攻撃参加機数 |
TBD 21機 |
損失&損失率 |
ヨークタウン0機 レキシントン1機 計1機/損失率 4.7% |
命中弾 |
なし |
命中率(命中弾/出撃機数) |
0% |
といった感じになります。
ちなみにアメリカ側の損失数の内、USSレキシントン隊のものは、
燃料切れ墜落のものが多く、220海里(約407.5km)前後の
距離での戦いとなったこの海戦は、
航続距離ギリギリな戦いだったようです。
が、TBD、SBDの各機体の航続距離性能からすると、
本来、そんなキツイ距離ではないはずであり、
さらに燃料切れはUSSレキシントン隊ばかりなので、
これは迷子になって燃料を食った、という面も大きいと思われます。
さらに言うなら、なぜかTF17は攻撃隊回収のために北上する、という
空母機動部隊における基本中の基本と言っていい艦隊行動をとってません。
通常、攻撃隊を出したら、少しでもその飛行距離を短くするために
それらが向かった攻撃地点方向に変針して進むのですが、
8日のTF17は、これを全くやってません(7日はやってたのに)。
攻撃隊にしてみれば、ある意味、見殺しにされたようなもので、
やはり、この日のTF17の航空攻撃の作戦指揮は、全般的にダメダメ感あるなあ…
ここで参考までに前日の攻撃に置ける命中率も見て置きましょう。
まず日本側艦爆の対ネオショー艦隊の命中率が27%、
同じくアメリカ側の祥鳳に対する命中率が25%、
そしてアメリカ側の雷撃の命中率に至っては31.8%と
それぞれ作戦行動中の軍艦に対する命中率としては
世界新記録並みの数字を出してました。
これと比べると、上の表に見られるように8日の攻撃は、
最高でも日本側の雷撃隊による11.1%どまりで、
双方、かなり見劣りのする命中率になってしまってます。
これは前日は両攻撃隊とも、まともな迎撃態勢になかった
(祥鳳とMO主隊はあってしかるべきだったのに…)
攻撃目標だったのに対し、今回は錯誤とチョンボはあったものの、
両者ともに、空母機動部隊が万全の迎撃態勢を敷いていた結果でしょう。
密集した対空砲火、一定の数の迎撃戦闘機、
これらが揃って妨害すると、練度の高い部隊でも命中率は
理想状態の半減以下まで落ち込む、というわけです。
なので対空迎撃態勢が空母艦隊決戦においては、
極めて重要なのがこの辺りの数字から読み取れます。
さらにアメリカ側の命中率の数字が、日本より低いのが目を引きます。
ただし急降下爆撃に関しては迷子になって攻撃不参加のVB-2 11機を
計算の母数に含んでいるからです。
実際に攻撃に参加した機体だけ(29機)での比率を見ると、
10.3%と、日本側と互角どころか、ちょっと上回る数字を出してきてます。
とりあえず実戦における航空攻撃による爆弾の命中率は
10%前後、というのが相場のようです。
逆に艦爆の損失率もアメリカ側の方が10%近く低くなってますが、
これも攻撃に参加してなかったVB-2を差し引くと24.1%と
日本側との差は約3%にまで縮まります。
艦爆に関しては両者はほぼ互角の仕事をした、と見ていいでしょう。
それと対照的なのが雷撃、すなわち魚雷の命中率と損失率で、
日米で際立った差が出てます。
まず命中率では、日本側が11.1%とやはり10%前後の数字を出してるのに
アメリカ側はなんと0%です。
これはアメリカ側の雷撃機は左右からの挟撃を全くしてないこと、
さらに先に見た不良品魚雷の問題があったことによる複合的な結果だと思います。
日本側はキチンと挟撃してる事、
さらに艦爆との同時攻撃に成功してる事が最大の勝因でしょう。
それと引き換えという感じで、日本側は雷撃機の損失も驚異的な数字で、
約44.4%と、ほぼ半数の機体をこの攻撃で失いました。
部隊としては事実上、壊滅した、と言ってよく、
この海戦を通じて、日本側における最大の損失率となってます。
前日の薄暮攻撃といい、徹底的なまでに痛めつけられたのが
日本の雷撃隊、と言えるかもしれません。
とりあえずこの段階で、もはや作戦行動に耐えられるだけの
戦力は、五航戦の雷撃隊には残ってませんでした。
記録を見ると、どうも低空で侵入、肉薄して攻撃、
その後敵艦を飛び越えて退避する
日本の雷撃機は艦上からの対空砲火にかなりやられたと見られ、
やはり無茶な攻撃手段ではあるな、という印象が残ります。
その代わりその効果も大きいので、
ハイリスク・ハイリターンの典型かもしれません。
対してアメリカ側は戦果も無い代わりに、
その損傷率も日本側の約1/10の低さになってるので、
日本側のように肉薄して投下しなかった可能性もあります。
ただし、ヨークタウン隊は攻撃後、
すぐ近くに逃げ込む雲があったこと(このため損失機0)、
アメリカの雷撃機は魚雷投下後、反転して逃げる、という
行動パターンの違いも考慮する必要があるかもしれません。
とりあえず、その多大な犠牲と引き換えに、日本側の雷撃隊は
極めて重要な活躍をしたのは間違いのない事実です。
特にUSSレキシントンのガソリン漏れの原因となった船体のゆがみは
魚雷によるものと見られますから、彼らの活躍がなければ、
艦内の気化ガソリンによる大爆発もなく、
最終的に沈没することもなかったはずです。
対して雷撃が低調というアメリカ側の特徴は
この後のミッドウェイ海戦までそのまま持ち込まれることになります。
その代わり、ミッドウェイでは艦爆による多数の命中弾と運が、
この欠点を補ってしまうわけです。
ちなみに日本側が航空戦において
こういった互角以上の戦いを繰り広げるのは1942年の空母艦隊決戦のみで、
1944年からは、アメリカ側からの攻撃からひたすら逃げるだけ、
という戦いになって行きます。
あれは日本人として調べていてつらいよ、ホントに…。
■Image
credits:Official U.S. Navy Photograph,
now in the collections of the
National Archives.
アメリカ側の雷撃隊の不調は、ミッドウェイの段階まで、
機体が旧式なTBDだった事も影響があったかもしれません。
さらにアメリカ側の魚雷は投下高度も速度も極めて低いので、
これをなんとかしてくれ、とUSSヨークタウンの報告書には書かれてます。
そこに例の不良品魚雷の問題が加わるわけで、
アメリカの雷撃隊に関しては、同情の余地はかなりある気がしますね…
この点、1942年を通して日本の雷撃隊が極めて優秀だったのも事実ですが、
それと引き換えに多大な損失を被っていたのもまた事実で、
1942年秋以降、二度と同じ錬度まで雷撃隊は再建される事無く、終戦を迎える事になります。
典型的なハイリスク、ハイリターンの兵器ですから、
かなり使いどころが難しい感じもしますね、雷撃機。
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