まずは横上から。
後半がA-4の機首で隠れてしまってますが(涙)
あまり見ない角度の写真だと思うので、載せておきます。
ちなみに展示機のエンジンカバーは付いてたり外れたりしており、
どの状態で見れるかは運のような気が(笑)。
最初に来た時は付いたままだったはずなんですが…
参考までに、この機体のエンジンカバー(Nose cowl ring
)は
NASMに寄贈された段階で既に失われていたようです。
(さらに後で見るようにエンジンから先の部分はちょっと怪しいところがある)
ただしその後、海兵隊から実物の寄贈を受けて取り付けたので、
レプリカのパーツではなくホンモノです。
と言っても、この写真には写ってませんが…
ワイルドキャットの主翼は翼端に向けて少しずつ絞りこまれて狭くなるテーパー翼なんですが、
その絞込み角度は極めてゆるく、パースが無くなる望遠気味のレンズで撮影すると
ほとんど長方形に見えますね。
スミソニアンの航空宇宙本館の一角に設けられた海軍機専用コーナーに展示されてるこのFM-1は、
海軍によるシリアル番号15392機で、リンデン工場で造られたちょうど400機目の機体だそうな。
ただし1943年に7月にこの機体が製造された段階では、海軍の主力はF6Fに移りつつありました。
さらにこの時期の海軍が必要としていたワイルドキャットは、
対潜水艦任務や沿岸防御任務に使う低空用の新型FM-2になっており
(エンジンを2段2速過給器のツインワスプR1830から
1段2速ながら低高度ではより強力だったライトサイクロンR1820に変更した機体がFM-2)
このFM-1は国内の部隊(おそらく訓練部隊)に配属され、
実戦を経験しないで終戦前の1944年年末には退役扱いとなったようです。
その後、海軍で1960年まで保管された後、
スミソニアン航空宇宙部門(すなわちNASM)に寄贈されたとされますから、
現存するF4Fとしては、かなり現状を維持してると見ていい機体です。
でもってこの機体も1976年の航空宇宙本館オープンに合わせてレストアされた機体で、
すなわちスミソニアンにおける初期レストアの機体なんですが、
その作業はグラマン社が自ら担当してます。
当時はまだ社内にもワイルドキャットを造った経験のある工員が何人か居たそうで、
その復元はそれなりに信用できるようです。
(ただし一部怪しいところがある)
主翼下面から。
高い位置にある中翼構造のため、ワイルドキャットは地上だとこんな写真ばかりになってしまいます。
主翼後部にズラリと並ぶ一連の出っ張りは、手前がエルロンの操作棹の、奥がスラップの操作棹のカバー。
それぞれから何かピンのようなものが飛び出してますが、
おそらく展示にあたって固定のために取り付けたものかと思われます。
胴体後部下、足掛け用の孔のスプリング式フタが開いたままになってるのは、
レストアのミスなのか、わかりやすい展示を目指した結果なのかよくわからず。
胴体下の対空爆撃(笑)用の窓が、この最終生産型に近いFM-1にもまだ残ってますから、
どうもF4F-4とFM-1までは最後までこれがあった、と考えていいようです。
展示入り口から見た状態。
アメリカ海軍向けとしてはF4F-4から採用された折り畳み主翼は
このイースタン製造のFM-1にも引き継がれてます。
これによって空母への搭載機数が増えたほか、博物館の狭い展示室にも有効のようです。
この折りたたみ機構は完全に人力による手動で、左右別々に動きます。
F4F-4、そしてFM-1からワイルドキャットは重量が増えて性能が落ちた、
というのは既に書きましたが、アメリカ海軍のテストによるとF4F-4は
標準時の離陸重量で最大約11.8%重くなったとされます(6262ポンド(約2.84t)→7370ポンド(約3.34t))。
ちなみにF4F-4になって加えられた変更点は、先に書いたように
機銃が2丁増えて、この主翼の折り畳み機構を加えただけで、
なんでこんなに重くなるんだ、という気も。
海軍のデータ(Final
Report of Production Inspection Trials On Model F4F-4 Airplane No.
4058)
によると12.7mm機銃2門とその付属品による重量増加は139.9ポンド(約63.5kg)に過ぎませんから、
1108ポンド(502.6kg)もの重量増の理由にはなりません。
2門分の銃弾を別に加えるにしても、とても足りないでしょう。
となると、主翼の折り畳み機構に400kg(片側200kg)近くもの重量増が伴った、という事になります。
折りたたみ式にして落ちた主翼の剛性を補うため、
主翼の構造強化などがあったのでしょうかね。
で、重量増加の影響を最も受けるのは
加速と上昇性能(つまりより大きな力(質量×加速度)がいる)ですが、
これも海軍テストによる1万フィートと2万フィートまでの到達時間を見ると、
|
1万フィートまで(約3048m) |
2万フィート(約6095m)まで |
F4F-3 |
4分 |
約8分25秒 |
F4F-4 |
5分 |
約11分20秒 |