■そして平和がやってくる

日本にとっては、まあ悪夢のような機体、B-29。
しかもこれ、ボックスカー、つまり長崎に原爆を落とした機体です。
サブタイプは意外にもはっきりしないのですが、多分、A型。
もっとも、原爆投下用のB-29は専用機として最初から作られたので、
もしかしたら、サブタイプ無しかも。
まあ、あまりに有名で、解説は不要ですね。
ちょっとだけ脱線すると、この機体の展示に不快感を示す日本人もいらっしゃるようですし、
その考え方の方向性もわからなくはないのですが、
それは殺人事件で使われたピストルに、殺人罪を適用しようとしてるのと同様、
あんまり意味のない事だろうな、と私は思ってます。
人を殺す道具は道具でしかなく、それを使った人間、使わせた人間に
その責任追及の焦点をあてないと、次の事件は防げません。
使われたピストルに憎悪や嫌悪を向けるのはどう見ても賢くないでしょう。
日本の場合、国内外を問わず兵器という無機物、
ついでに軍隊という形骸に憎悪を向けて、
「人的責任」になぜあれほど無関心だったか、かえって不思議だったりします。
国民性もあるでしょうが、それだけと思うのは人が良すぎます。
人間が関わる限りにおいて、因果率は有効です。
(いわゆる「事故」は因果律の外だが、「事件」はその中にある)
「罪」があるなら、その「罪」を負うべき人間は必ずいます。
追うべきポイントは、そこにあると思うんですが。
余談を。
このボックスカーの綴りはBockscarで、貨車を意味するBoxcarとは異なります。
が、機体の横のイラストはどう見ても鉄道貨車。
これは機体の最初の機長の名がBocksだったので、
ボックスの車、すなわちボックスカーというダジャレになってるんですね。
ただし、ボックスは原爆投下前になぜか配置換えでこの機体を降りてます。
(クルーのほとんどが入れ替え?)
が、機体の名前はそのままで、後世に変な形で名を残すことに。
さらに余談を。
広島に原爆を落としたエノラ・ゲイも人名でして、
あれは機長のママの名前です。エノラは確かニックネームだったはず。
ゲイ、は今でこそ「業を背負ったオカマ」といったニュアンスで使われてますが、
本来はハイテンションな陽気さ、キンキラキン、といった意味。
まあ、いわゆるゲイの皆さんはそういう特徴を持ってますから、
そこから来た呼び名です。
なので、エノラ・ゲイはオレのママはオカマ…
ではなく、派手好きエノラ、といった意味です。
ママもまた、変なところで名を残すことに。
日本の感覚で言えば、福田さんの車とか、キンキラ花子さん、といったところですから、
まあ、よく理解できないセンスではありますが…。

ここまで来たら、最後まで付き合ってもらいますよ(笑)。
ボックスカーは原爆を運ぶ貨車というダジャレですが、
その始発駅はソルトレイクでゴールは長崎になってるの、見えます?
その上にある太っちょマークが確か出撃記録で、4回目の赤いのが原爆投下時のもの。
長崎の地名は、投下後に書かれたものでしょう。
では、出発地のソルトレイクって?
塩の湖ってことは、彼らは製塩業者だった…ではなく、
2002年に冬季オリンピックの開かれたユタ州の街であり、
一夫多妻とジャイアント馬場でおなじみモルモン教の総本山が、
ソルトレイクシティですが、原爆とはなんの関係もないじゃん、という街。
が、このソルトレイクは、街の名ではなく、ほんとに湖(塩湖であり乾湖に近い)
であるソルトレイクを指しています。
ソルトレイクは、原爆投下部隊には非常に重要な地名なのです。
例の自動車による速度記録を作ったスピリット オブ アメリカが
元気に失踪、否、疾走していた近所、湖の中、といっていい場所にある
ウェンドーヴァー(wendover)基地は、原爆投下部隊の訓練基地なんですね。
本来は何もないソルトレイクの代わりにビルのある都会の絵が描いてあるのは、
アメリカ式ユーモア…というか、マンハッタン計画の意味か?
なにせ全開バリバリの秘密任務ですから、陸の孤島であり、
それでいて十分な訓練空域が確保できる
ソルトレイク周辺は、まさにこれ以上無い、秘密部隊の訓練基地なのでした。
原爆投下型のB-29、15機全部がここに集められ、
やがて本番のためにテニアンへと向かうわけです。
余談の上にさらに脱線ですが、長崎の原爆投下時に
広島に落としたばかりのエノラ・ゲイが観測機として参加してるのは、
この「原爆投下部隊」の機体の一つで、
他のB-29とは異なる任務を理解しているクルーが乗っていたからです。
で、この基地はほとんど見捨てられたような形になりながらも
民間飛行場としてほぼ当時のまま、現存しており、
そこに着陸したことがある数少ない日本人の一人が、
毎回お世話をおかけしている、ささきさんだったりしますね。

長崎に投下された、プルトニウムを使った爆縮型原爆、ファットマン。
ボックスカーの出撃マークのおっさんはこのファットマン、太った男から取られてます。
でかい、とはいえアレ、こんなもんですか?という気も。
下の写真のリトルボーイと違い、プルトニウムを使ってる分、
その爆発物の臨界量(質量)はむしろ少な目。
なのにご覧のように卵型の巨大な形状になったのは爆縮という、
非常に高度な起爆を行うため。
ほんとに「一瞬」で臨界量を突破させるために、
円形に配置されたプルトニュウムを爆薬で文字通りふっ飛ばし、
中心点に集める、という仕組みのため、球形になりました。
もっとも、この起爆法は文字で書くほど簡単ではなく、
当時の世界的な物理学と数学の権威、フォン・ノイマンが、
まあ、普通の人にはさっぱり理解できない高度な数式を解き
開発した爆縮レンズ、というシステムを採用してます。
数学なんて、実生活の何の役に立つのさ、という子供がよくいますが(含む私のガキ時代)、
知らないと、敵は恐ろしく強力な手段で君を殲滅するかもしれないよ、
というのは一つの教育手段として採用できませんかね(笑)。

こちらは広島に落とされたリトルボーイ。
これはウラニウム235のカタマリを二つに分け、それを単純に
一つにする事で臨界量を超えさせる(無論、これも火薬で撃ち込む)という
単純な構造で、ウラン235の生成にさえ成功してしまえば、
誰にでも造れる、という単純な構造。
なので、ファットマンとは異なり、起爆試験さえ行われてません。
が、単純な分、ロスも多く、結局、起爆用ウランの殆どは最初の核分裂反応で
吹き飛ばされてしまい、あの爆発に使われたのは10%以下、と言われています。
まあ、それであの破壊力ですから、恐ろしいことには変わりありませんが。
余談ながら、人類史上、もっともシンプルな核兵器の一つでもあり、
逆に言うとこれ以下のサイズにする事は困難です。
これはウラン235の臨界量が一定な以上、
爆縮型にしない限りどうしようもなく、そのくせ爆縮型にすると、
ファットマンのようにさらに大型となってしまい、
臨界量の低下メリットは吹き飛びます。
…冷戦時代を中心に、小型核兵器とか、155mm砲で打ち出す核兵器、
などなどイロイロ出てきましたが、あれ、ほとんどフェイクじゃないかなあ、と思っています。
物理的に小さくできる限界、が最初の核兵器であるこのリトルボーイで示されている以上、
よほどのブレイクスルーがないと、そんな小型に出来ないとような。
でもって、そのブレイクスルーの前に立ちはだかるのが
「物理的な原理原則」だけに、光速を超えてこい、ってな
位に困難だと思うんですよ。

はい、最後のトリはこの機体。
日本の川西 紫電21型、いわゆる紫電-改閣下でいらっしゃいます。
5312号機だそうな。
2005年から再レストアに入っていたんですが、完成してたんですね、
この博物館で売られてる写真入り所蔵機リストでは「無かった」ことにされてますが、
もしかしたら、ほんとにレストアが終わったばかりだっただけで、
ひょっとして見れたの、非常にラッキーだったとか…?
とてもコンディションのいい機体で、長年雨ざらしだったスミソニアンの
機体に比べると、はるかにしっかりしてます。
撮影できる範囲もずっとこちらの方が広いし、これはいい展示でした。
これだけの機体を見て来た最後だけに、
やっぱり小さいな、というのが感想でした(笑)。
はい、今回はここまで。
次回、ようやくデイトン1日目の日が暮れます(希望)。
でわでわ。
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