■死して屍拾われたらこうなった
イヤッホウ!さあ、ペロ君、今回のオマケは人間の生と死についてだ。
「さいですか」
まずはこれを見てもらおうか。
「ワシの模型?」
半分正解。
これはワシの形をしたカンオケなのさ。
「カンオケ?これが?えらい派手だな」
西アフリカ国、ガーナの南東にガ族(Ga
people)と呼ばれる民族がいるんだ。
でもって、その中でも海岸沿いに住む人たちは、
派手なカンオケを造る事で民俗学方面では結構有名だったりするんだよ。
これは、そのガ族のカンオケなのさ。
話には聞いてたが、現物は初めて見たよ。
「まあ、いろんな文化があるんだろうが…しかし、ハデだな」
ところがドンスコイ、これはガ族のカンオケの中では“伝統的”なタイプで、
今では大人しめなデザインとなっているらしいんだ。
もっとも、この手のカンオケが定着したのは1950年代といわれるから、
それほど長い歴史があるわけでもないんだけどね。
「いや、これで大人しいなら、ハデなのはどうなるのさ?」
こうなる。
「…え?どれがカンオケ?」
これ。このカメラだよ。
「…このカメラ?」
うん、キャノンのロゴもまぶしい、このカメラ(笑)。
「…なんでカメラ?」
カンオケのデザインは、生前の遺言で指定されるか、
あるいは遺族が本人が好きだったものを求めるケースがほとんどらしい。
なので、カメラが好きだった、あるいは欲しかったんだけど買えなかった、
という辺りが選択基準となってるようだ。
「こんな形で夢がかなうとは、ってとこか…」
昔のテレビゲームで、キャラクターが死ぬとカンオケに入って持ち歩かれる、
ってのがあったが、あれをガ族基準で作り直すとエライ事になるだろうな。
「その理屈で行くと、ガ族の吸血鬼は、毎晩、カメラやワシの中で寝る事になるぜ」
…文化の違いって、恐ろしいねえ…。
ちなみにその解説板。
左側のが具体的な発注例。
バスの運転手さんだった男性が不慮の死を遂げてしまい、
遺言が無かったため、遺族が本人を象徴するもの、としてバスのカンオケを発注したんだ。
上がカンオケ製作のために提供された写真、下が完成した品。
「よく出来てるね。つーか、材料はなに?」
そこは謎だ。
なにせ人間一人を入れて持ち運ぶんだから十分な強度が要るはずで、
発砲スチロールや紙では無理だろうし…。
で、真ん中は本人の意思で作られた“オレの夢”シリーズ。
上はジェット旅客機で、一度でいいから、乗りたかった、という事らしい。
「下のこれは何?」
これは1960年代、まだ技術が確立されつつあった時期のもので、ライオンだ。
本人が思いついた、もっともカッコいいものらしい。
「見えないぜ。ナスの馬とどっこいどっこいだろう」
まあね。この後、一気に技術が進むんだが。
で、最後の右端はこれ、フイゴだ。
「フイゴって…あの脚で踏んで窯に空気を送り込む?」
そう、そのフイゴ。
普通に考えて、俺の夢、というものではないから、
これ、多分、鍛冶屋さんなんじゃないかな。
「へー」
と言う感じで、人間、死ぬ場所によっては、
死後もエライ事になる、というお話でした。
はい、今回はここまで。
BACK