■水分ゼロのマーメイド


つまりそういう事なんだよ、ペロバヤシ!

「…誰がペロバヤシだ。つーか、いきなり何?」

ついに我々は、神秘のベールに包まれた生物の一つ、人魚の実態を掴んだよ!

「さいですか…って、人魚? ロンドンで?」

そうだ、これがその証拠写真だよ!
ジャーン!




「…キモいなあ。つーか、干からびてますけど」

そりゃ、ミイラだからね!
さすが世界最高峰の博物館、人魚のミイラまで展示してるとは!

「へー、じゃあ展示は大人気だったんだ」


…いや、人っ子一人、居ませんでした。

「この博物館、空いてたの?」

いや、子供と観光客だらけでしたよ。

「で?」

見学者、ゼロ。
つーか、例の啓蒙時代の展示の隅っこのケースにこっそり置いてあったんで、
おそらく来館者の90%は気が付いてないと思うでヤンス。

「…なんか、おかしくない?」

…なななな、何をバカな。
天下の英国(大英)博物館の展示だぜ。

「その展示の解説には何て?」

…解説は無かったのじゃ…

「何かおかしくない?」

なななな、何を証拠に!
念のため、英国博物館のホームページで確認してみようじゃないか!
ちなみにこのサイト、英語以外で使えるのはアラビア語と中国語、
という妙なところなのさ。

「そんな解説板も無いような展示が載ってるのかよ」

とりあえず、博物館のホームページで、mermaid と検索してみよう。
ここで展示物を探す時はSearch the collection database を使うんだよ。
トップページからの検索では、なぜか展示物はさがせないんだ。
…あ、出た。figure、人形だ、としてあるな。

「人形?で、何て書いてあるの?」

えー、18世紀の江戸時代、アリスエ セイジロウ(Seijiro Arisuye)により、
英国王室の人間に贈られたもの、とされてるな。

「…鎖国中の日本から、どうやって?」

そこら辺の説明はないなあ。
あ、原材料の表示があるぜ。

「原材料?」

うん、サルと魚。

「……」

ちなみに、Made in japanだって。

「……」

……

「マガイモノってことじゃん!」

まあ、落ち着け。あ、見ろよ、ここにレントゲン写真まである!
見てみようぜ!

「…魚の尾の部分に、なんかバッチリ、補強材が見えてますよ」

うむ、さすがメイド イン ジャパン!
見事な技術力と言えよう!

「結論、それかよ…」


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