■法則一号 慣性の法則
さて、前回はニュートン力学の基本となる3つの量、
質量、長さ(距離)、時間の3つと、
そこから最初に出てくる基本的な量、速度までを見ました。
その基本的な量を基に、実際に計算を行なって
さまざまな新しい量を求めるのがニュートンの力学です。
今回からは、その計算のやり方、法則の方を見て行きます。
でもって前回、軽く触れましたが、ニュートン力学の法則は
基本的に3つだけ、後は全てこの発展型となります。
この段階ではまだエネルギーと仕事と熱量は考えませんが、
それらも、基本的にはこの3つからの応用となります。
もう一度、確認しておくと
■慣性の法則(第1法則)
■運動の法則(第2法則)
■作用反作用の法則(第3法則)
の3つですね。
まずは基本中の基本、運動の第1法則こと
慣性の法則を見て行きましょう。
全てはここから始まります。
■慣性の法則(第1法則)
あらゆる物体は、力が加わわらない限り静止したままであり、
力が加わわった後は1直線上の等速運動を続ける。
ニュートン力学の全ての大前提になるのがこれです。
一言で言ってしまうと、質量を持った物体は基本的には動かない、
つまり常に静止し続ける、という性質を持ち、その基本的な性質を打ち破るには
物体に力を加える必要がある、という事です。
そして、一度動き出すと、今度はその運動、
等速移動をどこまでも続ける、という性質が現れます。
これを、ちょっと図にしてみましょう。
力学の基本として、最初は極めて単純化した状態で考えます。
今回も同様でして、とにかく何もない状態にモノを置いたらどうなるか、
という事を最初に考えるわけです。
つまり重力もなければ風も吹かない辺境の宇宙空間に
物体を置くとどうなるか、という話ですね。
これは当然、何もなければ永久にそのままです。
つまり、力が加わらない限り、物体は永久に動かない。
考えて見ると当然ではあるのですが、物体は本来静止する傾向がある、
というのは重要で、このため、物体を動かすには必ず力が要るわけです。
これが慣性の法則その1。
次に、特定の方向に押されると、
物体はその方向に動き出すわけですが、今度はその速度のまま、
永久にどこまでも押された方向に直線運動を続けます。
これが慣性の法則その2となります。
ただし、ここで力が加わるのは最初の一瞬だけだと思ってください。
力を持続して加わえ続ける場合は加速度運動になるので、
これは次回の運動の法則(第3法則)で扱います。
この質量を持つ物体には常に静止し続けようとする性質があること、
そして一度動き出したら、今度はその等速直線運動を
どこまでも維持しようとする性質を持つこと、
この二つをまとめて「慣性」と呼びます。
よって慣性の法則なのです。
つまり停止にせよ、等速直線運動にせよ、基本的に物体は
現在置かれてる状態を維持しようとする傾向がある、という事です。
そして、それを変更させるには、必ず力が要る、という事で、
ここから先は運動法則、すなわち第二法則に繋がる事になります。
とりあえず、この慣性の法則はちょっと考えてみれば
予想がつく話ですので、問題なく受け入れられるでしょう。
ただし、静止状態には、加わってる力が「0」
つまりホントに全く力がかかってない結果、静止してる状態と、
+と-の同じ大きさの力が逆方向に加わった結果、
差し引き「0」となって静止している状態のとで、
大きく2種類あるのも覚えておいてください。
この両者は、力学的には全く同じ状態として扱います。
あくまで数字の量で現象を捕らえるのが力学ですから、
両者とも加わる力が結果的に0になるなら、これは同じ現象となるのです。
当然、等速直線運動でも考え方は同じです。
例えば自動車で60km/hの速度を維持して走り続ける場合を考えます。
この時、エンジンから得る推力と、
タイヤの摩擦抵抗+車体の空気抵抗の力が等しければ
前進させる力と抵抗の力の差し引きは「0」となり、
この結果、車体は慣性運動、等速直線運動を行なう事になるわけです。
エンジンは常に力を供給してるのですが、
摩擦や空気抵抗によってそれが相殺されて、
結果的に加わる力が「0」の慣性状態が造られている、という事です。
(エンジンの力が増せば加速し、足りないとマイナスの力が加わって減速する)
最後に、もう一度まとめておきましょう。
完全に停止していて、加わる力が「0」なら、物体はそのまま静止しています。
そして等速直線運動で動いてる物体にかかる力が「0」ならば、
止まることなくどこまでも同じ速度で動いてゆくわけです。
この物体にかかる力が0の状態を慣性と呼ぶ、
といった辺りが慣性の法則の基本的な考え方となります。
両者は物体に力が加わっていない、という点で力学的には同じものなのです。
じゃあ力ってなに?という疑問はまた後で考えます。
NEXT