■ラムジェットはredruMの夢をみるか

さて、ラムジェットには大きく2種類あります。
超音速飛行に伴う衝撃波背後の高温圧縮空気を単純に使うもの、
音速以下でベルヌーイの定理を使って空気を圧縮するとされるものです。
今回、問題になっているのは後者で、
果たしてコレが実用になるのか、という事です。

ここら辺りは流体力学の最大の難点、質量が不変でない、という問題が絡らみ、
この点を理解しないと何を計算してるのかワケがわからないと思いますから、
最初にその点を説明してしまいましょう。

大前提として、気体や液体の流体であっても基本的には
ニュートン力学+力学&熱エネルギーの保存則に従います。
ただし固体の時と違って様々な特殊条件が生じるのですが、
最大の問題がニュートン力学の基本量、質量の不安定さです。

流体を相手にした場合、質量に関しては、その絶対性が成立しないのです。
そもそも時間や長さはそれ以上、分解不可能ですが、
実は質量だけは密度×体積に分解可能だという面があったりします。

そして簡単に圧縮、膨張が起きる流体(気体、液体)では
両者は簡単に変化するため、一定という保障は全くありません。
例えば気温が変わって空気が膨張するだけで質量が変化してしまうのです。
なので力学の基本中の基本、運動量を求める式、
質量×速度からして、簡単に計算できません。

そこで登場するのが、力学の得意技、対象の単純化です。
ここで、理想気体というものを考えます。
これはどんな温度になろうが、どんな圧力が加わろうが、
密度と体積が不変な気体である、というものです。ご都合主義ですね(笑)。

この理想気体は押しつぶすと、
変形はしますが圧縮されて小さくなったりはせず、
あくまで同じ体積と均一の密度を保ちながら、
ビローンと広がる特性を持ちます。

空気鉄砲などにこの理想気体を入れると圧縮が効かないので、
ピストンを押した瞬間、ポロリと弾は押し出されてしまい、鉄砲になりません。
当然自動車のエンジンに入れても圧縮されないので、全く使えませんし、
クッションなどに入れても変形はしても圧縮されないので、座り心地はイマイチです。
が、力学的な計算を行なう場合、とても便利な考え方となります。
この特性によって常に一定の質量を持つため、
これは固体と同じようになニュートン力学の計算対象となるからです。

理想気体、ブラボーですね。
さて、ここまでが大前提。
この理想気体によるカタマリを、
ベルヌーイ式のラムジェットに放り込むとどうなるか。
早速計算に入りましょう。


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