■そこは儒教の国だから

今回のオマケ編はちょっと志向を変えて、
本編ではなかなか触れられなかった韓国の国旗について、
ちょっとだけ脱線してみましょう。

朝鮮から韓国に至るまで、この地域は儒教の支配地域なのだ、
というのがよくわかるのが韓国の国旗でして、
これは易経の思想がそのまんま入ってます。



まず中心の円は陰陽思想の象徴で、これはそれなりに有名ですね。
陰と陽が入れ替わりながら回転するさまを表してます。
その周辺にあるのは易の八卦のから四つだけを抜き出したもので、
写真の右上から時計周りに乾(けん)、坎(かん)、坤(こん)、離(り)です。
(ただし写真の旗は下向きに掲揚してあるため、本来は右側が上になる)

占いで知られる易ですが、これは一種の哲学と言うか、思想でもありました。
万物には陰と陽の面が必ずあり、両者が両立することはなく、
常にその優劣は変化し流転し続ける、という考えです。

そして上の国旗にもあるように、易の卦では陽の力を一本棒、−で現し、
陰の力を分割された棒、- -で表します。
そして陽は男性、天、南、夏であり、陰は女性、大地、北、冬である、というように
陰陽にはさまざまな意味が持たされているのです。

ちなみに陰陽思想、と言うと魔法思想の道教が思い出される人もいるでしょうが、
根っこは同じながら、易経の陰陽思想はもうちょっと理屈っぽいものになります。

で、例の儒教マスターこと孔子のダンナが
晩年に強烈に入れ込んだのが、この易でした。
現在に伝わる易のマニュアル、易経には“伝”と呼ばれる
卦の解説が大量に入っています。
(個人的には極めて無意味な内容の部分だと思うが…)

で、証拠はないんですが、この部分は孔子が書いた物とされるのが一般的です。
すなわち孔子と易は深い関係にあり、当然、儒教徒にとっても
易の思想はとても重要なものと見なされます。

なので儒教国家にとって易のマニュアルである易経は必読書であり、
江戸期の日本も上っ面は儒教国家でしたから(笑)、
必修学問の一つにこの易経がありました。
さらに加えて李氏朝鮮には科挙、試験で国家官僚になれる制度がありましたから、
その知識層にとって、易の思想は常識の一つだったはずです。

なので、この国旗にも、その影響が強烈に見て取れます。
とういうか、これは易経の世界観そのまんまのなのです。
せっかくだから少しだけ、詳しく見ておきましょうか。



韓国の国旗は儒教思想を象徴する内容になってます。
キリスト教国家にはキリストの十字架をイメージした国旗、イスラム国家にはイスラムの象徴である三日月を使った
国旗が多く見られますが、その儒教版が、この韓国の国旗とも言えるでしょう。

ちなみに共産圏の国家も、その思想的な内容を国旗に持たせることが多く(基本的に赤旗)、
そういった意味でも、やはり共産主義は宗教の一種ですね(笑)。



まず中心に陰陽の円があるのはこれが世界の中心原理だからです。
次に斜めに向かい合ってる四つの卦に注目します、
陽の−が四本の乾(けん)、陰の- -が四本の坤(こん)が向かい合い、
中心が反転した陰陽になってる坎(かん)、離(り)が向かい合ってます。
これらは卦を使って東西南北を示しているのです。

陰陽では陽が南を象徴しますから、
陽の−が4つの乾(けん)が南を、陰の- -が4つの坤(こん)が北を示します。
そして理屈が良くわらかないながら(笑)、
坎(かん)が西を、離(り)が東を示しているのです。

すなわち、これは易経における世界地図となるんですね。
中心点に根本原理である陰陽の円を置き、
そこから卦の形で東西南北を示しています。
ある意味、世界地図をかたどった国連旗を易経式に翻訳するとこうなる、という旗が、
現在の韓国の国旗だ、となります(笑)。

余談ながら、易における東西南北の示し方は、実は2種類あります。
先天図、後天図と呼ばれるもので、この両者で東西南北を意味する卦が異なります。
で、韓国の国旗は先天図の卦を基にしたものです。

ここで、もうちょっと脱線すると、元々、朝鮮半島ではむしろ後天図の方が一般的で、
そちらの東西南北の卦が使われていました。
なので、この国旗でなぜ先天図の卦が採用されているのかは全くの謎です。

韓国独立以前から、陰陽円と八卦を組み合わせた旗はいくつか存在するのですが、
その多くが後天図の卦を使って東西南北、世界を示しているのに、
なぜかこの韓国の国旗だけは先天図の卦を使って東西南北を示しています。

この点は韓国人の方でも知らないことが多く、
この国旗における四つの卦の解説が変にピント外れなものが多い原因となってます。
難しい理屈を述べてるのをよく見かけますが、
これは単に先天図の卦による東西南北に過ぎませんから、
普通に易経式に全世界を示しただけでしょう。
後天図の卦で考えると全く意味が通じなくなるので要注意なのです。

以上、韓国の国旗、ちょっといい話(?)でした。


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