近日の御露西亜国の酔狂を見て拙僧が思い出せし話に御座候。
ルーズベルト、チャーチル、そしてスターリンの三人が死後、主なる神の宴に招かれた。
饗宴は観たこともない豪勢なもので、三人は大いに楽しんだ。中でもスターリンは天界の美酒に泥酔しすぐに寝てしまった。やがて部屋の扉が音もなく開き、光が満ち溢れる中を主が静かに入ってくる。ルーズベルトとチャーチルは驚き、感動しながら跪いて手を合わせた。主が言う。
「お前達は指導者としてあの悲惨な戦争を終わらせ、我が御心にかなった。よってどんな願いでも一つだけかなえてやろう」
「おお、主よ身に余る栄光です」
「だが気をつけよ。願いは一つだけ、そして一度でも口にしたら決して取り消せぬ。ではチャーチル、そなたから聞こうか」
「主よ、私は生涯、政治の世界に身を置いて来ました。この経験と知識を持って再び地上に戻る事ができたら、必ずや多くの戦争を政治の力で食い止める事ができるでしょう」
「よく言うた、ウィンストン、行け、そして世界に平和をもたらし楽園を成せ」
その言葉が終わるとチャーチルの姿は光と共に消えた。
「次はお主の番だ、ルーズベルト」
「主よ、私は不幸にして戦争時代の大統領となりましたが経済の安定が当初の目標でした。この知識と経験を持って再び地上に戻る事ができたら、必ずや世界の経済に貢献できるでしょう」
「よく言うたフランクリン、行け、そして世界に安定をもたらし理想郷を造れ」
その言葉が終わるとルーズベルトの姿は光と共に消えた。最後に残ったスターリンを主は揺り起こした。
「ヨシフよ、目覚めるのだ、ヨシフ」
揺さぶられたスターリンは目を覚ます。
「…おお、なんだお前。ピカピカ光っているぞ。病気か。ところであの二人はどうした」
「チャーチルとルーズベルトなら新たなる使命の元に旅立ったところだ。さあ、スターリン、お前の番だ。何でも望みを一つ言うがいい」
「ああ?よく判らんが一人で酒を飲んでもつまらん。今すぐあの二人を呼び戻してくれ」