただし途中からフリッツXの技術を参考にした可能性は高い)

あまり知られてませんが、アメリカ陸軍は第二次大戦中、すでに無線誘導の
アゾン爆弾を使用しており、1944年6月8日にヨーロッパ戦線で投入が開始されてます。
ちなみにアゾン(Azon)という妙な名前は「方位のみ誘導(Azimuth only)」の略だそうな。
誘導方法はフリッツX全く同じで、機上から目視で無線操縦を行いました。
ただし爆弾部分は通常のM-65 1000ポンド(約453s)爆弾で、
そこに誘導装置をはめただけ、という意外に単純な構造でした。
その点は、このラゾンVB-3も一緒ですけども。
とりあえずフリッツXの実戦投入に遅れる事約1年、意外に早い段階から
アメリカも誘導爆弾を使ってたのでした。

そのアゾン爆弾の戦後発展型がこのラゾンで、なんで頭にRの字が追加されたのかというと、
Range & Azimuth only になったから、という事ですが、それってOnly じゃないし、
そもそも爆弾で飛行距離って何?という謎が残ります。とりあえず、よく判らん、としておきましょう…
朝鮮戦争では本格的に導入されたのですが、どうも信頼性が低い上に、
爆弾としては小型ですから目標の橋などになかなか命中せず、
命中しても破壊力不足で完全に落とせなかったりと、イマイチな戦果に終わったようです。



そのさらなる発展型、VB-13 ターゾン(Tarzon)誘導爆弾。正式名称はASM-A-1だそうな。

VB-3ラゾンの破壊力不足は当初から予測されており、
このためアメリカ陸軍がイギリス製の巨大爆弾、5t爆弾のトールボーイに目を付け、
これをライセンス生産して、無線誘導装置を取り付けてしまった、というスゴイもの。
(爆弾部はイギリスからの供与、という話もあるがそもそも生産数が少ないのでアメリカで造った可能性が高い)

ちなみに開発はあのベル社です(笑)。この時期のベル社は妙な仕事が多いなあ。
ターゾンの名は、Azimuth only の頭にトールボーイのTの字を付けたからだとの事。
…どっから出て来たRの文字…。ターザンに引っ掛けたダジャレネーミングのような気がするなあ、これ。

朝鮮戦争では上で見たVB-3ラゾンの破壊力不足から、1950年12月に投入されたものの、
これも信頼性不足の上、戦果もイマイチだったため、
わずか3カ月の運用で終わり、あっさり引き上げられてしまったのでした。
まだ誘導兵器は人類には早すぎたのかもしれませぬ。
後のベトナム戦争では誘導爆弾が一定の活躍をするので、発想は間違ってなかったはずですがね。


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