イギリス空軍(RAF)が使用していた電池車。
ずっと大きな2輪のついたリヤカーみたいな構造だと思ってたんですが、
実は前部に小さな車輪が1個ある三輪車だとこの展示で初めて知りました。

先に説明したように駐機中の機体に電気を供給するもので、中には鉛蓄電池が入ってます。
展示のものは単なる電池車ですが、
この上に小型のガソリンエンジン発電機を搭載したタイプも多く使われました。

イギリスの場合、機体によって12、18、24Vといった感じに電圧が異なったんですが、
この電池車は電圧変更が可能で、これ1台で全ての機体に対応してたようです。



スピットのMk.Iに搭載されていたマーリンIIIエンジン。
最終的には1375馬力まで出したようで、そこそこがんばっていますね。

とにかくバリエーションが多いマーリンですが、III型は単発戦闘機用に生産されたもので、
スピットの他にもハリケーンやボールトンポールのデファイアント(笑)などに搭載されました。
こうして見ると、機体の性能はエンジンで大きく左右されるものの、
エンジンだけが良くてもダメだ、というのがよくわかります…。

ついでにエンジンというのは当然、航空機最大の重量物で、マーリンIIIは単体で650kgもあります。
これにラジエターやオイルクーラーなどの補器類をあわせると、軽く800kg近くあったはずで、
せいぜい3.3t前後の重量しかないスピットでは、その約1/4がエンジンの重さなのです。

上部がシリンダーヘッドで、下がクランクケース。
シリンダーヘッドの横の楕円形のフタがはめられた部分が排気口で、
こちら側に6つありますから、全部で12気筒のV12エンジンだ、というのもわかります。

余談ですが、マーリンは戦後も1950年代に入るまで生産が続いており、
全部で16万5000台以上も造られた脅威のレシプロエンジンとなっています。
ちなみにこのIII型は約6400基造られたのだとか。



後ろから見るとこんな感じ。
本体の背後にゴチャゴチャついてるのは過給器で、マーリンの場合、
機械式駆動、つまりエンジン出力の一部を使って空気を圧縮するものでした。
よってタービンを回転させる機械式スーパーチャージャーがクランク軸の延長線上に付いてます。

このIIIではまだ1段1速、つまり圧縮用のタービンは大きめのが羽根車一つ入ってるだけで
それほど凝った構造ではないはずなんですが、ご覧のように意外にゴチャゴチャしてますね。
過給器に入る空気は右側で下を向いてる吸気口から導かれます。
このため、スピットファイアの空気取り入れ口は機首下にあるわけです。

エンジン全体がペンキで塗られてるのは、熱対策で、エンジン表面から
熱放射の形で熱を逃がす場合(赤外線などの電磁波で熱を逃がす)
金属地剥き出しだと極めて効率が悪くなってしまい、
このためペンキを塗って、その放熱の効率を上げてます。

黒くしたのはこの色がもっとも熱を電磁波で逃す、熱放射のに適してるから。
黒は外からだけでなく中からの電磁波もよく吸収するのです。

といった感じで、この機体に関してはここまで。

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