■ドイツの花園にようこそ



で、そのミサイルとロケットモーターの秘密の部屋を出ると、これが。
このハンガー1の一番奥にひっそりと咲き誇る秘密の花園、じつは結構とんでもない
シロモノが満開、というドイツのチョー秘密兵器コーナー(笑)。

ここには、私も初めて存在を知った、といった品々がゴロゴロしておりました、はい。



ドイツが大戦争中に開発した有線誘導の空対空ミサイル、
Ruhrstah(ウールシュタール?)社のX4。

1942年から開発開始、1944年の夏から実射テストを行い、
1945年からは量産が進んでいた、世界初の空対空誘導ミサイルです。

ただ、誘導ミサイルといっても、撃った機体のパイロットが、
目標を目で見て、ジョイスティックで操作するもの。
ちなみに、ジョイスティックは計器板の中に埋め込んで設置されます。

残念ながら、ドイツ空軍への引渡しが始まる前に終戦、
実験機が実戦で一度だけ撃った説があるものの、
それを証明する資料は、現在まで見つかってません。

元々は地上で対戦車用に開発されていたものですから、
根本的に無茶があるんですが(笑)、アメリカの重爆撃機相手なら、
なんとかなると思われていたのかも。
そもそもは爆撃機に搭載された機銃の射程外から
一方的に撃ち落してやれ、と考えられたもので、
最大射程4km、最大時速1000km超で飛んでゆきます。

とはいえ、撃ちっぱなしには出来ませんから、
命中するまで、爆撃機と同速度で飛び続けないとならず、
それって、護衛戦闘機がいたら、いいカモ以外の何者でもないような…。

ちなみに、Fw190とJu88使った実射テストの記録フィルムを見る限りでは、、
目標に誘導以前に、真ッ逆さまに地上に向かって行ってるのが印象的でした(笑)。
ダメだったんじゃないですかねえ、これ…。

ついでに、ほとんど知られてませんが、X-4には2つのタイプがあり、
あくまで私の推定ですが、このコスフォードにあるのは、試作、実験型だと思われます。
もう一つ、量産型と思われるX-4はアメリカ空軍博物館にありました。



ちなみに、これ。

弾頭部、ミサイルの前半部分のカタチが全く異なります。
先端に突き出てる白い突起は、恐らく近接信管用のアンテナ収納部で、
こちらの方が、間違いなく新しい型です。

ついでながら、有線誘導に使われる電線は、中央部の固定された主翼(?)のうち、
2枚の先端部についてるタンク状ケースの中に巻き取られた形で入ってます。
ちなみに、誘導による方向の変更は、尾部のフィンの後半が方向舵になっており、
ここでコントロールするわけです。

発射実験のフィルムや、開発中の写真で見る限り、
上のコスフォードのタイプばかり出てくるんですが、
戦後、アメリカ軍が接収してる写真を見ると、全てこのタイプとなってます。

もしかしたら、ドイツでは別の型番が与えられていたという可能性もありますが、
戦後のアメリカ軍のレポートでも、自信満々にこれをX-4だとしてますから、
これが最終生産型と考えるのが一番自然かな、と。

ただし、この近接信管は詳細不明で、高周波発振装置、
マグネトロンの開発で、完全に遅れを取っていたドイツが、
どういう原理の近接信管を作ったのかは、よく判りません。

ちなみにこれ、目で見ての誘導なので、マグネシウムを燃料に入れて、
曳光弾のようにハデに発光しながら飛んでいったようですが、
それでも直撃させられるとは考えられておらず、
近接信管によって目標15m以内で爆発、その破片でダメージを与えるものでした。

最後に余談ですが、X-4、アメリカ軍は工場を丸ごと接収したので、
それなりの数がアメリカに渡り、現在、個人で所有してる人がいたりします(笑)。



ドイツの誇る秘密研究所、ペーネミュンデが開発していた、
ワッサーファル(Wasserfall)地対空ミサイル。
ただし、これはその研究開発用に作られた縮小模型です。

で、これも誘導ミサイルで、例によって目視で地上から誘導するものでした。
操作方法もジョイスティックです。

元々は弾道ミサイルであるV2を、そのまま敵の爆撃機にぶつけちゃえばどうなる?
といったアイデアからスタート、宇宙から比べれば(笑)はるかに低空を飛ぶ
戦略爆撃機相手なら、ずっと少ない燃料でオッケーとなり、
V2ロケットをほぼそのまま、1/4サイズにしてしまったもの。

ただし、大気中での機動力が必要なので、安定性の確保とあわせ、
胴体の中段部分に、4枚のフィンが追加されてます。
さらに、結局、ロケットモーターも新たなものが開発されたようです。

1941年に開発がスタート、1944年3月には発射実験に成功します。
ただ、実際に飛行してる航空機相手の実験はやってないようです。
余談ながら、なぜかこの発射の記録フィルムが、ロンドンの科学博物館では、
V2ロケットの展示の横で流されていました。
まあ、似たようなもんだけど…。

ところが、これだけV2ミサイルと共通部があると、その開発、生産で、
両者はモロにバッティングする事になり、V2ミサイルの方が優先されてしまったため、
結局、終戦までに量産、実戦投入はありませんでした。
もっとも、高度8000mとかを飛んでる相手に、地上から目で見て
誘導して、どこまで当たるんだ、という気もしますが…。

一応、射撃管制レーダー、ヴュルツブルクと連動し、
ある程度の未来位置予測をやってから発射するつもりだったようではありますが、
どっちにしろ、曇ってたり、夜だったりしたらアウトでしょう。



Rheintochter(ライントクター?) R1地対空ミサイル。
恐らくラインメタル社の製品。
ライントクターというのは、ワグナーのオペラ、ニーベルングの指環
に登場する水の妖精らしいですが、よう知りません(笑)。
ついでに、これはスミソニアンの別館にもありました。
(写真に失敗して旅行記には出てない…)。

1943年の夏から開発が始まった、これも目視による無線誘導ミサイル。
実射実験に入ってもどうもうまく行かず、速度は遅い、さらに高度的にも8000mまでは無理、
という事になって、1945年に入ってから、計画はキャンセルされてしまいます。
どうも、実験段階では、誘導うんぬん以前の問題が多く、
それのテストは行われていないような感じです。

ちなみに、上下の中央部分、小さい方のフィンの横にもノズルがあり、
一番下のノズルと合わせて二段ロケットなんですが、
当時の発射フィルムを見る限り、両方同時に点火して打ち出しており(笑)、
途中で下の段を切り離してから、2段目のロケットに点火…
というタイプではないようです。

しかし、ドイツのミサイルって、木製パーツが多いなあ。



でもって、その後から開発が進んでいた、
Rheintochter R3地対空ミサイルの液体燃料ロケットモーター部。

R3の現物は残ってないんですが、
R1よりはるかにズンドウで、左右に小型の補助ブースターをつけるタイプだったようです。
で、試験中に終戦を迎えた説と、これまた途中で開発中止になった説があり、詳細不明。

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