■そこに重力があるから
というわけで、ニュートン力学の細かいお約束編、
ようやく最後の重力、重心、重心点に入ります。
…なんでこんなに長い話になってしまったのやら…。
さて、まずは重力。
これはその名のとおり、力の一種で、
私たちが地上で毎日元気に強制的に受けてる力であり
これによって我々は地面の上に縛られているわけです。
重力の正体は地球が持つ万有引力であり、
万有引力は、その名のとおり、あらゆる物、
そこれこそパチンコ玉から、アリさん、象さん、
さらには皆さんまでもが持ってるミラクルパワーです。
ただし、これは絵に描いたように物量勝負な能力であり、
人間くらいのサイズが多少集まったところで
全く意味が無い量にしかなりません。
が、地球サイズともなると、この力がバカに出来ない量となり、
なった結果、我々は毎日地面の上に
貼り付けられながら生きてるわけですね。
で、その名の通り、これは力ですから、
質量(m)×加速度(a)=力(F)
の式により、物体に加速度が生じる事を意味します。
それが重力によって生じる重力加速度であり、
これは実験などによって地表付近で
約9.86m/ssとなる事がわかっています。
つまりモノを落とすと1秒ごとに9.86m/sずつ加速してゆくわけです。
万有引力は距離の2乗に反比例して弱くなるので
高度を上げると弱まって行くのですが、とりあえず、
ジェット旅客機が飛んだり、エベレストの山頂があったりする、
高度8000mぐらいまでなら、その違いは誤差の範囲と考えて、
無視しちゃって大丈夫でしょう。
よって、人類が普通に呼吸して生き行ける範囲内で
物体を落っことすと、毎秒約9.86mずつ加速してゆく、という事です。
これは10秒後には986m/s、時速約355kmにまで加速してしまう、
という数字ですから、かなりの加速度だと言えます。
(ただし空気抵抗を無視した場合)
高いところから落ちたらタダじゃすまん、というのがよくわかるかと。
もっとも10秒以上落下するには最低でも高度490m以上、
ほとんどスカイツリー展望台近くの高さまで登らないとなりませんが…。
で、当然、地面の上にいる限り下には落っこちませんが、
その代わり加速度で生じた力、すなわち重力によって、
地面に押さえつけられる事になるわけです。
万有引力は数が揃わないとまるで弱っちくせに、
いざ数が揃うとやたらと強力になる、という
タチの悪い街のチンピラ的なとこがあり、
人類はその誕生以来、約61万3584年間、
これに打ち勝つことが出来ませんでした。
とりあえずモンゴルフィエ兄弟の熱気球が1783年に
空に浮かび上がって、重力のバーカバーカ、と
やるまで、常に人類の敗北に終わっていた、と言えましょう。
ちなみに、厳密な区別は微妙なんですが、
この記事では地球など、天体の持つ万有引力を重力と呼びます。
そして、この重力を受けて生じるのが、「重さ・重量」という量です。
さて、ここで新たに重力が産み出す力、重量という量が出てきます。
戦艦大和の排水量から、あなたの体重まで、
これらは、すべて重量という量で測られているわけです。
でもって、これは力の量ながら、
基本的に地球上専用の単位となっています。
なぜならば地球の重力によって決まる量だからです。
で、重量の単位はご存知のように、体重60kgといった感じに、
kg、つまり質量と同じ単位が使われるのが普通です。
ところが、これは変な話で、本来、質量と重量はまったく
「別の次元の量」なのに注意が要ります。
質量は基本量、ニュートン力学の根源の量なのに対して、
重量は重力の量、つまり力の量なのです。
これは根本的に別モノで、ラーメンの味と夕焼けの美しさ、どっちが上?
と聞かれても比べようがない、というのと同じ世界だったりします。
それが普及してしまった以上、手の打ちようが無いのですが、
これはどう考えても変な話で、力学上は厳密に区別する必要があります。
重量も力である以上、単位は本来、力の次元の単位、
kg m/ssまたは N(ニュートン)のどちらかで表記されるものです。
例えば体重60kgという“重量”を正しいの力の量で示すと、
約590kg m/ss =590N:ニュートンにもなり、まるで別の数字が出てきます。
(60kg
×9.8m/ss(重量加速度)=590kg
m/s )
全然数字が違うじゃないの、という感じですね(笑)。
ある意味、支離滅裂でして、このままでは重量に関しては、
キチンとした量の計算が成り立ちません。
ちなみに、ここら辺りを区別するため、
重量の単位の場合、kgw、または
kgf
という表記を
使うことがありますが、表記が変わっただけで、内容は一緒です。
これは、ニュートンさんがプリンキピアの中で発見した新たな量、
質量に対応した単位が世の中になかったため、
とりあえず重量の単位を借りてきてしまった結果、生じた混乱でしょう。
本来なら、質量専用の単位を同時に造ってしまうべきだったのですが、
当時の物理学者さんの誰もが、この仕事を放棄してしまったため、
こういった混乱が生じる事になったのだと思われます。
で、とりあえず、この両者の量の違いを矛盾無く説明してしまう必要から、
ここでG、あらたに重力加速度という単位が登場します。
これは先に見た地表付近の重力加速度を基準とした加速度であり、
約9.86m/ss(重力加速度)=1G
とします。
この「G」というのを加速度の単位の一つとしてしまったのです。
で、これを加速度とし採用して計算できるなら、
60kgの質量の物体の重量を求める式は以下のようになります。
60kg(質量)×1G(加速度)=60kg(G)(力)
加速度1を掛け算するだけですから、
当然、質量と重量の数字は一致します(笑)。
これによって、質量と重量の数字が一致する事になりますが、
なぜかGの単位は計算後の単位に残りませんから、
質量なのか地上での重量なのかは、はやはり判別できません。
ここら辺りは、あきらめるしかない部分でしょう。
最後にまとめるなら、ともにkgで表記されてしまう事が多いため、
重量と質量は判別しづらいが、本来、両者は全く別物であり、
質量に重力加速度が加わったものが重量となる。
すなわち質量はニュートンの三大根源要素の一つで、
地球上だろうが宇宙だろうが常に一定なのに対し、
重量は質量に地上の重力加速度(G)が加わった力である。
といったところでしょうかね。
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