■どっこい生きてたマカオの中



そのちょっと先の角に、なんだか怪しい建物が。
あ、これ道教の廟ですね。
やはりマカオでは道教がかなり根強く生き残ってるみたいです。

中国の土着宗教、というか現世利益を徹底的に追求した
庶民の欲望の権化の体系化ともいえる道教は、
そのウサン臭さから、共産化した中国本土では一時徹底的に弾圧されました。
(基本目標は不老不死だからなあ…)

90年代くらいから復権がすすんだようですが、
それでも日本における野生のトキみたいなもんで、
一度絶滅した以上、現存するのは、ただの形骸とみていいでしょう。
ホンマもんの道教、というのはマカオ、香港、私は行ったことがない台湾、
このアタリでしぶとく生き残ったようです。

道教の定義は意外に難しいのですが、
東洋の根底にあるのは、礼節、つまり孔子の儒教ではなく、
この道教であり、神仙思想を中心に、日本もその強い影響下にあります。
仏教は精神的な魔法体系、西洋(というか中東)の錬金術は物理的な魔法体系なんですが、
その中間にあるのがインドの土着宗教、そしてこの道教でしょう。

ドイツの精神分析屋、宗教屋に、仏教に強い興味を示す連中が多いのは
興味深いところなんですが、錬金術と仏教の関連性に気づいたのも連中が世界初でしょう。
その一人が、無意識の研究、アニマだアニムスだ集合無意識だで知られるあのユングです。
…ここら辺の話はちゃんとやると旅行記の脱線では
済まなくなるので、またそのうち、としましょうか。



大型の道教廟は香港にもいくつかあり、見学したことがあるんですが、
こういった普通の街中の廟、というのは初めてみる。
ちょっと中を覗きたかったんですが、こういった宗教施設はうかつに入れないので、
今回は外から見るだけで、退散することに。
うーん、この屋根の形状からして、ガンガンにお線香とか焚くんでしょうね、これ。




てな感じで、カジノ街の入り口、例の映画館前まで戻ってくる。
時間は4時過ぎ。ちょっと早いけど、そろそろドッグレース場に移動しますか。

で、まともな交通手段はバスとタクシーしかないマカオ、
中華圏のバスは地理カンがないと極めて使い難い乗り物なので、
ここはタクシーで移動としよう…と思ったんですが、これがつかまらない。
理由は知らねど、手を上げようが足を上げようが、ことごとく止まらないのだ。

さすがにこんな経験は初めて。
上海で、街の一部にタクシー乗車禁止エリアがあり、そこで似たような経験をしたので、
今回もひょっとして、それ?と思ったんですが、
この後、レース場からの帰りもまったく同じ苦労をするので、
どうもマカオのタクシーというのはそういうものらしい。

なんつーか、観光以外にまともな産業の無い地域として、それはどうなんでしょ…。




ようやくとっ捕まえたタクシー、その運転手さんにドッグレース ドームと告げ、
あらかじめ漢字で書いてきた賽狗場、という紙を見せる。

一瞬、運ちゃん何それ?という顔をするも、
ドッグ、ドッグの必死の連呼と、狗(犬)の字を集中提示することにより、
ようやく理解したようで、やおら走り出す。
運転はアジアンスタンダード、まあ、荒い、荒い(笑)。

で、夕方の混雑もあって、意外に時間がかかり、20分ほどで到着。
たしか50パタカ前後、550円くらいだったはず。

ああ、ここか。なるほど、ドッグレース場だ。
でもって、インターネットで見た開始時間まではまだ2時間近くある。
さて、どうしよう。

ついでに、看板にあるCANIDROME、カニドロームという名前、
これの方がドッグレース場と言うよりも、現地では通じるようです。
が、この言葉の意味は全く不明(笑)。

実は昔、租界時代の上海に全く同じ名前のドッグレース場があり、
今回、マカオでこの名を見て驚いたんですが、何か関連があるのか。
少なくとも、上海にあった以上、広東語ではないですし、ポルトガル語でもない。
でも、私の知る限り、英語でもない。
なんでしょね、これ。



で、そこから道路の反対側を見れば、夕方の露店が並びはじめてます。
のぞくでしょう、これはもう。

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