■市場を否定する軍隊の航空戦力



というわけでマルクスレーニン主義が生んだ空のママン、ミンスクに乗りこみましょうか。
この船があらゆる意味で故ソ連海軍の象徴だなあ、と思うのは
その名の元となったミンスクの街、これは現ベラルーシの首都でして、
すでに別の国の首都になっちゃった、てとこでしょうか。

で、近づいて見ると、スキージャンプ台があるわけでもないのに、艦首の方が、
あきらかに艦尾より背が高い、というのに気が付く。
通常、空母という船は、飛行甲板を水平に保つ必要から、
後ろから前まで、同じ高さになりますから、これは珍しい構造です。

例外は、スキージャンプ台と呼ばれる短距離離陸を助けるための
特殊形状の飛行甲板を持つタイプですが、この船にそんなシャレたもんはない。
なんじゃこりゃ、とこの段階で思う。
まあ、キエフ級の船は飛行甲板全体をナナメに船体にのっけてしまい、
艦首部分は普通の軍艦のような状態になってるので、
こういう構造になったんでしょうが、ええのかそれで…。

余談。
手前に飛び出してるのが飛行甲板なんですが、これと艦首の間に
何か丸みを帯びた出っ張りがあります。
ここはソ連版ファランクスとでも言う対空、対航空機、対ミサイル用のバルカン砲AK-630を
搭載してる場所なんですが、飛行甲板の前に付けちゃったため、
この後ろの飛行甲板に対し、強烈な気流の乱れを引き起こしてしまい、
機体の運用が危険になる、という事態になります。
なので、運用開始後、あわてて写真のよう空気抵抗の少ない形状に改造、
さらにフチの部分に丸みを帯びたカバーを取り付けたのでした。

…この船は全体がこういった泥縄の連続で造られており(笑)、
そこら辺を象徴する部分であるので、最初に紹介しておきます。



ちなみに、艦尾方向。ね、低いでしょう。

ミンスクの飛行甲板は、艦首の手前、艦の中央付近で終わる変なタイプですので、
飛行甲板全体は、この艦尾部分の高さのまま、よって全体が水平ではあるんですが…。

でもって、図面などで見ると、これは水面からせいぜい10m前後の高さ。
空母の飛行甲板としては、かなり低い。
この段階で、この船、ホントに空母なのかと思い始める。

艦体後部の凹部に入ってるのはボートなんですが、あの高さから落っことすのか…。
えらくしっかりしたモノなので、連絡、上陸などに使うカッターかも。
あの高さだと、奥にチェーンと巻き取り機があり、上げ下げはそれでやる、
と考えるのが常識的にではあるのかしらん。



ちなみにアメリカの場合、第二次大戦時世代の空母、
エセックス級(写真はホーネット)でもこんな感じ。
岸壁から見てもそれなりの高さがあります。
図面などで見る限りでは、水面から15〜18mくらいあるようです。
基本設計はミンスクより30年以上古い船ですが、それでも、飛行甲板の高さは、
こっちの方が1.5倍近く高い。

飛行甲板が低いと、重心がさがって船体は安定しますが、
その反面、海面が近く離着陸時の余裕がない、
甲板の機体が波をかぶる可能性があるなど、
航空機の運用に関してはあまりいい事がありません。

が、それ以上に深刻なのは、通常、空母は艦載機の格納庫を甲板直下に設けます。
このため、飛行甲板の位置が低い、というとは、格納庫が狭いことを暗示します。
空母の最大の設計ポイントはこの格納庫だ、と考えてよく、
これをミスると他の部分ではフォローが効かず、欠陥空母決定となります。
実際は、甲板と格納庫をつなぐエレベータの位置も重要なんですが。
(こっちでチョンボをやると、機体の発進、格納時に常に大渋滞の大パニックとなる)

格納庫が狭い、ということは艦載機の数が少ない、というほかに、
航海中の航空機の整備性、機体の出し入れ、燃料補給などでも、
作業スペースの不足から、かなりのハンデとなります。
まあいい事はなんもないわけです。



乗船前に、入り口で付近で、後ろを振り向いて見る。
左手が入場口のあったノイローゼにかかったベルサイユ宮殿の辺り。

この船、なぜか岸壁からかなり離れた位置に係留されており、
ちょっとした距離の桟橋を渡ってくる必要が。

ひょっとして、これ以上、岸に近づくと座礁の恐れあり、とかですかね。



入り口。
船体横から入ります。
ああ、ここら辺は空母だ、艦内には飛行甲板下の格納庫から入るのか…と思ったんですが…


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