■ソウル2012

さて、そんな血なまぐさい印象がある街、
ソウルですが、それは20世紀までの話。
1980年代から始まった経済改革、1990年代からの民主化で、
東アジアを代表する大都市の一つとなりました。

ちなみにソウルが首都となったのは李氏朝鮮時代、
1394年あたりですから、その歴史は東京よりも古いことになります。
この李氏朝鮮が朝鮮半島の凋落の犯人、と言っていい王朝なのですが、
これが1392年から1910年(日韓併合)まで、実に520年近く続きました。
統一王朝でこれだけ長持ちした例は珍しく、
中国でもありませんし、そもそも王朝と言う考えが無かった日本でも、
これだけの長期政権は存在しませんでした。
(天皇家は少なくとも1500年近く生き残ってるが政権ではない)

ちなみに朝鮮半島では、李氏朝鮮の前の高麗が約480年、
新羅がやはり600年近く(統一前から数えて)続いており、
ある意味、長期政権の多い地域です。



市内には、数は少ないものの李氏朝鮮時代の遺構が残ってました。
写真はその一つ、東大門(トンデムン)。
周囲はソウルを代表する繁華街となっています。

が、最初は16世紀末における秀吉の朝鮮出兵、
そして400年後の朝鮮戦争でこの街はほとんど破壊されてしまったため、
多くの建物が近世に再建されたものとなってます。
さらには日本の統治時代にも城壁を壊してしまったりしてますし、
朝鮮戦争後の開発にともなって、さらに多くの遺構が失われたようです。

写真の東大門はそんな中で一応、建設当時から生き残ってる、とされるもの。
ただしよく見ると、そもそも土台の石垣からして、かなり後代の手が入ってるのがわかります。
石の大きさがばらばらですから、一度崩れて放置されてたんじゃないでしょうか。
ちなみに、もう一つのソウルを代表する門、南大門(ナンデムン)は
2008年、放火によって消失、現在再建中でした。

なのでソウルは古い都市ながら、歴史ある建築物があまり現存していない街だったりします。



よく見かける朝鮮と言う名称は李氏朝鮮王朝から来てるのですが、
これが日本支配時代の名称にもなり、
さらには北朝鮮の名前にも使われてるため、
韓国ではあまり好まれない名称のようです。

ちなみに朝鮮戦争は戦争記念記念館の展示では6.25戦争と表記してました。
6月25日に始まった戦争、という事ですね。
ついでながら、大韓民国の韓の字は、恐らく古代朝鮮半島にあった
三韓の国からとったものでしょう。

さらについでながら、ソウルの漢字表記は漢城、京城の2種類があったのですが、
現在は両者とも使われていません。
ついでに京城は朝鮮語の漢字表記で単なる首都の意味で、
ソウル以外、新羅や高麗の首都も京城と呼ばれてたりするんで、
ここら辺りはちょっと注意が必要です。

一般的には中国では漢城の字が、戦前の日本では京城の字が、
それぞれ使われてる印象がありましたが、
現在は首爾が正式な漢字表記となっているようです。
ただし、現在の韓国はハングル文字以外は使わない、が基本方針なので、
これは中国人向けの文字らしいです。日本じゃカタカナでソウル、ですしね。

そんなソウルは人口1千万の大都市であり、極めて広大な都市圏を持ちます。
個人的な印象で言えば、その都市圏の面積は上海、香港、大阪より広く、
東京にほぼ匹敵するくらいの規模がありました。
ロンドンやバンコクでは勝負にならないでしょう。

これほどの大都市がこんな日本の近所にあったとは、と驚いたのですが、
都市の密度、高層化やその構成ではやや寂しい部分があり、
上海やバンコクよりは都会でしたが、ロンドン、香港、東京と比べるとやや落ちます。
ちょうど大阪あたりがほとんど同じ都会度のような印象です。

特にその中心部は意外に狭い範囲に限られており、
普通に観光するなら、この中心部エリアをウロウロするだけで十分です。

ちなみにソウルも川沿いの街で、漢江(ハンガン)沿いに広がっています。
またも余談ながら世界中の多くの大都市が川沿いにありますが、
恐らく船を使った交通を考えての事でしょう。
少なくともヨーロッパでローマ人が造った都市、
ローマ、ロンドン、パリなどは水運が目的でしたし、
上海は海から近い川沿いにあったため、イギリスがあの場所を選んだわけです。
(淡水域だと木造船の敵、フナクイムシが生きて行けず安全に船の係留ができる)

ただし、この漢江はソウルの中心部からかなり離れた南側にあり、
ロンドン、パリ、上海といったような川を中心に発達した街ではないようです。
ただ、近年になってからは完全に都市部に取り込まれ、
その南岸も1992年のオリンピックを契機に、一気に開発が進んでました。
ある意味、東京の隅田川周辺に似てます。

とりあえず最初にその中心エリアを確認してしまいますよ。




さて、この街の中心は西はソウル駅から東は東大門に至るエリアとなります。
地図には入ってませんが、この間を清渓川(チョングェチョン)と言う小さな川が直線に流れており、
この川の流域に繁華街が広がっていると考えてください。

で、この街の最大の特徴が、市の中心と言っていい位置にソウル駅があること。
日本以外の国では、極めて珍しい例です。
さらにこの駅は終着駅ではなく、南北に線路が繋がっていて、
日本の都市駅のように、国内中のさまざまな地域に行く列車に乗れます。
海外の大都市で、こういった構造を見たのは初めてでした。
おそらく、これは日本の統治時代の名残でしょう。

で、ソウルの繁華街は大きく分けて二つあり、市内に残る李氏朝鮮時代の城砦門、
南大門(ナムデムン)と東大門(トンデムン)の周辺にそれぞれが展開してます。
ちなみに南大門は名前は南ですが、実際はソウルの西側、といっていい位置にありました(笑)。

ソウルの一つ目の繁華街が、ソウル駅の北東側、その南大門を中心としたエリアです。
ここに南大門市場とソウルの渋谷、心斎橋、という印象の
やや高級&若者向けな街、明洞(ミョンドン)があります。

そして、そこから東に歩いて20分前後(地下鉄だと3〜4駅)
の距離にある東大門周辺がもう一つの繁華街。
ここでは東大門市場を中心に、その周囲に無数といっていいほどある(笑)、
さまざまな市場が展開しており、規模ではこっちの方が上でしょう。

これ以外にも、細かい市場や特殊な市場(笑)がいくつかあったりしますが、
今回見てきた限りでは、この二つがソウルを代表する繁華街だと思います。

で、今回、夕撃旅団前線本部となったのは、その中心部の完全に外と言える(笑)、
漢江南岸、新川(シンチォン)駅エリアとなりました。

これは昨年のロンドン同様、宿代をケチったからなんですが、
昨年の体験から少し街外れの方がかえって面白い、ということで
むしろ望むところだ、という感じでここを選んでます(笑)。

実際、毎日片道40分以上の移動をやるハメになったのですが、
ここは、それに十分見合うほど面白い場所でした。
ちなみに、ここから東に10分ほど歩くと(地下鉄で1駅)
ロッテワールドで、さらに周辺にはオリンピック公園もあり、
東京で言うと浦安とか世田谷あたり、
かつてはちょっと土地のあった郊外エリア、という感じでしょうか。


都市中心部にあり、さらに国中のあらゆる方面に行ける、というのがこのソウル駅。
日本式の鉄道システムと言ってよく、世界的には極めて珍しいものです。
ちなみに写真は保存されてる旧駅舎で、現在の駅はもう少し南側になります。

日本以外の国の首都の鉄道駅は現在の空港のように街外れに造られ、
さらに行き先別に駅が分散しているのが普通です。
このため、行き先が違えば乗車する駅も違う事になります。

例えば日本中のあらゆる方面に向かう新幹線は東京駅から出てますが、
これが海外だと行き先別に、新宿、上野、品川、などの駅に分散されるのが普通なのです。
そして、各駅間の連絡はなく、地下鉄かバスで移動します。
日本の鉄道になれてると、なんていう効率の悪さだと思いますが、
それが世界標準となっているわけです。

実際、ロンドンやパリなんて、市内の外縁に、行き先別の複数の駅が存在してますし、
アメリカでも駅の数は少ないものの、都市の外れに遠距離鉄道の駅がある、という構造は変わりません。
アジアでもバンコク、上海が似たような街外れに置かれた分散型の駅となっています。
東京や大阪のように、都市の中心部に全てのハブ(中枢)となる駅がある、というのは珍しいのです。
なので、街中にソウル駅があって、しかも東京駅のような路線構造になってると知って、
現地でちょっと驚いたのでした。



東大門市場周辺部の市場のメインとなる部分は衣料品街なんですが、
それ以外にもペットからオモチャ、文房具とあらゆる専門店が並んでいて、かなり楽しいです。
ただし、日曜に行くとほとんどの店が閉まっていて、ゴーストタウンになってます(笑)。
その代わり、屋台があちこちに出てますけども。


そしてソウルの面白いところはそんなダウンタウンの直ぐ下に、
南山という、自然の豊かな山があること。
標高243mながらかなり立派な山で、山頂には電波塔のソウルタワーが建ってます。
実は日本が統治時代に、ここにデカイ神社を建設しちゃったりして、
反日感情の源になりました、という歴史もあったりするのですが(涙)、
現在は緑豊かな自然公園になってるようです。

この山によって、ソウルの街の中心部は南北に分断される形になっており、
ある意味、街の中心部に空白部分が形成されています。



ホントに街のど真ん中、渋谷や心斎橋の直ぐ横、という位置に
こういった自然そのまんま、という感じの山があるのです。

ある意味、香港島周辺に似てますね。
山頂付近に見えてるのは電波塔のソウルタワー。



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