■チャールズは元気そうだった



で、その突き当りで後ろの壁を振り向けば、なんだか見たことある
白っぽい人が若者に取り囲まれてました。
あれ?チャールズじゃん?



最近、消息を聞かないと思っていたら、こんなとこに居たのか、チャールズ。

元々無口だったのが、最近はさらに無口になったようで、
誰とも会話をする気はないようです。
若者達もすぐに立ち去ってしまいました。

この博物館には彼の名、ダーウィンの名が付くコーナーや施設がいくつかあり、
やはりイギリスの生物学、となるとその中心に居るのはダーウィンなのだなあ、と思ったり。

彼の学説は、その反対派が、ダーウィンはサルから人が進化すると言ってるぜ、
とか適当な事をアチコチで流布した上に、
支持派は支持派でゴルトンを中心に優生学と言うとんでもない概念を持ち出して
ナチスなどの民族虐殺の悲劇に繋がってしまってまいます。
どっちを見ても敵だらけ(笑)。

ここが彼の理論の悲しいところで、アインシュタインの特殊相対性理論と並び
常に誤解されたまま世間に広く流布してるのが、彼の進化論でしょう。

そもそも、その基本となる本「種の起源」で、彼は進化なんて考えは、ほとんど触れてません。
進化論、という言い方は周囲が言い始めたもので、
彼の理論は単純明快(ただしその論文は極めて読みにくい。岩波文庫版では日本語も最低)、
要点を絞ってしまえば、単に生物の多様性と、そこからの取捨選択です。

生物は、生涯に膨大な数の子孫を残します。
かつ、その子孫はコピーのように均一ではありません。
同じ親から生まれた猫でも、見た目のいいのも居れば、悪いのも居るわけです。
これが多様性。

生物は種全体に多様性を持つ、というのが重大な前提です。
神様はサイコロ賭博が大好きなんですよ(笑)。
生物は生きる乱数表だ、と私なんかは考えてます。

その中から、環境に適したもののみが生き残る、という事になります。
これが取捨選択。
そして、生き残った親から生まれる子は、環境に適した形態の多くを引き継ぐことになり、
その結果、住環境を独占して行くことで、さらに子孫を増やすことになります。

ここで重要なのは、決して優秀な種が生き残るわけでは無いこと。
あくまで、環境に適した、つまり、たまたまその住環境に産まれた中で、
たまたま環境に適していたものだけが生き残る、という事です。
ほぼ、運ですね(笑)。

1000人の人間をパンツ一枚で砂漠に放り込んで、最後に生き残るのは、
最初にオアシスを見つけたもの、通りがかった原住民にたまたま救われたもの
といった、運のいい人たちになるわけです。
チョーイケメンだろうが、ノーベル賞学者だろうが、
カリスマラーメン屋だろうが、砂漠じゃ何の役にもたたんわけで。

ましてや、ゴルトンを始めとする優生学の連中が言うような優秀な人物、
つまり優秀な学者、優秀な芸術家の子孫だけ、となったら、
砂漠じゃ1日持たないんじゃないでしょうかね(笑)。
同様にヒトラー閣下の言うところの優秀なアーリア人の皆さんを
高温多湿な日本に大量に連れてきても、とてもじゃないがやっていけないでしょう。
(みんな北海道に殺到する事になると思う)

カラスがどんなに頭が良くても、ペンギンを押しのけて
南極に住むのは無理なわけです。
あくまで、たまたま、その場の環境に適応したものが生き残ります。
つまり、生物は進化するのではなく、運の良いヤツが生き残り、
環境に適応して、変化してゆくだけなのです。

でもって、私達は、この理論を抵抗無く受けいれる下地があります。
遺伝、という事をある程度理解してるからです。

が、彼が「種の起源」を発表したのは1859年、遺伝子の発見どころか、
メンデルでされ、ようやく研究を始めたばかりという時代ですから、
ほとんどの人にとって理解に苦しむ理論ではあったのでした。

ようやく40年以上たって、メンデルの実験と理論が再発見され、
ダーウィンの理論が少しずつ理解され始めます。
さらに彼の身内の敵といっていい(笑)、優性遺伝派の連中が、
その副産物として、確率統計の技術を発展させたため、
ようやく、世界は彼を理解できるようになりました。

が、今でもまだ、誤解は残ってる、どころか理解されてないよなあ、
と、思い知らされる事が多いです。



さて、この後はどうするか。

このままダーウィンさんの奥の展示を見るか…とも考えたのですが。
チャールズが無言のまま、例の恐竜の化石をじっと見つめてるので、
とりあえずそっちに行ってみる事に。

ちなみに、館内マップは翌日手に入れたので、この日は完全に適当に動いてます(笑)。



その巨大恐竜の尻尾。
ディプロドクスとの事ですが、よう知りません(涙)…
なんでも、アメリカの、あのカーネギーが寄贈したものらしいです。



さて、そこからなんとなく右に曲がってみると、
なんだか子供達がどんどん写真左手にある入り口に吸い込まれてゆく。

精神年齢的に、彼らの好きなものは、大抵私も好きなので、
なんとなく着いて行ってみる事に。


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