■灰色ネズミの居る生活
2017年8月11日より、夕撃旅団 齧歯目特捜課に期待の新人としてデグーが配属されました。
南米太平洋岸、チリの乾燥地帯から来た歌う草食齧歯目。ちなみにメスです。
それから約二月の間の記録が今回の記事でございます。
こんなノンキな顔ですが、全銀河中の齧歯目の中でもぶっちぎりに知能が発達している恐るべき哺乳類で、
21世紀のビジネスシーンで人類に次ぐ新たな巨大マーケットを生み出す
ソリューションとして期待できるカスタマーと言えるでしょう。
…何言ってるのか、自分でもよく判りませんが。
でも横から見ると鼻先が縮んだドブネズミのようにも見えて、印象は微妙です。
尻尾に毛があるものの、リスみたいにフサフサではないですしね。
それでも齧歯目が好きな人間なら、こりゃラブリーとなるでしょう。
ちなみにデグーは齧歯目ですがネズミとは亜目(Suborder)レベルで違うので、完全に別物。
似てるのは他人の空似みたいなものだと思ってください。正面から見るとリスの方が似てますしね。
まあ、これを灰色ネズミと呼んでる私が、偉そうなことは言えませんけども(笑)。
ついでに種としてはデグー属という独立した属を持ち、いわゆるデグー、ウチに居るこれは、
一般デグー(Common
degu)と呼ばれるその中の一種です。
(犬属の中の犬(大陸オオカミ)みたいなもの)
ちなみにデグー属には月牙デグー(Moon
toothed
degu)という
チビッちゃいそうなくらいカッコいい名を持つ真黒な夜行性のデグーがおります。
が、このデグー、その名に反して独特の容姿でして、ある日アンドロメダからの怪電波で
地球中の哺乳類が日本語をしゃべるようになった時、
間違いなく語尾が「ヤンス」になるのはこいつであろう、という顔をしてます。
興味のある人はMoon
toothed
degu で画像検索してください。
ほとんど知られてない生き物なので、普通のデグーの画像がやたら出てくると思いますが、
その中に混じってる、一度見たら忘れられない黒い顔のが、月牙デグーです(笑)。
さて、夕撃旅団期待の新人デグーですが、
賢いのは事実で、2006年から2008年に理化学研究所、理研の複数のチームが発表した報告によると
■最低でも15種類の音声コミュニケーションで集団内で意思の疎通を行う
■入れ子構造の概念が二段階目まで理解できる
■道具が使える
といった知能を持ちます。ただの齧歯目がですぜ。
まず、言語。
デグーは鳴く齧歯目なんですが、それにはキチンと意味があるという事です。
理研の生物言語研究チームがデグーの音声コミュニケーションの研究を行っており
その内容の一部が理研の紹介記事に出た事があります。
それによるとデグーは15種類の音声を使い分け、
これを言語としてコミュニケーションを取ってるとの事。
これらは先天的に持ってる能力らしく、どのデグーも同じ言語を使うらしいのですが、
求愛の歌だけは学習によって進化するそうな。
ウチのは単頭飼いなので全くと言っていいほど鳴きませんが、
これは飼い主を見たデグーが、あいつは頭悪そうだから、きっと言葉は通じない、
と判断した結果である可能性が高いです。
次の入れ子構造というのは、箱の中に次々とモノを入れてゆく構造の事。
実際はこれを複数、多段にしたマトリョーシカのような構造を指します。
大抵の動物は箱に何かを入れる、という一段階目までは理解できても、
その先は無理なんですが、デグーは、箱の中に箱を入れ、
さらにその中に小さいボールを入れる、といった二段階目までの作業をやってしまうのです。
人間様からすればどうってことない作業ですが、これができる動物は限られます。
箱を単なる物体ではなく、何かを収容できる道具、と理解しないとできないからです。
一般にこれが理解できないと道具を使用する知能が無いと判断されるので、
この作業ができる生き物は極めて少ないのです。
なんでこんな小さな齧歯目がそこまでできるのかは謎としか言いようがありませぬ。
(ただしカラスは道具を使うが、入れ子構造の概念が理解できるのかどうか、
そういった実験のレポートを読んだことが無いのでよくわからない。
チンパンジーはデグーと同じ二段階構造まで理解できるが、それ以上は訓練が要る。
三段以上の入れ子構造が生まれつき理解できるのはおそらく人類だけだろう。
これは二本足歩行とか、手が使えるとかと並んで人類が文明を築くうえで最大のポイント。
逆に人間が生み出した知性、AIは構造そのものが完全に入れ子構造(Nested
structure)の
プログラムで構築されるので、意識的に禁止しない限り最初からこれができる。
人工知性と、天然知性の見分け方の一つかも)
そして入れ子構造が理解できる、という発見から発展する形で、
デグーは道具を使える、という事も確認されました。
2008年、理研脳科学総合研究センターの生物言語研究チームと
象徴概念発達研究チームという早口言葉みたいな研究チームの皆さんが、
デグーが道具を使う事を学習する、という研究結果を発表したのです。
これは壁の向こうのエサを取るために熊手のような道具を与え、これを使ってエサを取れるか、
というのを実験したもので、訓練によってデグーはこれが可能になる、との結果が出たのです。
単に引き寄せるだけでなく、回り込むようにして取るのまでできたそうで、
齧歯目が道具を使う、という発見はこれが世界初だったとされます。
この実験で使われた6匹のデグー(オス4匹、メス2匹)全てが道具を使って
エサを取れるようになったそうで、賢いのは間違いないようです。
ちなみに理研のデグー研究、世界の先端を走っていたはずなんですが、
2008年ごろを境にパッタリ途絶えてしまっています。
何かあったんでしょうかね…。
NEXT