■イギリスにおける4本足について

さて、ようやくイギリスに復帰した所で、
早速行ってみようか。

「いや、この旅行記のタイトルはロンドン旅行記だろ。
またもタイトルに偽りありじゃん」

そうじゃない、そうじゃないんだ、ペロ君。
愛はね、こういう形でしか伝えられない事もあるんだよ。

「さいですか」

個人的には、現金を媒介にしてくれると
一番よく伝わるんだけどね。

「さいですか」

というわけで、今回はこれだ。



「…なんか、アタマ悪そうな犬の絵が描かれてるけど…」

これはウルヴァーハンプトンの駅にあった、
犬専用の水飲み設備だよ。

「へー、駅にまで、犬の水飲み場があるんだ。
僕ら犬族にとっては理想の国だね、イギリス」

いや、それはイギリスの犬が特殊だから、と考えるべきだろう。

「特殊って何が?」

ここに書いてある英文を読んでみるとわかる。
まず上半分の文章は
“この設備は我々の四本足の友達のためのものです”

「例によって回りくどい言い方だけど、犬のためってことだよね」

まあね。ここまでは、まあ、問題ない。
問題は下の文だよ。
“あなたの喉を、ぜひ潤してくださいませ”

「それが?」

わからないかい?
前半の文章は飼い主に向けてのものだが、
後半はあきらかに犬に対して向けられたメッセージなのだよ!
じゃーん!

「だから?」

この文章から読み取れる事実関係は以下の通りとなるんだ。

●利用者の犬が、自らこの文章を読んで水を飲む事を期待している

●文章は極めて丁寧であり、かつこの設備も衛生的だ

●資本主義社会における商業サービスは
実利の見返りを期待して、その対価として行われる

ゆえにその結論は以下の通りになる。

●イギリスの犬は英語が読めて、かつ、鉄道会社にとって、
客として十分魅力的なほど、金持ちだ

なるほど、これならイギリス人があれだけ
犬に親切なのも納得がいくよね。

「いや、別に」

ハハハ、強情だな、ペロ君は。
でもね、状況証拠はこれだけじゃないんだ。
もう一つの証拠として、連中、犬以外には
極めて冷淡だ、という一面を持っている。

「ほんとにかよ」

ホントだとも。これをご覧。



「世界一有名な黒い哺乳類のカップル?」

ピンポン。パリにある某テーマパークだが、
なぜかパリよりもロンドンで広告をよく見かけたのさ。
ちなみに、これもロンドン市内の地下鉄駅のポスターだ。
で、このペストキャリアーの彼の顔に注目だ。

「…オスのほうね。ん?なんか貼ってある?」



こんな文字入りのテープが張られてました。

「意味は?」

くだらないヤツ!ってとこ。

「あれま」

かように、イギリス人は犬以外の生物に過酷なのだ。
やはり、イギリスの犬は特殊だ、と考えるべきだろう。

「さいですか」



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