前回はボイドの思想の出発点となった「破壊と創造」について見ました。

その興味深い展開と有効な利用方法は理解いただけたと思いますが、これがどうしてOODAループに繋がるの、という疑問を感じた方もいたと思います。もっともな話で、以下のようなOODAループの流れを見る限り、そんなものが関係して来そうな要素はありません。


が、実際は「破壊と創造」の考え方がこのループの心臓部の一つになっています。この点を理解するには、二番目の項目「監察結果への適応」は以下の五つの要素から決定されている、という話を思い出していただく必要があります。

 

ここで行われる「正解行動の推測」は、上の五つの要素を基にしています。
この内の論理的な推測を行う唯一の要素、「分析と統合(Analyses&Sythesis)」だけ先送りにしていたわけです。でもって、ようやくその登場となります。すなわち「破壊と創造」は情報分野にも適応可能であり、それがこの「分析と統合」なのです。

唯一論理的な推測を行うのがこの要素なため、それを行う人物の知性と知識が問われる要素でもあります。最終的にはそこに直観も加わるのですが、とりあえず知的な要因が最もその結果に差をつけると考えていいでしょう。

この場合、「破壊」に当たるのが情報を要素ごとに分解する「分析」、「創造」に当たるのが「分析」の内容から必要なものだけを選び出し、そこから浮かび上がってくる事実をまとめ上げる「統合」 となります

よって同じようなレベルの知性と知識がある人物の結論はほぼ同じになりますが、そこに差があると見るべきものを見れない、重要な要素を簡単に見落とす、といった差が付いてきます。「遺伝的な資質」や「経験則」、「文化的伝統」のように個人ごとにまるで異なる結果になりやすいものでは無いのですが、とりあえず各個人の持つ知的な能力が明確に問われる事になるのがこの要素なのです。

その「分析と統合」の流れを図にすると、以下のようになります。



まずは観察で得られた内容を要素ごとに細かく分解(破壊)します。これが分析です。
そしてその分解された要素から必要なものだけを選び出し、必要な形にまとめ上げる(創造)のが統合です。ボイドに言わせると、多少頭のいい連中は「分析」ばかりやる、そして実際、一定の成果を出すのだけど、それを生かすための「統合」が行える人材は極めて少ない、という事でした。後にボイドはペンタゴン(国防省)は分析屋ばかりだと嘆いています。

では、その分析と統合が実際はどういったものなのか、を次から見てゆきましょう。


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