■その他の兵科

お次はこれまであまり取り上げて来なかった兵器を運用する兵士たちへの取材記事から紹介してゆきましょう。

まずはソ連時代の兵器、152o自走榴弾砲、2S3アカーツィヤ(Акация/アカシアの花の事)の装填手へのインタビュー記事から。2023年1月6日付で公開された記事です。

〇装填手は馴れないと弾き飛ばされてケガをする事がある。

〇一発40s近い重さのある砲弾を20発以上撃ち込む事があり、これを砲に装填するのは肉体的に厳しい仕事だ。

〇自走榴弾砲でも負傷などに備え乗員の互換性が大切である。私は砲手(照準と射撃を担当)と装填手のどちらも出来る。肉体的には装填手の方が厳しいが、失敗が許されない責任の重さから砲手も簡単な仕事ではない。

〇当初は撃ち込んだ砲弾数を数えていたが、1000発を超えたあたりで止めてしまった。

〇現代の榴弾砲の任務は正確さに加えて速度も重要だ。分どころか秒単位での対応が要求される。素早く移動しないと容易に敵からの反撃の標的になってしまう。精神的にも肉体的にも決して気を緩めてはならない。

〇一日、三回以上、移動し、別の位置から射撃した事もある。敵から狙い撃ちにされた事は未だに無いが、背後地区に着弾したことは何度かある。

〇射撃は通常20q前後の距離から行う(筆者注・目標は完全に地平線の向こうで見ない)。その成果は指揮官が教えてくれる。これは良い刺激となる。

〇搭載の全弾、40発を撃ち切ってしまう事もある。逆に指定位置に付いても攻撃命令がなく終わる事もある。



■Photo ARMY INFORM


写真は別の記事からですが、この手の自走砲は基本的に森林など隠れる場所が多い位置から射撃、その後に速攻で移動する、という運用になってるようです。

  https://armyinform.com.ua/2023/01/06/antoha-yakyj-navodyt-akacziyu-na-voroga/


■BM-21


お次はこれもソ連時代のロケットランチャー、BM-21で単独行動を取る(おそらく反撃を避けるために部隊単位での運用ではなく、単独でドローンからの指示に従って砲撃してるらしい)砲兵部隊指揮官へのインタビュー。

ちなみにこの人、戦前はアゾフ連隊に所属しながら、開戦後は陸軍兵のとして復帰したそうで、意外に両者の人員に行き来があるんでしょうかね(アゾフ連隊は国防省の正規軍ではなく内務省の国家警備隊(Нацiональна гвардiя Украiни)だった)。ちなみに2023年1月5日に公開された記事です。

〇ソ連製のBM-21は旧式で精度が悪い。着弾は最大40発撃った場合、9km平方の広さで、最も集中する部分でも2q平方の広さがある。とてもじゃないが精密射撃は不可能。この点において、開戦後に供与された西側の榴弾砲、ロケット砲には全く敵わない。

〇このためウクライナ軍が西側から供与された精密兵器で正確に目標を狙うような攻撃に移行した2022年の夏以降、任務は大幅に減った。現在は多数のロケット弾を撃ち込む面の制圧でなく、弾数を減らして可能な限り目標を絞り込むようにしている。

〇ドローン部隊から送られてくる座標情報に合わせて撃つ。ドローンからの映像を見る事も可能で、命中弾が出るまで映像を見て座標を調整する事もある。

〇ドローンからの命中報告は任務遂行に役立つだけでなく、部隊の士気維持にも重要である。射撃の結果を知らされないと兵はやる気を失う事が多い。同時に命中しなかった場合も、報告があれば映像を見ながら失敗の理由を分析、機器を再調整できる。

〇部隊のBM-21の半分はロシア軍から無傷で回収したものだ。

〇渡河フェリーの乗り場に敵のロケット砲車両が密集していたことがある。これに対し周囲のウクライナ軍から集めらえるだけのロケット砲が投入されて敵を撃破した。こういった目標には適している。



■Photo ARMY INFORM


見るからに冷戦時代のソ連兵器で、確実に時代遅れなのですが、まだまだ現役で戦線に投入されいてるBM-21。ウクライナ側だけでは無くロシア側もまだ使っています。

  https://armyinform.com.ua/2023/01/05/grad-desantnykiv-vluchaye-ne-po-ploshhah-a-vyklyuchno-po-vyznachenyh-czilyah/

 
■偵察工作員

今度はウクライナ軍の偵察工兵隊員(сапера-розвiдника)へのインタビュー記事。2023年1月8日に公開されたものです。英語でEngineer reconnaissance と呼ばれる偵察工兵は主力部隊が前進するに辺り地雷など敵の設置した残置兵器を除去してその進路の安全を確保する部隊です。これが無いとあっさり敵の罠に突入して想定外の大損失を受ける事があり、地上戦には必須の部隊の一つでしょう。ついでに個人的に自衛隊にあるとは聞いたことが無い組織の一つでもあります。さすがに何か対策はあるはずと信じたいですけどね…。以下、要約。

〇事前に訓練も受けたが本当に必要な技術は実戦の中でしか得られない。

〇初めて地雷を処理した時はアドレナリンが出まくりだった。無事に任務を完了でき、恐怖心を克服できたのは大きな収穫だった。

〇我々は常に部隊の前に位置して進行し、地雷やブービートラップ(残置兵器)を除去する。

〇ロシア軍は地形を利用するだけではなく車両、家屋、敷地、庭、武器、さらには死体やその遺品まで地雷を埋めて行く。
(筆者注・この辺りはアフガニスタンとシリアで残忍な戦争経験の豊富なロシアの得意技である)

〇動きや振動、圧力に反応する対人地雷は非常に危険で慎重に取り扱う必要がある。これは「猫(кiшки)」と呼ばれる専用の機器で除去する。

〇具体的にはケーブルに地雷を引っかけて引っ張る。その下に手榴弾や対人地雷が隠されていると、まとめて爆発する。

〇対戦車地雷が多い時は「ВОГа」と呼ばれる手榴弾を使って誘爆させ除去する。

〇すでに数十回の地雷除去作業を行い、数百発を無力化した。

〇地雷除去以外にも60ミリ迫撃砲、グレネードランチャー、重機関銃などを装備し機械化部隊を支援する任務がある。

〇ヘルソン州解放戦の時には欺瞞攻撃で敵部隊の目を本隊から逸らす任務を担当した。

〇本来の突破目標から5q離れた場所で欺瞞攻撃は行われた。そこに敵を引き付けるのだ。

〇このような任務では事前に地域の偵察を行い、侵略者の防御の弱い部分を特定し、進退路を決定する。

〇この時は敵の大隊本部がある村を攻撃目標と決めた。作戦には8人の隊員が三つの班に分かれた参加した。

〇異なる方向から同時に攻撃することで、敵に大軍に攻撃されたとの印象を与える事にした。

〇一つ目の車両には60ミリ迫撃砲、2つ目には軽機関銃、3つ目には重機関銃を搭載。砲兵支援はこれに加えて152mm SAU 2S3自走砲が担当した

〇敵の陣地に激しい砲火を浴びせた。各種火器の使用による砲火の密度はかなり高く敵はパニックに陥った。

〇敵は迫撃砲や戦車で無秩序に応戦し始めたが、我々の位置を把握しておらず、ほとんどの砲弾や手榴弾は見当違いの場所に着弾していた。

〇このように戦争では工夫や臨機応変さも重要だ。

〇ある村まで車2台とバイク2台で行き軽機関銃で射撃すると、敵は大部隊の襲来と思い込み撤退してしまった。

  https://armyinform.com.ua/2023/01/08/yak-visim-rozvidnykiv-vvely-v-omanu-bataljon-okupantiv/


■空挺指揮官

最後はウクライナ軍の精鋭部隊の一つ、空挺部隊の指揮官へのインタビュー記事。軍から支給されたカラシニコフでなはく自前で手に入れたAR-15カービンを装備している理由(ただしそのままではなく改造している)などを語っているので要約しておきます。

〇私が自費でAR-15を購入し、改造して使っているのはAKより軽量で射撃の精度が高いからだ。口径もちょうどいい。ピストルも自腹で買ったグロックを使用している。

〇照準は一般的なコリメーターサイト(光学照準器)。より長い距離では、3倍の望遠レンズサイトを追加する。

〇建物内など暗い場所ではタクティカルフラッシュライトを使う。赤外線レーザー照射は使わない。赤外線暗視装置が必要になるからだ。

〇歩兵が攻撃に出る場合、中・短距離で、集中的に走る事になるから軽量でコンパクトな装備が必須となる。動きの邪魔になるものは装備してはならない。

〇タクティカルベルトを利用して防弾ジャケットになるべく余計なものを付けないようにするのがいいだろう。

〇クリスマスツリーのようにジャラジャラと装備をジャケットにぶら下げてはいけない。戦闘に必要なものを選び、不要な物は持ち歩かない、逆に本当に必要なものは決して忘れて行かない、が原則だ。

  https://armyinform.com.ua/2023/01/15/vilni-lyudy-mayut-zbroyu/


では、今回はここまで。


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