■イタリアのネタ馬

さて、お次は全体の姿をいろんな角度から見て置きましょう。
ここはぶら下げ展示なので、撮影の角度が限られる代わりに、
普通だったら見られないような位置から観察する事もできるのです。



通常はあんまり見かけない斜め上後方からの機体写真。

が、スミソニアンのC.202で最も撮影しやすいのがこの位置なので、
世の中に出回ってる写真の7割がこの角度でしょう(笑)。

とりあえずコクピットの後ろ部分が、上が細く絞られた凸型になっており、
しかも胴体の途中から上に飛び出す形なのに注意してください。
かなり珍しい設計です。

これはコクピット前半だけが透明風防になってるファストバック型というより、
むしろ下に見えてるP-51Dの水滴風防に近いスタイルです。
つーか、おそらく1930年代の背もたれ型のコクピットが下地にあるんでしょうね。

が、これだとこの周辺に強烈な気流の渦が出来るはずです。
なのでこの形状は空気抵抗を大きくするわ、
そのくせ後ろは見えないわで、ロクな事がありません。
これだったら、思い切って下に見えてるP-51のような水滴風防にしちゃった方が
多少は抵抗が減るし、その上、視界も確保できるのでずっとマシです。

なんだってこんな中途半端なデザインにしたのか、正直理解に苦しみます。
空気抵抗の少ないレーサー機で名を売ったカストルディなんですが、
もはや完全に時代遅れになってたんでしょうか。



参考までに通常のファストバック、いわゆるコクピット後方の視界が無い機体では、
写真のスピットファイアのように、背中の線はスッと一直線に尾翼まで繋がってます。
途中に凸凹があると、そこで渦が発生、抵抗源となるからです。

ついでに、この部分によって胴体が縦長になることで、
垂直尾翼のように、進行方向への安定板代わりにもなってます。
なので、ここを削り取ってしまうメリットは、普通ありません。




横から見ると巨大なラジエターが
これでもか、参ったか、とばかりに盛大に腹の下に飛び出してるのがよくわかります。
いやほんと、どうしちゃったんだカストルディ、というデザインです。
相当な空気抵抗があったはずですよ、これ。

イタリア軍の主張によると(笑)、試作機で600q/h出た、
との事なんですが、ウソじゃないかなあ(笑)…。
少なくとも量産型の1200馬力もないエンジン、
そして2.5t近い重量に、この空気抵抗だらけの胴体では、
550q/hも危なかったと思いますが…。

ただし、機体は頑丈だったので、急降下ダイブはかなり得意だったらしいです。

ついでにこの展示、カメラのホワイトバランスが中々うまく行かず、
写真ごとに色がバラバラになってしまってますが、
とりあえず、この写真が一番肉眼で見た色に近いです。


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