■ディスカヴァリーで見る軌道船の形態

さて、今回からようやくシャトル軌道船4号(宇宙船としては3号)
ディスカヴァリーを細かく見て行きますぜ。

まずは横方向から見た写真から。

ちなみにこの写真の手前に見えてる、微妙に邪魔な巨大な輪は、
アポロ計画で使われた巨大ロケット、サターンV(5)の飛行制御リング。
ロケットは決められた角度、時間、推力で飛ばないと、
必要な高度と正しい方向に搭載物を打ち上げる事ができないため、
かなり精密な誘導装置を必要とします。

ところがサターンVの場合、ロケットの荷積みスペースはアポロ宇宙船で一杯であり、
後は燃料がギチギチに入ってますから、誘導装置を積む空間がありませんでした。
なので、こういったリングを作り、ロケットの三段目の上に挟み、
アポロ宇宙船が載ってる最終段を分離するまでの飛行を制御していたのです。
とりあえず後ろのシャトル軌道船と比べても、
サターンVロケットの巨大さがよくわかるかと。

 

何度も書いてるように、シャトル軌道船は
マッハ20で飛んで来るとは思えないヌメッとした印象ですが、
この機体の場合、通常の超音速機と逆、超高速から低速にまで減速する能力が
重要な性能となるため、このような形になってます。

となると当然、見ればわかるようにエリアルール1号はもちろん、2号も適用されてません。
各部の正面から見た機体断面積は増えたら増えたでそのまんまです。
その方が抵抗力が上がって減速に有利ですし、設計も楽ですから、いい事ずくめなんでしょうね。
つくづく妙な超音速機ではあります。

さらに横から見るとコクピットの位置がかなり後ろで、機首部が意外に長いのに気が付きます。
機首部にレーダーと武装を収容するからだろう、という考えは
例によって地球重力下の常識に過ぎず、エイリアンやプレデターが元気に飛んでる
宇宙空間でそんな話は通用しませぬ。

この機首部にはRCS、姿勢制御装置の設備(Module)が入ってるのです。
(RCS/Reaction control system 直訳すると反作用制御装置。
ジェット噴流の反作用を利用するからだろう)
RCSは噴射孔からのジェット噴射を行って機体姿勢の制御を行うものです。
当然、後部にもRCSがありますが、こちらは左右で二つに分かれてます。

重心点(回転の中心点)から遠ければ遠いほど、
テコの原理によって小さい力で機体を動かせるので、
姿勢制御装置(RCS)は、機首と尾部、すなわち機体の端に置かれてるわけです。

ついでに機首からやや離れた場所にコクピットがある理由はもう一つ、、
機首部の衝撃波壁の背後に確実に入って背後熱の影響を抑える、
という目的もあるでしょうね。




よく見ると機首部は黒い繋ぎ目から先、別パーツになってるのがわかるでしょうか。
この先端部の上半分に姿勢制御装置(RCS)が、
下半分に前脚部が収納されてるわけです。

ついでに継ぎ目部分の線には耐熱タイルが貼られており、
このわずかな段差に超音速気流がぶつかって
衝撃波を生む可能性があるのが見て取れます。
さらについでにコクピット周りの黒い断熱タイルの貼り方も見といて下さい。

RCSの正面、左右横、そして上向きの噴射孔があるのが見て取れますが
この内、横位置の噴出孔はちょっと注意が要ります。



実は機首横の噴射孔の内、横を向いてるのは縦に並んだ小さな二つだけで、
大きな楕円形の二つは下向きの噴射孔なのです。
これは機首下面に前脚があり、そこに噴射孔が造れないためで、これによって
後方、左右、上下の5方向への噴出孔を確保し、
その反作用で機体の姿勢、速度を調整してます。

ちなみにあくまでRCSは姿勢制御用で、大幅な減速を行うには
力不足のため、その時は正面方向のRCSではなく、
後で見る機体後部のOMSロケットを使います。


NEXT