■意外な所に流線形

さて、そんな流線形は、航空機の高速化に大きく貢献します。

でもって意外に知られてない気がしますが、
中でももっとも大きな影響を与えたのが、主翼の翼断面(翼型)への採用です。



これですね。
本記事を読んでいる皆様なら、あ、これって流線形が基本になってる、
と見た瞬間に気が付いていただけるかと。

航空機の主翼は基本的には抵抗の小さい流線形であり、これを変形して、
つまり上側の膨らみを大きく、下側のを小さくして、揚力を発生する形にしています。
これも流線形による空気抵抗の低下の一部なのです。



実際、空気抵抗とかそんな事言ってる場合じゃないんだよ、飛ぶだけで必死なんだよ、
というライト兄弟の人類初の動力飛行機、ライトフライヤー I の主翼の断面系は
流線形なんて縁もゆかりも無い、という形になっております。



この点は、より高速になった現代のジェット機でも同じです。
ただし抵抗を低くするため、より薄くなってますが。
あと、極超音速、マッハ3とかを超える機体の場合は、またいろいろと話が変って来るんですけど、
それは極端な例なので、ここでは触れませぬ。

最後に流線形が世界中で航空機に影響を与え始めた1930年代から、
本来ならほとんど影響がない分野でも、それが大量にみられるようになります。
いわゆる流線形デザインの大流行ですね。
ちょっとだけ、これにも触れて置きましょう。



1930年代から40年代にかけて、アメリカを中心に流線形のスタイルの車が大流行となりました。
これは飛行機がカッコいいからマネしよう、というレベルのデザインで、
時速100q以上で走りまくるレーシングカーなどを別にすると、
流線形には、それほど意味がありませぬ。
単なるデザイン優先で、カッコいいから採用されたものですね。

ちなみに流線形は理屈の上では自動車にも有効ですが、
車の場合、車体のすぐ下に地面があり、その間には車輪が四つ高速回転してるため、
航空機のように、単純な流体の流れになりませぬ。
ついでに言えば、後部をぶった切ってしまっても大きな影響は受けないので、
こんな風に後部まで律儀に絞る必要はありませぬ。



こんな感じに、後端部は完全に絞り込まず、途中でちょん切ってしまっても大丈夫なのです。
これは自動車の空力の大きな特徴の一つになってます。

ちなみにこの車くらいになると、流線形ボディにも十分、意味があるでしょう。



さらに言うなら、1930年代から40年代にかけて滑らかな形状のデザインは、
家電などにも影響を与えていました。
写真はアメリカとイギリスのトースターですが、上の右二つ、下の中央のは
利便性を無視してまで(笑)滑らかな、空気抵抗の少ない形状となっています。

今回調べてみた限りでは、トースターが時速100qを超えて空を飛ぶことは
極めてまれと言っていいので、これも単にデザイン優先の結果でしょう。
流線形は、いろんな所に影響を与えてるのでした。

といった感じで今回はここまで。
次回、いよいよ最終回で、もう少し詳しく航空機と
流体力学を見て行きましょう。

予定としては二次元翼、そして翼端流と楕円翼とウィングチップ、
そして乱流と層流翼まで片づけてしまう予定。
…予定。


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