■カピロニはいろいろ頑張った
で、これがフランスの傑作戦闘機、スパッド S.XIII(13)
C。
スパッド(SPAD)はフランス語読みだとスパ、という感じになるのですが、
日本では英語読みのスパッドが普通なので、この記事でもそれを使います。
参戦の翌年、1918年から当時の最新戦闘機、このスパッドにアメリカ軍の機種転換が始まりました。
第一次大戦を代表する傑作戦闘機で、最高速度時速135マイル(218km/h)は当時の最高速を誇り、
最終的に8400機近い機体が生産されたとされます。
アメリカ軍はこれを主力戦闘機として第一次大戦を戦い抜いたため、
アメリカ人が考える第一次大戦の戦闘機となるとこの機体になるようです。
アメリカ軍がフランス製の戦闘機で戦争に参加する、という後の時代からは想像もできない状況だったのが、
この第一次大戦の特徴かもしれません。
展示の機体は、大戦中に利用された後、アメリカに持ち替えられた中の一機で、
この博物館でレストアされたもの。
ちなみにこれ、例のフランスのピアノ工場で作られた中の一機らしいです。
塗装は惰一次大戦のアメリカのエース、26機撃墜のリッケンバーカーのものを再現してます。
こちらが、その原型となったスパッドS.VII(7)。
なんで7の次が13なのかはよくわかりませぬ。
縁起のいい番号から、いきなり悪い番号への飛躍ですしね。
1916年初飛行の機体ですが、アメリカが参戦した1917年後半には早くもS.XIII(13)が登場、
すでに時代遅れとなっていた機体でした。
この時期の戦闘機の進化の速さは大したもので、途中から出て来たアメリカが
最後まで技術的に追いつけなかったのも仕方ないところでしょう。
ただし、アメリカ軍はこの機体をほとんど使ってません。
フランス空軍のアメリカパイロットの義勇兵たちが使用しており、
アメリカ参戦後はそのまま移籍したため、
一部の機体がアメリカ軍機として飛んでいたようです。
展示のモノは由来がはっきりしないのですが、そもそもはシカゴの産業科学博物館が保有し、
1960年代になぜかイリノイ州のアメリカ空軍基地でレストアされたものだとか。
こちらはイタリアの巨大爆撃機、カプロニCA.36。
なるほどこんな機体があったら、ドゥーエが戦略爆撃至上主義をとなえるわけだと思ったり。
原作版の「風立ちぬ」で宮崎さんに“足し算の人だった”と紹介されるカプロニの代表作の一つ、
Ca.30シリーズ爆撃機の最終進化型がこれです。
マンガでも1コマだけ出て来てますね、この機体。
展示の機体はどうもイタリアにあるカプロニの航空博物館(Museo
dell'Aeronautica Gianni
Caproni)
の所有機だったのを、ここでレストアしたものらしいです。
1987年から展示が開始されてるのですが、当初は借りていた状態だったのを
1994年に永久譲渡され、この博物館の所有となったのだとか。
第一次大戦の時のイタリアはドイツの敵、連合国側ですから、この機体が連合国側の
主力重爆撃機となって行き、イギリス、フランス、アメリカも一部で運用していたようです。
1914年のCa.31から始まるこのシリーズ、基本的な機体構造はそれほど変化がなく、
より高性能なエンジンへの換装で進化を続けていました。
最終的に150馬力のイゾッタ フラスキーニ 150馬力エンジン3基搭載まで進化したのがこのCa.36でした。
まあ、重爆撃機と言っても、150馬力×3=450馬力と、第二次大戦時の練習機以下の出力で、
搭乗員は4人(2人は機銃手)ですから、その爆弾搭載量はたかが知れてたでしょう。
やはりせいぜいイヤガラセ程度の兵器なのです。
やたら複雑な構造で判りにくいですが、この機体はP-38のように双胴エンジンの真ん中に操縦席があり、
その操縦席のケツにもエンジンがあって、計3発となってます。
ちなみに垂直尾翼も3枚ですが、これは直進安定性の確保というより、
このサイズでこのエンジン馬力では、エルロン使って機体を傾けての旋回だと
一気に高度が落ちてしまいますから、なるべく方向舵で曲がる、という設計だったんじゃないかと。
でもってケツにエンジンを積んでしまったので、後方銃座が置けなくなってしまい、
その結果、ご覧のように櫓を組んでエンジンの上に後方銃座を置いてます(笑)。
まあこれなら垂直尾翼を撃つ可能性も低くなって一石二鳥なんですが、
高熱化してるエンジンの真上、しかもブンブンとプロペラも回ってる所ですから、
私だったら、ここの銃手は絶対にイヤですね…
展示に、なんか場違いな背広のオッサンのマネキンが混ざってるんですが、ひょっとしてカプロニおじさん?
当時30歳前後のはずですが…
ついでに胴体後部、そして双胴のエンジンのラジエターが横向きに貼りつけてあるのに注目。
これで冷えたのか、と思いますが実際、飛んでいたわけですし、150馬力くらいなら大丈夫だったんででょう。
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