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まずは機体全体を眺めて行きましょう。 スピットはエンジンと過給機の進化によりMk.24(イギリス人も途中で訳が分からなくなり、カッコつけてローマ数字表記にするのをやめた)まで進化しました(試作型を含むが途中欠番は無い。後に海軍のスピットは独自の番号を取得したので実際はさらに多い)。後期にはエンジンがグリフォンに換装されますが、第二次大戦時に事実上の主力機としてがんばったのは、マーリンエンジンのスピットのMk.IX(9)とMk.XVI(16)まででした。両者はエンジンがイギリス製かアメリカ製かの違いだけです(ただしXVI(16)は後に水滴風防型が追加された)。 その間、機体そのものの構造にはほぼ変化が無いまま、第二次大戦を戦い抜きました。この辺り、マーリンという傑作エンジンに恵まれた面もありましたが、同時に基本設計も極めて優れていたわけです。 設計責任者のミッチェルは水上機の国際レース、シュナイダー杯の優勝機を設計するなど、高速機の設計を得意としており、このスピットもその優れた空力設計により最後までイギリスの空で戦い続ける事になったわけです。 (とはいえ1936年初飛行なのはいかんともしがたく、同じエンジンのP-51B型以降には最高速では劣る。ただし軽量だったので加速、上昇はスピットが優った) この機体もほぼ大戦時の状態を維持する、とされますが、どうも細かい部分でちょこちょこと手が入ってる感じがします。 それでも余計な手入れは最低限なので、資料性は高いでしょう。 とりあえず地上からではまず見れない角度から。 キャノピー(天蓋)が開いてるのはうっかり閉め忘れて、少しずつ開いちゃった、とかそんな理由だと思われます。 離着陸時の事故に備え、すぐに脱出できるように操縦中にキャノピー(天蓋)を開ける場合は、キッチリと一番後ろまで下げます。というかおそらく風圧で下がります。 ちなみに窓枠が無いスピットでは飛行中にキャノピー(天蓋)を開けたところで視界はさして変わらないので普通は閉じて飛びます。空気抵抗が大きくなり速度も落ちるし燃費も悪化するのでいい事ないからです。例外はアフリカ、東南アジアで地上支援をやってた機体で、2000m以下の高度だと暑さでキャノピー(天蓋)を開けて飛ぶこともあったようです。ただしアフリカだろうがなんだろうが、高度6000mを超えたら0度前後の世界ですから、あくまで低高度の場合ですね。 主翼の上に見えてる二本の平行した棒は、この裏にある車輪収容穴の補強用。 この辺りは恐らく設計ミスで、主脚の車輪収容部周辺の強度不足が判明、こういった補強の棒が後付けされてました。さすがに後に車輪穴の内部に補強を入れる設計変更が行われますが、Mk.Iでは結構な数の機体にこれが見られ、最後までこのままだった機体も多かったようです。 やや下側の横から。 スピットの楕円翼の先端部はネジ止めの取り外し式で、後に低空用(というか対Fw190用)の機体ではこれを取り外して横転(ロール)速度を上げる、という簡易改良をやってます。 この写真でもエルロンから外側の翼端部が別パーツなのが、なんとなく見て取れるかと。 ちなみにスピットの翼端部を外した短翼型の主翼をクリップド ウィング(Clipped wing)、刈り込み翼(Clipは髪などを切ったという意味)と呼びますが、これはスピット専用の呼称です。 ジェット機のデルタ翼などで翼の端を切り落とした場合、すなわちF-15やF-16の主翼のような形状は「クロップド」 デルタ(Cropped delta)、切取り型デルタと呼びますから、要注意。クリップドデルタ(Clipped delta)と言うとミサイルやロケットのケツに付けた小さな安定板を指し、全く別物になってしまいます。 ついでにこちら側のエルロン(補助翼)、僅かに上に上がってます。 斜め下後方から。 個人的にはスピットのもっともカッコいい角度だと思ってます。 胴体後部に向けて葉巻型に絞り込まれてゆく形状は最小の抵抗で抑える理想的な流線形のラインでしょう。 高速機とは言え、1936年初飛行機ですから、尾輪は出たまま、主脚の車輪カバーも半分だけ、というものになってます。 尾輪は後に収容式に変更されますが(Mk.VII(7)&VIII(8)から。ただしMk.IX(9)でまた出たままに戻りグリフォンスピット以降で再度収容式になる)、主脚の車輪カバーはほぼ最後までこのままで、最後はグリフォンエンジン積んで700q/hを出してましたから、意外に平気だったみたいです。尾輪付きのMk.IX(9)でも650q/h近い速度を出してましたし。 |