■イギリスの石の船

さて、今回のオマケは実は前に一度、書こうとしてやめたものだ。

旅行記でやる内容じゃないよな、と思ったからなのだが、
冷静に考えたら、今後書くことも無いだろうという気がしてきたので、
今回、HMSプレジデントが出てきたので、ついでに書いちゃおうと思う。

イギリスの軍艦は、陛下の艦、という略称であるH.M.Sが名前のアタマに付く、
というのは既に書いた。
が、実はこれには妙な例外がある、というのが今回のお話。




さて、とりあえず、この写真から。
タワーブリッジから見たロンドンの西側の風景ですが、手前、テムズ川に突き出た
妙に安っぽい建物に注目してください。

これは、イギリス海軍のテムズ川の基地です。
ただし正規軍ではなく、予備役兵(Royal Naval Reserve)による運営となってます。
まあ、そこれはいいとして、問題はここの施設の名前です。



はい、帝国海軍、とかかれた両脇の看板の真ん中にある看板に注目。
H.M.S. プレジデントとなってます。これがこの基地の名前です。

船(Ship)ちゃうやん、と思うのですが、
これがいわゆる石のフリゲート艦(Stone frigate)と呼ばれる施設で、
陸上にありながら、海軍の施設と言うことでH.M.Sをアタマにつけてしまうケースなのです。

イギリス海軍、教育施設を中心に、この陸上のH.M.Sが結構あり、
てっきり、船の話だと思いながら資料などを読んでゆくと、
どうも変だ、という事に気が付く、というケースがあったりしますので、要注意だったりします。

ちなみに元々は、ナポレオン戦争時代、カリブ海で岩礁に立てこもって
フランス艦隊とやりあった海軍基地に、名誉称号みたいな形で贈られたのが
ルーツとなってるようです(故にStone frigateか?)。

その後、19世紀に訓練艦が廃艦になって、訓練施設が地上に移る、
という事例が増えたらしいのえですが、その際、
地上施設にHMSの名を付けた、という前例があったため。
名前は訓練艦時代のまま引き継がれる、という形になったのだとか。
このHMSプレジデントも、元々は練習艦で使ってた船の名前で、
後に施設が地上に移ったあとも、それを引き継いだみたいですね。

ちなみに、今回登場したQシップ、あれがまさに、HMSプレジデント。
どうも第一次大戦後、練習艦として、ロンドンにあった海軍の訓練施設で使われてたのが、
あのプレジデントだったようです。
その退役後、地上に移った訓練部隊の施設がこれ、という事ですね。

はい、てな感じで、いつもとはちょっと変わった今回のオマケはここまで。


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