■グラフはとっても偉かった

さて、微分積分の具体的な内容を手っ取り早く理解するには、
これもグラフで考えるとわかりやすかったりします。
とはいえ、あくまで基本的な考えだけを見るので、
最低限の確認だけにしておきましょう。

基本的な考え方さえわかってしまえば、
具体的な微分の法則とかは、各自で調べてもらう、
でなんとかなるはずです。…多分。

例によって力学の約束、最初は簡単な例から考えるにのっとり、
まずは慣性運動の等速直線運動で考えてみます。
ニュートン力学なので、時間の単位を秒とし
最初は単純明快、秒速10mで等速運動してる物体における
瞬間の速度の微分、そして全体時間の移動量の積分を考えます。
まずは基本中の基本、瞬間の速度を求める微分を考えましょう。

速度は時間の進行にともなう距離の量の変化ですから、
横のX軸に時間、縦のY軸に移動した距離をとったグラフを使います。

これをグラフにするためには、速度を関数で表す必要があり、
とりあえず今回のように速度が10m/sで、n秒後に進む距離を(Y)mとしたら

(Y)m=10m/s×n秒(s)

よって等速直線運動では、単純な直線の一次関数グラフとなるのがわかります。
こんな感じです。



さて、このグラフから瞬間の速度を読み取る、つまり微分をするにはどうするか。
まずどこかで微小時間dtを決定するため2つの時間軸上の2点を選びます。
記号の“d”は極少ない量を意味するものです。
この2点を時間t1、時間t2としておきましょう。
図では1秒の場所と、それから0.3秒後あたりで点を取っています。
次にその2つの極短時間の量を求めます。

時間 t1-時間 t2=dt

ですね。

後はその時刻に対応する移動距離をグラフのY軸から読み取り、
これもその差から長さを求めておきます。

距離 L1-距離 L2=dL

このd も極めて小さな量を意味するdで、
極めて短い時間に移動した距離、という意味です。
ここから

dL÷dt=dV(極小時間の移動速度)

という計算をすれば、微分の計算が成立するわけです。
単純明快ですね。
後は極小時間というのが、どれほどになるのか次第ですが、
それぞれの時間ごとに計算してやるだけとなります。

が、実は一次関数では次のような考え方で、より簡単に解決してしまう事ができます。



dLを求めるため、Y軸(距離)に対して引いていた線の一本を、
そのままX軸の位置まで下げてしまうと、あれま、直角三角形が登場します。
ここでグラフの線とX軸が成す角を例によって角パズー、否、角θとすると、
距離 L(Y軸座標点)÷ 時間 t(X軸座標点)=速度
の計算式は実は角θに対する三角関数、tan(タンジェント)を
計算してる事になる、というのに気が付いてくださいませ。
すなわち、

tanθ=速度

という関係が成立してます。

三角関数については、前回みましたね。
直角三角形の角θが同じ角度なら、
三角関数は常に同じ数字、一定で不変となりますから、
このグラフから求められる速度がtan(タンジェント)に等しい以上、
それはどんな時にどれだけの距離を進んでいても必ず同じ速度となります。
よって、このグラフ上、どの点の間で速度を計算しても全て同じ数値であり、
それは極小時間、dtの間の速度でも変わりません。

よって、一番計算が簡単な数字をグラフから選んで(笑)、

10m÷1秒(s)=10m/s

と答えを出してしまえば、これが極小時間の微分でも、
そのまま使えてしますし、
その反対、ほぼ無限の極大値でも同じなのです。
このように幾何学的な証明によって、無限小から無限大の時間、
どこで計算しても時速は同じ、という事まで証明できるわけです。
冷静に考えれば、最初に等速運動だ、と断っている以上当たり前ですが、
きちんと証明が与えられたことで、無限という概念にも対応できる、
という事になるのですが、ここではそこまで深く考えなくていいでしょう。

とりあえず一次関数となる運動では、どこでどう微分しようが、
その量は常に同じになる、という事です。
これはできれば、覚えておいてください。


さて、お次は定速度運動の積分、
移動量をグラフから求めてみましょう。

ただし先に書いたように、
単なる距離を時間で積分(掛け算)しても意味がないので、
ここでは最も基本的な積分、
速度と時間のグラフから見てゆきましょう。

ちなみに、速度は10m/sで固定ですから、
こちらの関数の式はY軸の速度(V)に対し、

速度(V)=10m/s

というなんだか世の中なめてるような式になります(笑)。
が、あまりに単純なので見逃しがちですが、
これは距離を時間で微分したのと、同じ速度で固定になっています。

これは各瞬間の速度を微分で求め、それを集めたのが、
積分のグラフ中で使われる速度なのだ、という事であり、
このため、微分と積分は表裏一体の関係を持ちます。
ただし、この辺りは深入りすると面倒なので、
今回は、そこまでで話を終わりにしてしまいましょう。

とりあえず、そのグラフは以下のようになります。



わざわざグラフにする必要があるのか、ってものですが(笑)、
意外にこれが基本中の基本となるのです。

このグラフから移動した総距離の蓄積、
つまり速度の時間による距離積分を求めるにはどうするか、
といえば、当然、各時間×速度の計算を行なうわけです。

速度は常に10m/sで固定ですから、1秒後、2秒後、3秒後…
までに移動する距離は、

10m/s×1s=10m

10m/s×2s=20m



といった式になりますね。

となると、実はこれはグラフの線と、X軸で囲まれた
四角形の部分の面積を求めているのと同じ計算になる、
というのがポイントです。

すなわち、



というのを意味するのです。

当然、1秒なら1秒まで、7秒なら7秒までの四角形の面積です。

つまり等速運動における移動した距離の総量、積分は
グラフ上では、その時間に対応したX軸と
グラフの線とに囲まれた部分の面積に等しい、という事です。
これはとても重要なので、必ず覚えてください。

はい、とりあえず、もっとも簡単な、一次関数の微分と、
その裏面となる積分を説明しました。

これが二次関数の微分と
その裏面となる積分(一次関数になる)とかになると、
いよいよ微分の法則などが出てくるのですが、
少なくとも現状ではそこまでの知識は要らないので、
とりあえず、今回の解説はここまでとしましょう。

正直、やや中途半端なのですが、ここからちょっとでも先に行くと、
とてもじゃないが1回や2回では説明が終わらなくなるのです…。
いずれ、改めて、説明したいと思います。

ニュートン力学では、微分は瞬間の量、
積分は一定時間内に蓄積された量、
というところまで理解してもらえれば、当面は大丈夫でしょう。

はい、とりあえず今回はここまで。



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