■復活のチャンスは平等に

イヤッハ−!

というわけで、英国博物館で生と死について考える
第二回パネルディスカッションを始めたいを思います。

パネラーは私、アナーキャと、
高度に複合的な遺伝情報を持つ犬、ペロ君です。

「…普通に雑種と言えよ。で、パネルディスカッションって何?」

ただの討論会。

「じゃあ、そう言えよ」

カタカナで言うと、底抜けのマヌケちゃんが雁首並べていても、
なんとなくアタマが良さそうに見えていいでしょ?

「限度はあるだろ。むしろ、アタマが悪そうに見えるぜ」

そういうもんかな。
ま、とりあえず行ってみようか。



「エジプトの展示?左のはヤケに小さいミイラだね」

おお、これがミイラと気が付いただけでもエライぞ。
私は最初、何かのゲーム盤かと思ってしまったよ。
でもって、これは鷹のミイラだ。

「鷹?鷹って鳥の?」

鳥のさ。
基本的に、魂があの世からカンバック、この世に復活した時に、
体がなくて困らないように、保存するのがミイラだから、
おそらく、家畜化されていたんじゃないか、鷹。

「そんなものまでミイラにするんだ…」

するんだよ。
ちなみに、右上にあるのはトキのミイラで、
下にあるのがその入れ物。

「トキって…あの佐渡島のトキ?」

Ibis とされていたから、トキの一種だけど、
ニッポニア ニッポン、いわゆる東アジアのトキとはちょっと違う種類だろう。
まあ、トキなんて、ドコにでもいるんだけどね。

「…ってことは、トキも家畜化されてた、ってこと?」

ここら辺はどうもよくわかない。
人に慣れる鳥じゃないし、家畜化してもメリットがないし。
もしかしたら、何か宗教的な意味があるのかも、
と思ったが、ここまで来ると、
もう作りたかったから作った的な世界かもしれんね。

「なんじゃそりゃ」

いや、実際、時代を追うごとにミイラ製造技術って進化してるんだよ。
あの手の技術って、新しいテクニックが開発されると、
つい、試してみたくなりそうだからなあ。

「どうかね、そりゃ」



「これも…?」

そう、ミイラだ。
ケースもマスクもないんだけど、一目で牛だとわかるようになってる。
サイズからすると、子牛かもしれない。

「こうなると、なんでもありだな…」

でしょ。



「…ネコか」

ネコだね。本編にも登場したが、ネコのミイラはかなり多かったらしい。

「…なんか気に入らないな」

とりあえず、エジプト人にとって、
あの世から復活しても、ネコが居ない生活なんて考えられない!
ってな感じだったんだろうな。
ちなみに、ミイラ製作者によって、だいぶネコの顔の造りが違うみたい。

「左側の棒状のは何?」

これは子猫のもの。
子猫ちゃんまでエジプトじゃミイラになってたんだぜ。

「…なあ」

ちなみに犬のミイラは全く無かった。

「……」

繰り返すが全く無かったよ。




「…え?これ…」

そう、これは魚のミイラだ。これはケースで、中にミイラ化された魚が入ってる。

「魚まで…」

こうなるともう、ホントに造りたかったから造った、という世界だろうな。
あるいは死の世界からの復活後の食事用か。

「魚まで…」

ハハハ、実は写真撮影に失敗してるんだが、
昆虫のスカラバベまでミイラになってたんだぜ。

「虫まで…」

そして、再度言おう。
犬は、居なかった。居なかったのだよ、ペロ君。

「…おれ、エジプト嫌いかも」

まあ、そこら辺は個人の自由だ。
ちょっとだけ、マジメな話をしておくと、日本の縄文時代、犬は大事にされた。
キチンと墓に埋葬された例もあるんだ。
これは縄文時代は狩猟生活だったからだろう。

対してネコが大事にされるのは、先にも書いたがネズミ対策、
あくまで農業社会の現象で、ネコがどの辺りで登場するか、
は文明のバロメーターなのさ。
南米の遺跡にジャガーは居ても、ネコは居なかった。

そこから推測すると、恐らく、彼らのとうもろこし農業は、
あまり高い生産性を持ってなかった気がするね。

はい、では今回はここまで。


「…エジプト、エジプトのヤツ…」

はい、ここまでだよ、ペロ君。


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