■運動量の法則 大進撃
(2014.1改訂版)
さて、運動量保存の法則とは何ですか?
というのを少し詳しく見ておきましょう。
これが今後の展開において、基本中の基本となるものだからです。
まず、何もない空間で等速直線運動に入った物質は、
外部から力が加わらない限り、どこまでもその速度を維持する、
という慣性の法則2号を思い出してください。
運動量はここから発生し始めるわけです。
で、ニュートン力学では、質量は常に変わりませんから
等速直線運動に入ってしまうと
質量×速度の運動量(mv)は、どこまでも同じ量で保存されます。
これが運動量の保存則の第1段階。
まあ、ここまでは例によって当たり前といえば当たり前です。
が、運動量(mv)には物体の運動が衝突などによって変化した後も
同じ量で保存されるという、さらなる特徴があるのです。
例えば何もない宇宙空間で等速直線運動をしていた物体が
別の物体に衝突して減速したとします。
その物体だけで見ると、質量そのままで速度が落ちるわけですから、
運動量(mv)=質量(m)×速度(v)
で求められる運動量は減少したように見えます。
が、衝突によって弾き飛ばされた相手の物体に速度が生じた事で、
そちらにも運動量が発生しているわけです。
この時、両者の運動量を合計してみると、
最初の物体が持っていた運動量に等しくなることが実験で確かめられています。
ここから運動量は常に保存される、という
「運動量保存の法則」が導き出されるわけです。
すなわち、
衝突で減速した物体の運動量+衝突で加速した物体の運動量=最初の運動量
これが「運動量の保存則」の基本的な考え方となります。
さて、ここで、ものすごく簡単な(笑)
運動量保存の確認実験をしておきましょう。
GIFファイルですので、それが見れる環境なのを確認の上、ご覧ください。
なんだか見苦しい指が写ってるのはご容赦あれ。
ついでに本来は摩擦なし、空気抵抗なしの環境で実験する必要があるのですが、
そこまでは無理なので、これでガマンしてください…。
摩擦の少ない面の上でコインを弾くと、
勢いよく滑って行きますが、別のコインがその先にあると、
これと衝突、運動量(mv)が乗り移ってしまうため、停止します。
そして衝突されたコインは、その運動量を引きついで、
同じようにすっ飛んで行く事になります。
ちなみに、弾いたコインが衝突後もしばらく滑るのは、運動量が完全に乗り移る前に、
衝突相手が離れてしまい、その一部が残ってしまったからです。
(後で出てくる作用反作用で考えると、全部の力が左のコインに乗り移ったなら、
右側のコインは、完全停止しなければならない)
もし摩擦も空気抵抗も無ければ、右のコインも減速したままの運動量を保存し
どこまでも動いてゆくはずです。
このように両者で運動量を分割して維持しており、その合計は最初のコインが
持っていた運動量と等しくなります。
とりあえず、この運動量の乗り移りと、その量の保存は
極めて重要ですから、次のように覚えておいてください。
■運動量は接触によって移動する(乗り移る)
■運動量は保存される。
接触後に二つの物体が持つ運動量の総量は、接触前の運動量と等しい。
この後で出てくるさまざまな量の保存則の基本となるのが、この運動量の保存で、
極めて重要な法則だと考えてください。
ただし、これは慣性空間で、十分な強度を持った物体が対象の話になります。
摩擦や空気抵抗などがある場合、さらに収縮して衝撃を吸収してしまう物体などでは、
これに加えて、熱とエネルギーのやり取りを考える必要がでてきます。
でなければ、野球のキャッチャーは、ボールを受けるたびに後ろに飛んでゆくことになってしまうでしょう。
ここら辺りは、連載の最後に登場するエネルギーとその保存則で考えましょう。
とりあえず、この段階では原理原則として、慣性空間と十分な強度をもった物体を相手に成立する
こういった法則がある、と覚えてください。
はい、といった辺りが慣性の法則と、
そこから派生する運動量保存の法則となります。
とりあえず慣性の法則
■あらゆる物体は、力が加わわらない限り静止したままであり、
力が加わわった後は1直線上の等速運動を続ける。
そして運動量保存の法則
■運動量は接触によって移動する(乗り移る)
■運動量は保存される。
接触後に二つの物体が持つ運動量の総量は、接触前の運動量と等しい。
といったニュートン力学の根底部分を今回は見てきました。
ここら辺りは基本中の基本なので、この先よくわからない、という部分が出てきたら、
三つの基本量(質量、長さ、時間)と共に、ここまで立ち返って見るといいかもしれません。
さらにニュートン力学は、この慣性の法則が成立する“慣性空間”
でのみ成立する、という弱点を持つ(笑)のですが、
慣性空間の定義は、次の運動法則を見ないと理解できないので、
これはまた後で説明します。
とりあえず、今回はここまで。
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