■敵前逃亡

なんだか、もうお腹一杯だが、当然、GMは軍用車両も造っている。
彼らが、その生産力をもっとも注ぎ込んだのは、お得意のトラックだった。
GMC部局を中心に、ジミーと呼ばれた2.5tタイプのトラックをガンガンに製造しまくった。

同タイプの最終生産総数は80万台を超えるとされているが、うち56万台程度がGMC製とされるから、
7割近くをGMCだけで造ってしまったことになる。
1943年ごろの記録だと、24時間稼働のラインで、4分に1台のペースで製造ラインから出てきた、
という話もあるから、そんな会社のある国と戦争するのは絶対にヤダ(笑)。
無論、当時の資料にはおなじみのフレーズ
「生産に従事していた作業員には、多数の女性も含まれた」
が、この生産ラインにも付いて来ます(笑)。
恐るべきはアメリカの大量生産システムなるかな。

ほかにも、ダッジ、シボレー部局もトラックの生産をしており、これまた総数が不明ながら、
米英あわせて、かなりの数のトラックがGMによって生産されたことになる。
おそらくフォードと合わせると、総生産数の7-8割を超えてくるのではないだろうか。

で、GMもM4シャーマン戦車のエンジン生産に関わってるのだが…、まあ、もういいでしょ(笑)。



まあ、なんでもかんでもGMとフォードというわけではなく、
例えばハーフトラックなどはさほど造ってない(造ってはいるんだが)。
写真は有名なM3ハーフトラックだが、これのメーカーは
ホワイトモーターズ社。
まあ、40000台程度しか(感覚マヒしてます…)造ってないので、
両社の出番は無かったのだろう。

というわけで、ヘンリー フォードが産みだした大量生産システムによる、
「アメリカ自動車業界」が存在しなかったら、連合軍はえらいことになっていた、
というのはある程度、納得してもらえただろうか(笑)。

ここまでに説明した2社に加え、クライスラーまで含めると、陸軍のエンジンつき車両は、
トラック、ジープ、戦車のほとんどが、その3社で生産されていたことになる。
アメリカだけでなく、イギリスも、トラック、牽引車両の多くを彼らに頼っていた。
さらに航空戦力も含めたら、その存在の重さがわかるだろう。

もしヘンリーが大量生産システムを開発せず、
フォード社もGMもその大量生産システムも存在しなければ、
イギリスは負けなかったとしても、ヨーロッパ大陸への反攻は極めて困難だったはずだ。

あ、そうか!じゃあ新手の仮想戦記、歴史のIF物語として、ヘンリーが1904年ごろ、
宇宙人に誘拐されてしまう、というのはどうだろう!勝った勝った、ドイツ勝った!
イヤッハー!

…とは多分、ならない(笑)。
アメリカの自動車工業の生産力が支えていた国は、もう一つあったのだ。
それが、ドイツ。

そう、ナチス ドイツのダンナ。
これこそが、今回のどえらく長い話を書いた理由の一つです。いや、長かった…。
次回、いよいよナチスとアメリカはラブラブ編に…と見せかけて、
すみません、一回だけ脱線しますよ。
ドイツ編はその後。

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