■ノースアメリカン P-51D ムスタング 第二次大戦後半のアメリカ軍、そして連合軍、さらにいえば第二次大戦そのものを象徴する機体とも言える傑作機、ノースアメリカン社のP-51ムスタング。あまりにも有名な機体であり、すにでその解説もしてるので、今回は写真を中心に見てゆきます。 戦勝国アメリカ合衆国を代表する戦闘機であり、しかも大量生産されてるので現存機は多め。 特にD型はアメリカ中の空港や博物館に転がってる印象です。ところが下手に大量に残って居たため、誰も貴重な機体と思わず事故で失われたり、適当な補修をされて原型を留めて無かったりで、実はまともな現存機がほとんど無い悲劇の機体でもあります。さらに、後の1950年に朝鮮戦争が勃発すると、残って居た機体が片っ端から持って行かれた点も影響してるかもしれませぬ。 最も量産され人気も高いD型ですら、まともに原型を留めてるのはスミソニアンの航空宇宙館にある一機のみで、それ以外の機体は必ず変な部分があります。意外なことにお隣の国、韓国はソウルにある戦争記念館にある機体もオリジナリティは高いのですが、なにせ野ざらし展示でボロボロの状態、参考資料にはしづらいです。 この二機を別にすると、ほとんどの機体が大幅に手を入れられており、資料性は低くなってます。ちなみにD型ですらこの状態ですから、A、B&C、そして実はほとんど新設計だったH型などは、まともな現存機は無いと言ってしまっていいでしょう。 よって本来ならスミソニアンの機体を紹介するべきなのですが、展示の仕方が部屋の隅に逃げ込んだ借りてきた猫のようで、ほとんどまともに写真が撮れません。このため全体形状の把握が困難なので、今回はかつてイギリスの帝国戦争博物館(IWM)のロンドン館で展示されていた機体、シリアル番号 44-73979号機を紹介して行きます。 この機体もあちこちが適当に復元されてるため、資料性は低いのですが、高い天井からぶら下げ展示で、ほぼ全周から見れたため、機体の形状を見るには最適だったのです。ただし2022年現在は同じ帝国戦争博物館のダックスフォード館に移され、かなり見づらい展示にされてしまってます。そういった意味でも、往時の、機体の全体形状がよく見れた時の写真を掲載して置こう、というのが今回の記事ですね。 この機体は戦後の1950年からカナダ空軍が運用していたものであり展示の大戦中の米軍機塗装は復元時に再現されたものです。 当時のカナダ空軍は法的にはまだイギリス空軍の系列にありますから(今でも正式名称はRoyal Canadian Air Force/RCAF)、厳密にはD型では無くイギリス空軍、RAF向けのムスタング Mk.IV(4)となります。カナダでは1945年からMk.IVの装備が始まり、全88機を導入して最後は1961年まで運用してました。 ただしこの機体、1950年にカナダ空軍に送られるまでの経歴がよく判りませぬ。 実戦に参加してないのは間違いないですが、アメリカ軍で使われていた中古品なのか、それともどこかの倉庫で眠っていたのか。とりあえず1950年12月にカナダ空軍に配属となったものの、翌1951年5月に早くも着陸時に事故を起こし退役させられてしまいます。その後は地上訓練用の機体にされ(整備や消防訓練用だと思われる)、1960年からはカナダ空軍の基地でゲートガードとして展示されいました。すなわちずっと雨ざらし状態。その後、1968年にこのイギリス帝国戦争博物館が購入し、修復、展示を開始しています。 事故で損傷、さらには雨ざらしで8年近く屋外展示では、修復前の段階でボロボロの状態だったはず。しかも1960年代の修復ですから適当な部分も多く、繰り返しますが資料性は低い機体です。あくまで機体全体の形状を捕らえるための紹介記事と思ってくださいませ。 |