電撃戦の資料

さて、ドイツが発明してしまった脅威の戦術、電撃戦について今回から、より踏み込んで見て行きましょう。とりあえず最初に主な参照資料を述べて置きます。

●HISTORY OF THE SECOND WORLD WAR/UNITED KINGDOM MILITARY SERIES  /J. R. M. Butler 1954

バットラーにより編集されたイギリスの公刊戦史。1947年から1954年にかけて発行されたもの。連合軍側の記録は本書の「THE WAR IN FRANCE AND FLANDERS」を主に参照しています。

●電撃戦( Erinnerungen eines Soldate Heinz  /Wilhelm Guderian 1950

人類で初めて電撃戦をやっちゃったグデーリアンの回顧録。ドイツ軍人の回顧録の中では比較的早くに発表されたものの一つ。電撃戦をやっちゃった指揮官本人の記録であり、当然、今回の記事の主要な史料の一つです。筆者が持っているのは本郷健 訳、フジ出版による1974年の日本語版のみ。ちなみにドイツ語の題名は「ある兵士の思い出」といった意味で、日本語題とは全然違います。

失われた勝利(verlorene siege /Erich von Manstein 1955)

電撃戦の元となった奇襲による高速包囲殲滅を立案したマンシュタイン将軍の回顧録。ただし筆者はこの本は持っておらず、本郷健 訳1999年の中央公論社版から必要なページを図書館でコピーさせてもらってます。スミマセン。

ロンメル戦記(The Rommel Papers /Liddel hart 1953)

ロンメル本人はクーデーターに関与したとして大戦中に処刑されてしまったのですが(形の上では自殺)、いろいろ腹に一物がある人だったので、生前、膨大な口述筆記と手紙を残していました。これを戦後、イギリスの軍事屋、リデル・ハートがまとめて出版した書籍。このため戦後の記述ではなく、戦闘中に残したメモの集積のようなものになっております。よって記憶違いなどの恐れは少ないモノの、現場ではあまり記録を残せなかったのだろうな、という印象があり詳細な地名情報などはあまり出て来ません。それでも動物的なカンで、事前になんの打ち合わせも無いままグデーリアンの高速機動戦に同調、そのまま電撃戦に大きく貢献してしまった暴れん坊将軍による貴重な情報です。原著は英語なのですが筆者はこれを読む気力が無く、1971年、読売新聞社が出していた小城正訳の日本語版を参照しています(明快な手抜き)。

電撃戦と言う幻(The Blitzkrieg Legend  /Karl-Heinz Frieser 1995

筆者のフリーザは戦闘力53万の宇宙の帝王ではなく、ドイツの軍人で戦史の専門家。電撃戦の研究書としては最もよく出来ている書籍でしょう。具体的な言及はないですが、所々にOODAループ的な記述があります。これも筆者は持っておらず、2003年 大木毅 安藤公一訳 中央公論社版から必要なページを図書館でコピーして引用してます。スミマセン。

第一次世界大戦(A History of the First World War  /Sir Basil Henry Liddell-Hart

失敗例となった第一次世界大戦のドイツの戦術の参照としました。ただしリデル・ハートの著書ですから、何が言いたいのか判らない、肝心な情報、数値、批判の前提条件となる根拠などが一切述べられていない、という例によって例のごとくな内容です。お粗末と言っていいですが、ドイツ語はもちろん、英語圏の公刊戦史も読むだけの気力が無いので、大筋の情報だけをここから拾いました。ちなみにリデル・ハートの著述は内容もお粗末ですが仕事も適当で、後に出版した「戦略論(Strategy)」は以前の著作をまとめだけのテレビアニメの総集編のような本でした。このため高い金払って同じ内容の本を二度も買う羽目になったりします(私はリデル・ハートを東映まんがまつり男と呼んでます)。ついでに「戦略論」の日本語版(原書房)はただでさえ判りにくいハートの文章が、日本人には意味が取れないレベルの日本語にされてしまっておりました。この点は気の毒ですが、いずれにせよ、リデル・ハートに中身のある理論は無いです。三流とは言いませんが、一流では無いでしょう。

ちなみに第一次世界大戦に関しては人物往来社の「世界の戦史」シリーズに三宅正樹さんによる「第一次世界大戦(1967年発行)」という優れた内容の本があります。この本、なぜか三宅さんの著書一覧から抜け落ちてる事が多いのですが、判りやすい内容なので一読をお勧めします。ただし三宅さんは軍事には疎いので、その点はあまり期待せず、歴史としての世界大戦を理解する本だと思ってください。


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