■将軍自動車だって生産する


今回は、フォードの後から出てきて、
世界トップの座につく自動車メーカー、GMについて見て行きたい。

将軍自動車ことジェネラル(正式な日本語表記はゼネラル)モーターズ、
いわゆるGMだが、日本でジェネラル モータズなんて会社の車、
走ってるの見たことないし、アメリカに行ってもGMなんてブランドの車はない。
(GMCブランドはジェネラル モータース カンパニーの頭文字なので近いが)

どういうこと?というと、GMという会社は、別々に運営、営業されている
複数のブランドの集合体で(厳密にはちょっと違うが)
車の製造はそれぞれが独立して行い、GM本社がその統括を行う、
という体制になっているからだ。

各ブランドは部局(division)と呼ばれ、それぞれに責任者がおり、
他のブランドと競合しないよう、本社で調整をされた車種を決められた地域で販売する。
各ブランドは、聞いたことのあるものばかりだと思うから、
それらを見れば、GMが世界最大の自動車メーカーだ、
というのはなんとなく理解できるはず。

2008年現在のGMのブランドは、アメリカ国内だと
設立時からあるビュイック、主力ブランドのシボレー、
高級ブランドのキャデラック、若者向けのポンティアック、
トラックや商業車、アメリカで人気の高いSUV車のGMCなど。

アメリカ国外だと、ヨーロッパで展開するオペル、サーブ、
アジア(韓国、東南アジア)のデーウ(大字)などで構成される。
(日本の部局だったいすゞは資本提携を解消され、08年現在、GMブランドではない)
ほとんどが元は独立した会社で、後からGM本社に買収されて、
その組織に加わったため、車の生産販売に関しては、独自の運営をしており、
それらの統括、戦略的運用をおこなっているのがGM本社、ということになる。



ナウなヤングにバカ受けなシボレーのコルベット(コークボトルな3代目)。
これとサーブとキャデラック、かつてはいすゞのトラックさえもが同じ会社だったのだ。
GM守備範囲広すぎ、というか、だからこそ世界最大の
自動車屋さんになれたのだが。

この「ブランドによって住み分ける」というアイデアを持ち込んだのが、
GMの育てのパパンこと辣腕経営者スローンだった。
アメリカ人にとって、シボレーから始めていつかはキャデラック、
というのは非常に判りやすい「アメリカンドリーム」だった。

「全部が同じ会社の車」じゃダメなのだ。
たとえホンダがポルシェクラスの車を造っても、
日産がまかり間違ってベンツと互角の車を造っても、
やはりポルシェとベンツの方が同じ中身、同じ値段なら売れるのである。
これがブランドの魔力。
世界で最初にこれに気づいたのが
スローンだったと思う。



後にこのシステムを真似て、フォードが高級車のリンカーンを買収、
自社の高級ブランドとしたほか、トヨタも高級車はレクサスとして、
トヨタブランドとは別に展開している。
ホンダのアキュラなども同様で、日本人からすると、レクサスってトヨタだろ、
ってな感じなのだが、アレはブランドによる差別化になれたアメリカ向け戦略だ。



なので、全宇宙日本人1億2千万が「いや、それってトヨタじゃん」
とツッコミを入れたくなるレクサスはアメリカ式のブランド展開なのだ。
が、日本の戦後60年で骨までしみこんだ「トヨタ」のイメージは、
そう簡単にはぬぐえないだろう。
GMは会社が完全に大きくなる前から、つまり会社の名前に手垢が付く前に、
その戦略に切り替えたからこそ、うまく行った、という面が大きい。


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