■海戦前夜
ここでもう一度、位置確認のため、同じ地図を載せておきます。
3月8日に行われたSR作戦は、
ほとんど抵抗を受けずに成功、日本海軍はニューギニア島のラエとサラモアをあっさり占領してます。
(海軍陸戦隊が上陸を担当)
先に述べたように航空支援の空母は呼んでいませんでしたが、それで大丈夫だったわけです。
これで南洋部隊はこの方面の侵攻に自信を深めるのですが、
全てが順調だったのはここまででした(涙)。
前回の記事を読んでる賢明なる読者諸氏はお気づきでしょう。
上陸直後の3月10日に、1942年2月以降のアメリカの空母攻勢作戦の一つ、
ラエ・サラモア空襲を受けることになるのです。
これによって、攻略を担当していた南洋部隊は
輸送艦4隻の沈没をはじめ、大損害を受けることになります。
これは日本側が接近に気がついてなかったアメリカ空母機動部隊、
USSレキシントン(TF17)とUSSヨークタウン(TF11)を中心とした合同機動部隊が、
ニューギニア島の南側から密かに空襲部隊を発進させ、奇襲に成功した空襲でした。
(TFはTask
force、独立して任務遂行可能な空母機動部隊の略号)
この時、例によって日本側の機動部隊主力は、はるか西のセレベス島にあり、
そのスキを衝かれた形になってます。
(五航戦の翔鶴、瑞鶴は日本で訓練中)
これにショックを受けたのが、とにかく航空攻撃にトラウマを持つ(笑)現地の南洋部隊でして、
(前回見たウェーク島でたった4機のF4Fにひどい目にあった皆さんなのだ)
彼らはすぐさま、連合艦隊司令部に空母の援護を要請します。
アメリカの空母機動部隊が活動してるなら、次に予定されてる
ポートモレスビー&ツラギ攻略のMO作戦は航空支援無しには無理だ、というわけです。
この結果、先に紹介した改造空母の祥鳳が
第四艦隊率いる南洋部隊に派遣され、その指揮下に入ることが決定されます。
が、これだけでは不安だ、としてさらに正規空母の派遣を南洋部隊は求めました。
このため、戦史叢書によると3月13日に南洋部隊(第四艦隊)の司令部と
連合艦隊参謀の話し合いが北のトラック泊地で行われ、ここで正規空母の
派遣が決定されたようだ、とされています。
で、最初は、加賀一隻の派遣で済ましてしまうつもりだったのは先に書いたとおりですが、
さすがに無理がある、という事で、インド洋作戦から帰還中だった空母部隊のうち、
翔鶴、瑞鶴の五航戦をここに派遣することに決定します。
…敵の空母機動部隊が出てくる、とわかってるのに、
なんで五航戦の二艦だけの派遣としたんでしょうかね。
全空母戦力を投入、アメリカの空母を完全にに叩き潰すべきじゃないかなあ、
と私なんかは思ってしまいますが…。
ここでアメリカ機動部隊を補足殲滅できれば、すでに決行が決定されていながら
いろいろ評判が悪かったミッドウェイ作戦も要なくなるわけですし。
どうも連合艦隊司令部と山本五十六様の考えは、私には良くわからない部分があります。
とりあえず、このため空母のインド洋からの帰り待ちという事になってしまい、
作戦は5月にまで延長され、さらに既に決定されていた
ミッドウェイ作戦(MI作戦)との調整のため、5月上旬に決行と決まるのです。
ちなみに、この間にソロモン諸島のブーゲンビル島の攻略もやっており、
3月中にはほぼその占領を終えてます。
こちらは特に大きな抵抗は受けてないみたいですね。
(海軍陸戦隊の根拠地隊が上陸、占領してる)
対するアメリカは3月の段階で、暗号解読によってMO作戦の存在を知ります。
その後、4月になって、今度はイギリス側(オーストラリア経由)が同じく暗号解読によって
五航戦の空母派遣を知り、これをアメリカに通報、これによって日本側の作戦、
空母機動部隊を伴ってのポートモレスビー侵攻、というのは完全に知られる事になります。
この一帯はオーストラリアの勢力域であり、さすがに空母まで出てきては、
持ちこたえることはできない、と再度、アメリカに救援要請が出される事になるわけです。
で、ラバウルとガビエンの時は援軍を拒否したアメリカ海軍ですが、
この段階では既にイケイケ海軍に変身済み、
さらにポートモレスビーはアメリカにとっても重要な航空基地であり、
よって太平洋戦域のアメリカ海軍責任者、ニミッツは、これを受けて立つことにします。
この時期、作戦直前の4月末の段階でアメリカ空母の配置は
USSヨークタウンは既に珊瑚海にあり、
USSレキシントンは真珠湾を出て、フィジーとニューカレドニアの中間に近い海域に居ました。
USSホーネットとUSSエンタープライズは、前に見たようにドゥーリトルの東京空襲を終えて、
4月25日に真珠湾に帰還した直後ですね。
最終的に、日本側の艦隊がトラック泊地から動き出す前日、4月29日になって
太平洋戦域のアメリカ海軍責任者、ニミッツは全空母の珊瑚海に向けての出撃を命じてます。
このタイミングは、完全に暗号を解読されてるゆえでしょうね…。
結局、真珠湾から出撃した2艦は海戦に間に合わないのですが、
それでも全力で迎え撃つ、というのがアメリカ側の方針でした。
この全力を尽くさない日本海軍と、常に全力で戦いに出るアメリカ海軍の構図は、
後のミッドウェイ海戦でも再現されることになるのです。
といった辺りが海戦前夜、という感じで、
次回より、今度こそホントに珊瑚海海戦を見てゆきます。
…多分。
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