■スピナー

次にエンジン周りを見ておきます。
と言っても、P.O.F.の52型はオリジナルの栄エンジンで飛べるのが売りですから、
エンジン本体に考証の余地は少なく、その周辺部を見ておきましょう。

まず、限りなく怪しいのが可変ピッチ油圧装置を覆うカバー、
いわゆるスピナー部分です。
ちなみにプロペラ スピナーは空気抵抗削減のためのもの、
とだけ説明される事が多いですが、
同時に、可変ピッチ装置保護のため、という目的もあります。



写真は60番台マーリンエンジンに装着された4枚プロペラ用、可変ピッチ調整器。
第二次大戦期以降のプロペラ機の場合、
エンジンの回転軸に直接プロペラがくっついてる、
という単純な構造ではなく、常に最適な迎角で
プロペラを回転させるために(飛行速度ごとに最適な角度が異なる)、
その根元にはこういったピッチ(取り付角)変更用の装置が付いてました。

スピナーには高速化のため、機首部の空気抵抗を削減するのと同時に、
この精密な調整装置を保護する、という目的もあったのです。

で、ゼロ戦のスピナーは複数のパーツに分割されてるのですが、
注目したいのは、各パーツの固定用ネジ部分です。



まずはオリジナル度が高いスミソニアンの52型から。
白い輪で囲った部分がその固定用のネジなんですが、横に(奥に向けて)二つ並んでます。



対してP.O.F.の52型。
こちらでは、ネジは縦(回転)方向に二つ並んでいるのです。

昭和19年、鹵獲当時の同型機の写真では上のスミソニアンタイプ、横並びとなっており、
よってP.O.F.の52型のスピナーは、これもオリジナルではなく、
後から新造したパーツ…と思ってたんですが、今回調べて見たら、
当時の他の機体の写真で、どうも縦並のネジに見えるものを見つけてしまいました(笑)。
あれま。

よってこの部分は限りなく怪しいけど、
オリジナルではないとは断定できない、とお茶を濁しておきます…。
ただし、少なくともこのネジはオリジナルではありませんね(笑)。


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