最後はそこに展示されていたグリフォンエンジン、Mk
57A。
現物を見ると、あれま、意外に小さいな、というエンジンでもあります。
ただしこれは戦後も長く現役だった対潜哨戒機、アヴロ シャックルトンで使われていた型。
ちなみに1991年退役の最後の機体に搭載されていたエンジンだそうで、
48年間使われ続けたものだとか。
…7時間しか飛ばなかった機体の前にこれを展示しますか(笑)。
ついでにエンジン先端部のプロペラシャフトが妙に複雑なのは
二重反転プロペラのシャックルトンのものだから?
余談ながらグリフォンエンジンは意外に見かけない展示の一つで、
いくら思い出しても、このロンドンRAF博物館以外では見た記憶がありませぬ。
後部から。
透明カバーを被ってるのはエンジン後部の過給器で、
この辺りの構造はマーリンと同じですね。
以外にあっさりしてるのは、低高度用の1段過給器だから(ただし2速)。
余談ながら、今後はジェット機時代になるのが明らかだった1946年まで
イギリス空軍がスピットの開発を続けたのは、
2000馬力級のグリフォンエンジンに5枚プロペラを付けた場合の強力な推力によります。
RAFによる計算だと最大で29KN(キロニュートン)近い出力が稼げたとされ、
これは当時のイギリスの平均的なジェットエンジンよりはるかに強力でした。
ジェットエンジンがこの出力に達するのはF-86世代からとなります。
たとえば戦後、第一世代のイギリスのジェット戦闘機、ヴァンパイアのゴブリンエンジンは
最大推力でも14.9KN(キロニュートン)とされますから、
グリフォン+5枚ペラの約半分しか出てません。
ただし全備重量でMk.24が4.5t前後、ヴァンパイアは5.6tもありながら、
最高速度ではヴァンパイアの方がずっと高速で800km/hを軽く超えてきます。
となるとこれはもう、プロペラが回ってることによる抵抗の結果と考えるほか無く、
このため、やはり世界はジェット機で埋まってゆく事になります。
ただし、これだけ出力差があると、グリフォンスピットの方が圧倒的に加速性は良かったはず。
データが無いので断言できませんが、おそらく上昇性能も、
2段2速グリフォンでなら、性能的に上回っていた可能性が高いです。
よって、やりようによっては初期のジェット機相手でも十分戦えた可能性があります。
まあ、それでもMig-15、F-86世代が登場する1950年ごろまでの話ですが…。
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