■原点回帰2024

では最後に、筆者が線画を描く過程をざっと説明します。絵の描き方は何度かお見せしましたが線画に関してはほとんど触れて無かったので今回、ちょっとやって置きまする。



まずは構図を考える。今回はあくまで描き方の説明なので馬鹿みたいに単純な人物が正面に立っているだけのモノとします。最初に描くのはだいたいこんな感じの情報量の下書きです。



そこに半透明レイヤー(画層)を重ね、下絵を清書しながら同時に情報量を増やします。こうすると最初の下絵では気がつかなった欠点が見えてきます。まず脚が長すぎる。まあ人類の多様性を考えるとそういった体形のナイスな女性も居るでしょうが、筆者は不自然と判断して修正します。ついでに右脚(向かって左)が長すぎです。これだと気を付けの姿勢をしたら真っすぐ立てません。まずはそこら辺りを修正します。どうやってか、と言うと…



こうやってです。まずは脚の部分を切り取ってしまいます。



そして切り取った脚回りは部品として回収し…



先に残した脚から上の部分に合体し直します。ちょうどいい長さの位置まで上に持ち上げ調整、さらに脚の長さと姿勢の不自然さを消すため、上半身を4度だけ左回転させてます。この辺りの作業は私が使っているPhotoimpact以外のソフトでも普通に出来るはずです。

といった感じに描き直しも描き足しも無しで気になった部分を大筋で修正してしまいました。これがデジタルお絵かきの恩恵なのです。



そこから更にもう一度、上から清書して仕上げ。この段階でよりよい方向を思いついたら描き直します。



その結果がこんな感じ。まだかなり線がゴチャゴチャしているので、ここから最低限の削除と修正を行います。

デジタルの絵はどんな細かい線、そこれこそ点一つでもキレイに修正できるので、これ以上の線トレース作業はせず、この絵で直接線を足したり消したりして仕上げ作業を行います。筆者の場合、実際は色を塗りながら修正して行く方が多いのですが、今回はあくまで解説が目的なので線だけでそこまでやってしまいましょう。



まあこんな感じ。漫画やアニメの絵に比べると線がまだ汚く感じますが、筆者は別にそういった絵を描くわけでは無いので問題無し。この程度で十分です。



最後に左右反転して構図の狂いを見ます。途中でやる事も多いです。描いてる本人は自分の絵を客観的に見れないのですが、左右反転すると何故か脳が「これは別の絵」と認識するらしく、かなりハッキリとおかしな点が見えてきます。



で、最後に色を塗ってオシマイ。彩色段階は既に何度も説明してるからいいでしょう。

といった感じで延々と筆者の絵の描き方を説明したわけです。それで何が言いたいの、と問われれば要するに絵の描き方は百人居れば百のやり方があると思え、という事。そして自分の才能にあったやり方で無いと、その人の才能の半分も活かせませぬ。実際、世の中に溢れるお絵かき教室、美術の授業などを真に受けていたら私は絵を描けないままでした。一定水準以上の絵の描き方は人から教われるものでも、教えられるものでもありませぬ。

例えば世の中には人の絵を模写すると絵が上手くなる、という話が溢れてますが、私には役に立ちませんでした。全然似た絵なんて描けないし、そもそも全く楽しくない。でもって幸いにして筆者は馬鹿だったので、自分には絵の才能が無いとは思わず、むしろこいつらが馬鹿なんだろう、オレはオレのやり方でやろう、と思ったわけです。自分には絵の才能があるのでは、と思っている人は、とにかく自分にあった絵の描き方を最初に探求しましょう。それだけで一気に開花する事もあるのです。

筆者個人の経験からすると、最も有用な絵の練習は立方体、直方体、三角錐、円柱、そして球といった単純な立体物をひたすら描く事でした。まずは単体でこれらを破綻なく描けるようになる事(破綻してるか否かの判断には最低限の立体把握能力が居る。判断できないなら絵を描く才は無いと思っていい)、それが出来たら単色でいいから陰影をつけて光源を意識する事、最後はそれらを複数空間に置いた状態を破綻なく描けるようになる事。それが全て出来れば私程度の絵なら一年もかからず描けます。私よりずっと才能がある人ならさらにその先に行けるでしょう。

一流は自分の仕事をやる、二流、三流が人に教えたがる、というのは事実です。ただし一流以外の人は仕事に付けなくて仕方なく先生をやる、という意味ではありませぬ。本来、絵の描き方って教えられないんですよ。教えられると思ってる人は、それしか才能が無い人です。ある程度以上、少なくとも立体把握の上で絵を描く人間はなぜ絵を描けるのか説明できないのが普通だと思います。少なくとも筆者には無理です。以前にも書きましたが、野球教室に参加すれば一定のレベルの選手にはなれます。が、指導を受け、練習したからと言って全員が甲子園級の選手になれるわけでは無いのです。最後はどうしても持って生まれた才能の問題になります。

筆者は以前、知人の子供にちょっとだけ線画の描き方を見せたことがあります。この時、何を考え、どんな作業をやっているか、は説明できるのです。が、どうしてそういった絵になるのかは説明できないし、ましてや教える事は出来ません。なんでこの適当な線の塊が、キチンとした絵の形になるのか、と問われても、いや普通にやってりゃ出来るでしょう、としか言いようがなく、なぜと問われても、本人にも判らんのです。むしろ君は何でこんな事すら出来ないの、としか言いようがなく、当然、そこが判らなければ教えようがありませぬ。才能は自分で磨け、と言う他ないんですよ。

といった感じで今回はここまで。

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