■だからしっかり狙うのだ



「まあシビアなのはわかったが、現実問題として、そんな精密な射撃はできたの?」

射撃には当然、ウマイヘタがあるので一概には言えないんだけど、
一般的に十分な練度を積んだ砲撃クルーが撃つと、それなりの精度で狙えたようだ。
演習時だと、それこそ25kmから撃って目標の中心と射心のズレが20メートル前後、というケースもある。
目標から100m以内なら、それなりの確率で砲弾を撃ち込めると思っていいんじゃないだろうか。

「じゃあ、なんとかなるんだ」

いや、それは射撃段階での話だ。
その前段階があるのさ。

「ああ、照準、相手に狙いをつける、という事ね」

ポンピン。
そもそも狙いが間違えていたら、どんなに正確に指示された位置に砲弾を叩き込んでも、
未来永劫、命中弾なんざ出ない。
だが「丸い地球で戦争する話」で解説したように、
長距離射撃においては、正確な照準は原理的に無理なんだ。
人間が目で見る限り、測距儀による距離測定は正確な数字を求めることができない。

「どうするのさ?」

軍人さんも考えた。
まず1922年(公式に発表されたのは多分23年)に
アメリカのロビンソンという艦隊総司令官のオッチャン(海軍大将とも言う)が、
戦艦にカタパルと積んで、飛行機乗っけて、砲撃の照準に使おう!
という事を思いつく。

「ああ、よく見えるくらい接近してしまえばいいって事?」

では、半分しか正解ではない。詳しくは後ほど。
でもって、実は米海軍は約10年ほど粘ってみるんだが、最後にアッタマに来て
飛行機の砲撃観測は事実上、捨ててしまうんだ。
1934-35年次の長距離砲撃演習ではまだ航空機による砲撃観測をやって、
それなりにそれなりかも、というコメントを出してるが、
1939-40年の長距離砲撃演習では、すでに飛ばしているのかどうかも怪しい。
この時は水面がモヤっていて視界が限られ、測距儀での観測が困難だったんだが、
航空機を出しましょう、という話すら出てこないんだよ。
ちなみにこの段階では、ギリギリ、艦載レーダーは間に合ってない。

「あれま。レーダーも無いのに、なんで?」

使えないから、としか言いようがないのさ。
と言うわけで、次回から“究極の照準を求めて三千里編”に入るよ。
でもって、実はそのもっともエクセレントで、
究極形にして完成形であるレーダー照準からスタートだ。
多分、その方がわかりやすいと思うのよ…。

では、今回はここまで。


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