■ハインケルHe162A フォルクス イェガー(ザラマンダー)
Heinkel He 162A Volksjager (Salamander)

(2011年11月改訂2版)



RAF博物館 ロンドンにて撮影


ドイツの「国民戦闘機」ことHe162A。
第二次大戦末期に登場した、ドイツの最後の悪あがき戦闘機なんですが、
それがジェット機だった、というのがドイツらしいところではあります。

もっとも、戦争末期に造られた機体らしく、ジェット機でもかなりの部分が木製で(涙)、
金属で作られてるのは燃えちゃう恐れがある機体のコクピットから後ろだけ、
機首部はもちろん主翼も木製で、現物を見た限りでは、垂直尾翼も木製のようです。

エンジンは背中の上に1基だけ搭載されてますが、
同じドイツのジェット機、Me262やAr234らが積んでいたユモ004ではなく、
BMWの003を搭載しています。
両者にそれほどの性能差はないので、生産数の問題で、
異なるエンジンを採用したんじゃないでしょうか。

ちなみに、戦中に潜水艦によって断片的に日本に伝えられたジェットエンジンの設計は、
このBMW003の方でした。
ついでに1944年後半設計開始なので、もはやイギリスにすら飛んで行く気はなく、
とにかく本土上空の爆撃機の撃墜が命、航続距離は短めでオッケーとされたため、
搭載燃料が少ない分、プロペラ機と比べても、極めて小さな機体となっています。

もともとは、戦争末期になって「パーっとつくれて取り扱いは簡単で、強力な飛行機が欲しいの」
というドイツ空軍ことルフトバッフェによる要望に応えて開発された機体です。
が、そんなのが可能なら、最初からやってるわけで、出来るわけがない(笑)。

この空軍の断末魔的ヒステリーにうっかり返事してしまったのが、
今まで散々冷や飯食らわされてきたハインケル社で、
ほとんどやる気が無かったらしき他社の提案を押しのけて、
このHe162が採用となりました。
以後、まさに突貫作業で開発が進められ、
1944年の12月、空軍が要求仕様を出してから3ヶ月前後で初飛行ですから、
これはもう、狂気の沙汰です。

その後、終戦前に実戦投入されてるのですが、
公式な撃墜記録はゼロ。

ただし、テンペストを撃墜したザンス!と最低でも2回申請が出てるようですが、
英軍の記録を追うと、同日にテンペストが1機だけ
該当空域で行方不明となってるそうなんで、撃墜の可能性はある、ということでしょうか。

ついでに、ニックネームにも混乱があり、日本じゃ通りのいいザラマンダー(ザだよ)ですが、
これは本来、このめちゃくちゃワヤヤな機体製造プロジェクトの計画名でした。

機体に対しては航空省(RLM)はフォルクス イェガー(国民戦闘機)と命名し、
ハインケルはスパッツ(Spatz/すずめ)と
えらくまた控えめなネーミングをしています。

ちなみにこの機体、現存機は最低でも7機以上あり、
(フランス1機、イギリス2機、カナダ2機、アメリカ2機)
その生産数のわりには、意外に多くの機体が生き残ってます。
(RAF博物館によると部隊配備数116機、
完成済みで部隊配備待ちが55機以上という段階で終戦になったそうな)


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