■陸だって展示するぜ



さて、今回は陸上兵器編です。
航空機に負けず劣らず、結構面白いものがありました。



第二次大戦末期のソ連による駆逐戦車、Su-100。
日本語では自走砲とされる事が多いですが、英語圏ではTank destroyer、
対戦車専用の駆逐戦車に分類されることが多く、その方が実態に近いでしょう。

この長砲身(砲弾の加速が長時間になって速度が上がる)100mm砲は
当時では最強の対戦車砲の一つであり、ドイツのほとんどの戦車の装甲を
正面からの勝負で撃ちぬけた、とされてますから、まさに最強の対戦車兵器です。
(ただしティーガーII、いわゆるキングタイガーだけは耐えられる可能性があったらしい)

デビューが1945年に入ってからなので、第二次大戦中にドイツ戦車とまともに
撃ち合ったことはあまりないようですが、その後、朝鮮戦争にも投入されていたようで、
この車両は、おそらくその時に鹵獲されたものでしょう。



この手の車両は、安価で大量に生産するために、
どの国でも既存の戦車の車体を流用してます。
ソ連もその通りで、後ろから見ると車体はほぼT-34そのまんま、
というのが判りますね。

ついでに、ソ連の戦車がドイツ戦車に対して有利だったのは
その航続距離の長さで、補給なしで一気に長距離を走破できました。
(この点はクリスティ式サスペンションの恩恵も大きい)

その要因が、T-34などにも見られる、この車体後部の筒状の燃料タンクです。
燃料タンクむき出し、ということでちょっとビックリしますが、
ソ連は早い段階からディーゼルエンジンを採用していたため、
燃料は軽油であり、そう簡単には発火せず、
ましてやガソリンのように爆発する、という危険がなかったのです。
よって、燃料タンクを被弾の可能性が高い車体外に置くことが可能で、
これが大きなメリットとなって行きます。



1950年代に開発された代表するソ連の装甲車両、PT-76…
と思ったら、それを中国が生産した63式戦車だそうな。
ちなみに、中国でこの装甲車をホントに戦車と呼んでるのかはわかりませんが、
とりあえず、解説板の中国語では戦車と書かれていました。
この車両はベトナムで韓国軍が鹵獲したものだとか。

ついでながら単純なコピーではなく、主砲が76.2mmから85mmに強化されてるそうな。
ここら辺り、正規のライセンスを得たものか、
勝手にコピーしちゃったものかは微妙でしょうね(笑)。

1960年代以降のソ連と中国の対立は、よく言われるようなイデオロギーの対立ではなく、
朝鮮戦争時の兵器代金をソ連が要求したものの、
中国は支払いを拒否(タダでくれたと思ってたらしい)、
この金のもつれに加えて、ソ連から援助してもらった兵器を
中国がバンバンとコピーし始め、さらには輸出まで始めてしまった事が原因でしょう。

本当にイデオロギーで戦争する人類は有史以来、それほど居なかったはずですが、
金がからむと、直ぐに戦争になるわけで、
その結果、中ソ国境紛争にまで繋がるわけです。



ソ連のT-55戦車…と思ったら、これも中国製のT-59という戦車だそうな。
そんな名前の戦車、初めて知りましたよ(笑)。
そういや昔、アメリカの新聞でコソボ紛争のT-59戦車、というキャプションを見た事があり、
てっきり誤植か勘違いだろうと思ってたんですが、実在したんですね、T-59戦車…。
でもって、これもベトナムに行った韓国軍が鹵獲した車両だとか。

ちなみにこの戦車の原型、ソ連のT-55の原型、T-54は終戦後わずか2年、
1947年から生産が始まっており、
この時代の戦車としては恐らく最強と言っていいシロモノとなっています。
ただし、私が確認できた範囲では朝鮮戦争には投入されていないようです。

とりあえず戦車の設計に関しては、ソ連人、たいしたものだなあ、と思いますです。

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ちなみに、上から見て初めて気が付いたんですが、
この戦車、砲塔が車体からはみ出しており、
横のキャタピラカバーの上まで覆ってるんですね。

横からあの段差を狙われたらかなり怖いでしょう、これ…。

ついでにハッチを見ると、お椀型の砲塔の上面が平らでないのがわかります。

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