■史上最大の錯誤
さて、5月7日の朝から連続された五航戦の大チョンボの数々、
これを少しでも言い訳をできる状況にしよう、と考えた五航戦司令部が、
成功の見込みが全く無いまま、薄暮の攻撃隊出撃を決定したまでを前回は見ました。
ただし、この攻撃は上層部に“私たちは一生懸命やってまっせ”
とアピールするのだけが目的だった、と考えるべきもののような気がします。
どうせはるか遠くにいる敵になんか届きっこ無いんだから、
ちょっとそこら辺を飛んできて、帰って来ればいい、という攻撃だったと思われます。
でなければ発艦時間の16:15〜16:30の段階で、
最低でも350海里(648q)以上遠くに居ると推定されていた
敵機動部隊に対し、攻撃部隊を出す理由がありません。
そんなの行ったら最後、帰ってこ来れない距離であり、
最初から手が出ないのは判りきってます。
明らかに、途中での引き返しを前提としており、
これすなわち、“僕らはこんなに頑張った”という
既成事実をつくるための出撃と考えるのがもっとも合理的な推測でしょう。
なので、司令部としても、ちょっと危ない夜間着艦があるけど、
とりあえずその辺りをぐるっと一周飛んできて、というだけの作戦だったと思われます。
それだったら、特に危険もないし、オレ様たちのメンツも立つし、
多少の犠牲者が出ても仕方ないよね、と。
ところが、何度も書いてるように、不幸にして索敵機から入って来た情報は全て
TF17ではなく、ずっと遠くに居たTG17.3のものでした。
16:15の出撃時の時点で、ホンモノのTF17は約190海里(351.9q)という、
空母機動部隊にとっては至近距離に居たのです。
このため、その上空に護衛のゼロ戦が無い攻撃隊を突っ込ませる結果になり、
この出撃は悲劇的な、そしてほとんど喜劇にすら近い、
ドタバタ劇となってしまう事になります。
この作戦で命を落とす事になった搭乗員の人たちにとっては
たまったものでは無いですし、こんな戦争があってたまるか、
とつくづく思いますが…
どの国の軍隊でも、部下を平気で犬死させるような人間のクズほど
出世が速い、という不思議が傾向があるんですが、
それにしても、この辺りの五航戦司令部はちょっとタチが悪すぎますね。
そもそも、先にも書いたように、結成から1年未満の五航戦は
若い搭乗員が多く、まだ夜間着艦訓練は行ってません。
ただでさえ技量が要求される空母への着艦ですが、
まともに着艦点が見えない、というさらに困難な夜間着艦は相当な技量が要求されます。
このため、この薄暮攻撃においては、
以前は他の部隊にいて、その経験があるベテランパイロットだけを選抜しました。
よって出撃した機数も限られ、以下の通りになります。
そして前回も書いたように、ゼロ戦の護衛はついてません。
|
99式艦爆 |
97式艦攻 |
瑞鶴 |
6機 |
9機 |
翔鶴 |
6機 |
6機 |
|
99式艦爆 |
97式艦攻 |
瑞鶴 |
6機(1機) |
9機(5機) |
翔鶴 |
6機 |
6機(3機) |
TBD雷撃機 | 0機 |
SBD急降下爆撃機 | 0機 |
F4F 戦闘機 | 1機(空中衝突) |
●USSヨークタウン 5/7損失機数 その2
TBD雷撃機 | 0機 |
SBD急降下爆撃機 | 0機 |
F4F 戦闘機 | 3機(被撃墜1機) |