コクピット部をややアップで。

下の赤い半円で囲まれた部分は先に書いた搭乗時に使う足掛け。
主翼の上からここまで来て、再度あそこに足を掛けて乗り込むわけです。
あの中は空洞になっており、
上についてるスプリング式のフタを押し開けて、足を掛けます。

通常、これがある側から機体には搭乗するのですが、
Me262の場合キャノピー(天蓋)はMe109と同じ右横開きなので、
後方スライド式のFw-190のようにイザとなったら反対側からも乗れる、といったような事はできませぬ。
反対側にヒンジがあってコッチから押して向こう側に跳ね上げる、という形になります。
ここら辺りもメッサーシュミットの伝統なんでしょうかね。

ただし高速で高い風圧を食らうジェット機の場合、
それでは緊急時に開いて脱出できないので、Me262にはキャノピー放棄装置が付いてます。
脱出時にはスプリングで跳ね上げて、キャノピー(固定された前部風防から後ろ)を吹き飛ばせました。

ついでにこの機体、背もたれ式の防弾板がコクピット内に入ってます。
頭の部分にクッションが付いてるヤツです。
これは当時の写真を見ても機体によって積んでたり積んでなかったりしてイマイチよくわからんのですが、
少なくともこれは当時のモノではないですし、形状も微妙におかしい気がします。



機体を下から。画面奥が機首部で、手前で上から下がってる板はフラップです。

右側の後輪の車輪カバーの内、薄い外板はジュラルミン金属製ですが、
そこに貼られた補強用の板は木製となってます。
(実際はさらに内側にもう一枚、薄いジュラルミン板が貼られてるはず)

主脚の収容穴は二つに分かれてるように見えて、実は中で一つに繋がってるのも見といてください。
ここら辺りは妙にFW190っぽい所。
ちなみに主翼は左右に分割して取り外しができ、ここで接合されてます。

手前で飛び出してるのは棒アンテナ。
ただし通信用アンテナは普通にコクピット後ろから垂直尾翼にワイアが張られてるので、
これは近距離(編隊内通信)用の短波(VHF?)アンテナでしょうか。



どういうわけか、世界中の博物館でカットモデルにされてしまってる
ユンカースのJumo04ジェットエンジン。
このMe262、そしてAr234に積まれていた軸流圧縮式のジェットエンジンです。
右側のエンジン先頭部にはカバーが付いてるに注意してください。
この点は後でまた説明します。

空気を圧縮して高温にし、燃料吹き込んで爆発的に燃焼させ
その巨大な膨張力を取り出して使う原理は
ジェットエンジンもピストン(レシプロ)エンジンも一緒です。

ただしピストンエンジンが膨張力でピストンを上下させて力に変換するのに対し、
ターボジェットエンジンは爆発的燃焼の力をそのまま推進力として利用します。
ターボファンエンジンだとまたちょっと違うんですが、今回はそこまでは踏み込みませぬ。

でもって、ピストンエンジンではピストンがシリンダー(筒)内部で空気を押し込めて圧縮、
これを高温に持ち込むのですが、ジェットエンジンの場合は
ファンで空気をガーっと詰め込んでこれを行います。

が、さすがにファン1個では無理なので、これを複数縦に並べて徐々に圧縮してゆくのが
こういった縦長の軸流式圧縮のジェットエンジンです。
写真で数えると判るようにユモ004では8段のファンがあり、
これによて次々に空気が圧縮され、
最後にその高温高圧の空気を燃焼室で燃料と混合させ、
爆発的な燃焼を行います。
燃焼で膨張した排気は凄まじい高速高温で後ろに噴出するので、
その反動の力で機体を前に推し進めるわけです。

よく見ると燃焼室の後ろにも1個だけファンが付いてますが、
これは先の8段圧縮ファンを動かすための動力回収用で、
噴流がこれを回すことで、先の圧縮ファンを回してます。
この動作原理ゆえにジェットエンジンは最初に外部の力で軸を回してもらわないと
エンジンを起動させることができませぬ。

でもって、噴流の流速は速い方がいいのですが、ここら辺りの調整は
噴出口の面積の増減で行います。
ユモ004の場合、エンジンの一番後ろに付いてるコケシのようなパーツが前後し、
これが噴出口の一部を塞ぐことでその面積を調整してます。
現代の戦闘機だと、ノズルが絞り込まれたり開いたりするんですが、
この時代でそれは無理で、こういったやや原始的な工夫となってます。
この部分はその形状から、現場ではタマネギと呼ばれてたそうな。


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