■ニュートンの3要素と速度
はい、本題に戻ります。
まずは、3つの基本となる量、3つの「要素」から見ておきましょう。
質量、長さ(距離)、時間の各量ですね。
ニュートン力学において、全ての要素はこの3つに還元されます。
逆に言えば、この3つの要素の「量」を使って計算し、
新たな量を求めるのがニュートン力学だとも言えるかもしれません。
そして、これらは以下で説明する単位で常に計算を行なえば、
キチンとした結果が必ず求められるようになっています。
この常に単位を揃える、という点にも注意してください。
まず、基本の3つの量を見るとこんな感じでしょうか。
左の薄い箱は右の箱が移動したものと思ってください。
■質量(mass)
単位はkgです。
これは物質存在の量で、その量は体積と密度で決まります。
質量=体積×密度ですね。
体積と密度、どちらが増えても大きくなりますし、
逆に、どちらが減っても小さくなる、とも言えます。
なんらかの物質が存在するときに、その体積と密度によって決まる、
固有の量が質量、と思ってください。
ちなみに単位がkgなので重さと混同されやすいですが、別物です。
本来は重さは重力がかかった質量としてkgfと表記するのですが、
あまりこの表記が普及してないため、誤解の元になってます。
重さとは重力のある空間でのみ存在する、下向きの力の量です、
つまり、無重力の宇宙では存在しない量ですし、重力によって変わる量です。
例えば、10kgの重さは地球上では10kgですが、
重力の小さい月面では約1.7kgになってしまいます。
そして、それは常に星の中心部、感覚的には下方向に向う力となります。
が、質量はどちらでも10kgであり、かつどの方向に対しても同じです。
ここら辺りは、同じ大きさの鉄球とスポンジの玉を考えてみるとわかるでしょう。
動かしにくい、という点では地球上であろうと無重力状態であろうと、
質量の大きい鉄球の方が常に上です。
が、無重力である以上、両者の重さは0なのです。
これが質量の差で、動かそうとして力を加える場合、
より質量が大きいほうが、より動かしにくくなります。
つまり、大きな力が必要です。
質量が動かしにくさの量、と説明されることがあるのはこのためです。
ちなみに、質量はニュートン力学の基本中の基本で、
これが無いと話がはじまりません。
質量が無い、という事は物質ではないため、
後で見る運動方程式の対象とならないからです。
■長さ&距離(Length)
単位はm(メートル)です。
後で計算式が出て来た時、質量の記号m
と長さの単位であるmを
混合しないように注意してください。
この長さ(距離)には大きく二つのタイプがあります。
まずは物質の大きさを測るための単位。いわゆる寸法ですね。
もう一つが物質が運動して移動したときの距離です。
寸法は物質の量に、距離は運動の量に大きく関わってくる量となります。
■時間(time)
単位は秒(second)です。
3要素の中で定義が一番面倒なのがこの時間ですね。
見ることも、触ることもできない存在なので、説明が難しいのです。
実際、ニュートンも持続して一様に流れるもの、
といったかなり苦しい定義を行なって、後は常識で考えろよ、
といった感じに、やや投げやりな説明を行なっています(笑)。
これではどうしうようも無いので、
とりあえず、この記事で扱うニュートン力学においては、
物体が運動した時、距離と共に変化する量、としましょう。
それって速度の一面ではないの?と気が付いたら
しめたもので、実際、速度=運動の変化量が無いと時間は定義できません。
もし人類が周囲に何も動かない、そして何も変化しない
宇宙空間に一人で産まれたら、
おそらく時間という概念にたどりつくのは不可能でしょう。
(何も変化しないのだから、本人も年をとらない)
実際、相対性理論以降は時間は光の移動量(速度)
を基準に求められており
光が真空中を進む距離に対応する量、が時間となります。
ちなみに、先に述べたマッハの批判はまさにこの点でした。
ニュートンは先に書いたように、外界から完全に独立した
一様に流れる絶対時間というものがある、と仮定しました。
が、これに対して、彼は何ら理論的な証明を与えてません。
でもって、上に書いたように、何らかの変化が存在しない以上、
時間という概念は産まれませんし、そもそも変化が無いなら
時間という考え方は無意味です。
よって、ニュートンが言う外界の変化から完全に独立した時間は、
計測の方法がない以上、意味が無いし、ありえない
というのがマッハの主張ですね。
そして実際、時間はすべて観測者の置かれた状況で変わる、
と証明してしまったのがアインシュタインの
特殊相対性理論となります。
さて、以上が基本中の基本の3要素となり、
先にも書いたように、ニュートン力学の全ての量は
この3つの要素から出来てます。
とりあえず、今回は、この3要素から、簡単な計算で求められる
最初の「量」を考えておしまいにしましょう。
それが、全ての運動の基本となる量、速度です。
運動というのは、物体が動くことであり、動く以上は必ず、速度を持ちます。
当たり前ですが、全ての運動に伴う量として、
速度があるわけで、よって全ての運動の基本となる量が速度です。
なので、ここで最初に確認しておきましょう。
速度はあらゆる運動でもっとも基本であり、もっとも重要な量です。
あらゆる乗り物に速度計が不可欠なのも、その重要性の証拠の一つでしょう。
これがわからないと、自分の運動状態がさっぱり見当がつかないのです。
例えば、物体が直線で100m移動した、という場合、
それが4秒で移動したのと、10秒と移動したのでは、
どう考えても全く異なる運動になるわけです。
両者を比較するなら、移動距離だけでなく、
単位時間、1秒あたりどれだけ移動したのか、
というように同じ条件にした量を比べる必要があります。
これが速度で、あらゆる運動を計る基本量となるのです。
計算は簡単で、100mを4秒で移動したなら、1秒あたりは
100÷4=25
100mを10秒で移動したなら
100÷10=10
となります。
これは1秒間に移動した“平均距離”ですから、
長い方が優位で、よって4秒で進んだ方がより速い、とわかります。
この計算式、
移動した距離÷時間=速度
は覚えておいてください。
3要素のうち、時間と長さ(距離)を使って求められるのが
単位時間(1秒)あたりの距離変化の平均量=速度だ、ということです。
小学生レベルの話じゃないか、と思うかもしれませんが、
基本というのは大事でして(笑)、この数式が
特殊相対性理論では基本中の基本となってゆきます。
まあ、ここまでは常識の範疇、という気もしますが、
この計算で求められる速度は平均量である、というに注意してください。
秒速25mと言っても、常に25mで動いていたわけではないのです。
最大、最小速度は異なってるはずで、
それらは瞬間速度として別に求める必要があります。
秒速ならまだしも、時速ともなると、その差は極めて大きくなりますし。
この瞬間速度を求めるのが、いわゆる微分なのですが、それはまた後で。
そして、もう一つ、計算で出てくる量の単位にも注意してください。
計算で求められる新たな量の単位は数式でそのまま表されます。
(ジュール(J)、ニュートン(N)など例外もあるが)
速度の場合、計算式の距離÷時間は割り算ですから、分数と同じことです。
よって距離/時間、という単位になります。
ニュートン力学では基本的に、距離はm、時間は秒(S)ですから、
m/秒、あるいは m/sという形で表記されます。
自動車のメーターで見られる速度計の単位表記はq/hですが、
あれはq/時間(hour)という単位だからですね。
ちなみに計算が掛け算の場合は単純に二つの単位表記を並べる、
あるいは「・」で繋ぐ、のどちらかが普通です。
例えば、次回に登場する予定の運動量という量は、
質量×速度で求められるので、単位はkgm/s、あるいはkg・m/sとなります。
ついでに、計算式によって出てくる単位が同じなら、
異なる計算式でも、実は同じ答えを求めていたのだ、という場合があり、
これが意外に重要だったりするのですが、それはまた後で。
とりあえず、ニュートン力学の基本3要素と、
そこから出てくる最初の重要な量、速度、
そして単位の考え方まで見ておきました。
これでニュートン力学の2割くらいは理解できたと思っていいでしょう(笑)。
はい、今回はここまで。
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