■勝者は君だ

さあ、ペロ君、いよいよこの旅行記もラストスパートだ。
今回はイギリスにおける戦記ものマンガについて、だぜ。

「さいですか」

日本の週刊少年雑誌、というと少年サンデーとマガジンが
1959年に同時創刊して始まるわけだが、
それらを中心に1960年代に戦記マンガ、
と呼ばれるジャンルのブームがあったんだ。
当時、これをキッカケに飛行機やら戦車やらに
興味を持った人は少なくなかったろう。

「…それが?」

実は1960年代の戦記ものブーム、
というのは日本だけの現象ではなく、イギリスにもあったんだ。
偶然か、それを知った日本の雑誌関係者がパクったのかは
わからないが、そのイギリスでのブームの
中心に居たのがこの週間マンガ誌、ザ・ヴィクターなのさ。
ただし、週間マンガ誌といってもComic paperだから、
全部で32Pしかなく、タブロイド版カラー新聞みたいなものだ。



「アメコミみたいだね」

イギリスはその文化圏にあるからね。
ただし、この雑誌のマンガは2P前後の短いものが数本、
さらに読み物記事などがあり、日本の少年雑誌に印象としては近い。

ちなみにこれが表紙なんだが、表紙がある場合と、
表紙からいきなりマンガが始まってる場合とがあった。
戦記ものマンガは表紙からスタートすることが多く、
駅のキオスクなどが主な売り場のこの手の雑誌にとって、
これを露出させる事で売り上げが見込めた、ってことなんだろうな。

「それだけ人気があった?」

…ような気がする。
実際、その時代にイギリスに居たわけじゃないし、
ここら辺の世代のイギリス人の知り合いも居ないので、
どの程度の流行だったかは、よくわからん。

「ダメじゃん」

まあね。
でも、かなりの量のマンガが掲載され、現在でも結構人気があるので、
それなりに流行したのは確かだろう。

「で、これはどういうマンガ?」

これは実録モノ、実際にあった作戦を取り上げた話だね。
終戦間際と行っていい1945年7月31日、当時シンガポールで
ほとんど浮き砲台のような扱いになってた重巡洋艦 高雄に対し、
イギリス海軍は超小型潜水艦、XE3を投入して破壊を試みるのさ。

とりあえず、停泊中の高雄に接近、潜水服を着て艦底に近づいた
マグニスという隊員が吸着式の機雷を設置するのに成功するんだ。

「スゴイじゃん」

まあ、確かにすごいんだけど、すごいのはそこまでなのさ(笑)。
実は4発設置したうち、1発しか起爆せず、
致命的な損害は与える事ができなかったんだ。

「あれま」

ちなみに、マンガでは当然のごとく、最後に高雄が轟沈して終わる。

「こりゃま」

さらにちなみに、イギリス海軍は、要らん恥をかかせやがって、
とばかりに終戦後、高雄を港外に引っ張り出し、
爆薬を仕掛けた上に砲撃まで加えて沈めてる。

で、さらに実はこの話、イギリスにとっては、痛烈な皮肉になってる、
というのは、次回の本編にて明らかになります(笑)。

「どういう事?」

それも、さらに別のマンガも、次回のお話さ。

「この話も引っ張るんか…」


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