■そこまで写真が好きなのか
さて、ペロ君、今回はタイの皆さんの記念写真好きについて、
ナショナルメモリアルの施設を参考に考察してみよう。
「さいですか」
「ああ、ホントに世界各国にあるんだねえ、これ…」
あるんだけど、これがよくわからんのよ。
ナショナルメモリアルなのに軍人の要素は特に無いし、
タイの民族衣装でもないだろう、これ。
紫はどうもタイの皆さんが好きな色らしいが、
このカッコで白いソックスに革靴、そしてハイヒールってのは、
日本から来た私には、正直言って、ちょっと理解を超えた部分があるなあ。
「でも、何か意味はあるんでしょ」
それがあるんだどころじゃなかったのさ。
例の学生さん達にご覧のような大人気だったんだ、これ。
「ホントだ。何が彼女たちをここまで魅了するんだろう」
全く判らん。もしかして、TVドラマか何かにちなんだモノなのかも。
しかし、この私が全くモテないのに、こんなただの紙切れが
女子学生にモテモテというのは実に理解しかねる現象だよねえ。
「…あなたは己をもっとよく知る必要があると思います」
それは誉め言葉ですか?
「いいえ、これは誉め言葉ではありません」
で、お次はこれ。
「何かの舞台?」
限りなくそれに近い。
これは次回登場する朝鮮戦争の展示室にあったもの。
記念撮影用の舞台で、例の学生さんがこれを利用して写真を撮ってたんだ。
「北朝鮮の雪山で記念撮影ですか…」
冬の北朝鮮国境付近で始まった中国軍の反撃により
アメリカを中心とした国連軍は、多くの死傷者を出している。
が、実は追いかける中国側の損害も思った以上に凄惨だったらしい。
人の命を屁とも思わなかった毛沢東時代の共産党軍は、
相当な死傷者を出していた形跡があるんだよ。
よって、この冬山の中で死屍累々の世界が展開されていたわけだ。
「そこで記念撮影ですか」
そこで記念撮影なんだよなあ…。
「あ、あれか、南国のタイでは雪山がそもそも珍しいから?」
ところが、この先ではこんな記念撮影用舞台が用意されてるんだよなあ。
「ベトナム?」
正解。タイの皆さんには見慣れたジャングルだろうが、
ここでも記念撮影してるんだよ。
どうもタイの皆さん、本格的な近代戦の経験が無いので、
戦争の凄惨さを過小評価してるような気はするなあ。
「そんなの21世紀の日本でも同じでしょ」
まあね。
最近ずっと、第二次大戦で戦場に居た人たちの日記を読んでるんだけど、
死ととなり合わせの中で生きる、
しかも何で死ななきゃならないのかわからない、
というあの恐怖は、私にも完全には理解できないからね。
とはいえ、これはちょっとやり過ぎのような気がするぞ。
そこまでして記念写真を撮りたいものだろうか、
と疑問を投げかけたところで、今回はここまでだ。
「さいですか」
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